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パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
5章:パラレル交差する明日へ
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146話「集いし未来」

27:集いし未来


・ユイムの目の前で彼女を助け黒い闇に消えていった升子。

しかし聞こえるはずの衝撃音は一切なかった。

「ユイムさん!大丈夫ですか!?」

升子に投げ飛ばされたユイムをシュトラが後ろから抱き留めた。

「シュトラ!升子ちゃんが・・・!」

「大丈夫ですよ。」

シュトラが指差す。

「・・・え?」

消えたはずの升子が立ちながら呆然としていた。

「大丈夫!?升子!」

その升子に覆いかぶさるように破滅スライトを発動させたライラが立っていた。

「ライラ・・・!」

「升子、前にも言ったでしょ?

僕の前からいなくならないでって。

何があったって僕は升子の親友なんだから・・・」

升子を一度抱きしめると破滅の銃口を空に聳えるブランチに向ける。

「ライランド・円cryン・・・どうしても我々の前に立ちはだかるか。」

「ブランチ!パラディンさんからお前の正体を聞いた!

選ばれなかった者達の怨念が集った姿だと!

けど、お前のその怨念で誰かの未来を奪ってしまえば

その怨念は際限なく増え続けるだけだ!

お前は、そんな悲しい存在であっていいのか!?」

「ふん、何を言うかと思えば。

我々がそのようなつまらない事で世界を混乱させ続けたと思うているのか?」

「どういうことだ!?」

「確かに貴様の言うとおりこの姿は選ばれなかった者達の意識が集った物だ。

だが、この世への復讐など欠片ほども考えてはいない。

何故なら我にそのような散っていた者どもの意識など知ったことではないからだ。

我々が目指すのは無限の力を得ることだけだ。

この力などそれを目指すための道具に過ぎぬ!

貴様らは愚か風行剣人も知らないだろうがこの世界は

既に何度も歴史と文明をリセットされている。

正確に言えば西暦3018年ではないのだ。

現代は西暦62218年だ。そして我々は6万年分以上の

有り得なかった歴史が重なった姿。

これ以上我が力が増える事がない所まで歴史が育てば

それをリセットし、この地球という星の寿命が尽きるまで

無限に力を重ねていく。そして我々ブランチの真の姿となるのだ!

風行剣人が戦っていた我々など歴史のほんの一部に過ぎない。

そして貴様達が切札としているナイトメアカードなど

6万年と言う歴史から手に入れたこの力の内の

わずか数百年しか歴史のない力。すなわち児戯も同然・・・」

ブランチの言葉が終わらぬ内にライラが引き金を引き、

破滅を込めた弾丸がブランチの集合体に命中する。

しかし、

「無駄だ。既に我々は破滅している。これ以上の破滅などない。」

弾丸はまるで意味を成さずブランチに触れた瞬間に消し飛ぶ。

「!スライトが通じない・・・!?」

「貴様達に残された最後の意味は我々の贄となることだ・・・!」

ブランチの闇が光ると、ライラ達のいた森そのものが泥沼へと変わっていく。

「くっ!」

ライラは背中から翼を生やし、升子を抱えて空へと向かう。

が、シュトラとユイムは逃げ切れそうにない。

「ツインエミッションで!!」

ライラはジュネッスの状態で2枚のナイトメアカードを使い、

森全体を範囲として大津波を引き起こし、

ユイム、シュトラ、リイラ、来斗を森の外まで押し流した。

「ほう・・・天死の力を制御したか。」

「ブランチ、人間は進化するんだ!

何度もお前なんかに負けるわけじゃない!」

「よい進化だ。より良い味の贄となってくれているようだな。」

声が笑い、泥沼に落ちていく地上から巨大な腕が伸びる。

「くっ・・・!」

「しかしいくら進化しようとそのような荷を抱えた状態では

適度な役割も果たせまい・・・!」

「ライラ・・・!私を離して・・・!じゃないとあなたまで・・・!」

「言ったはずだよ升子!僕は升子を離しはしない!」

とは言えこの状態では、いや升子がいなかったとしても圧倒的に不利だった。

少なくとも現状では無駄な抵抗しか出来そうにない。

「・・・仕方ない・・・!」

ライラは踵を返し、その場から全速力で飛び去った。


X是無ハルト邸。

緊急の作戦会議が行われた。

「ライラさん、あなたから見てブランチに何か弱点とかは分かりましたか?」

「・・・いえ、ただただ圧倒的でした。

人類を今まで何度もリセットしてきたと言うのは本当だと思います。

ただ、気になったこともあります。」

「それは?」

「はい。ブランチは確かにリセットされてきた意識達の集合体でしょう。

でも、それが奴の正体ではないと思うんです。

奴は無限の力を得ることが望みだと言っていました。

そしてあの力はその望みの道具に過ぎないと。

つまり、あの姿はブランチそのものではないと思います。」

「・・・つまり本体はどこかに個別であるということですか?」

「はい。今までもブランチは決して自分の姿を

見せようとはしていませんでしたから探すのは至難の業かもしれませんが・・・」

「・・・時間もあまりあるとは思えませんですわね。」

キリエと作戦会議をしている間ユイムと升子は治療を受けていた。

しかしブランチの影響で山TO氏全体の機械はその機能を停止していて

原始的な方法でしか治療が出来なかった。

街全体のスカイビハイクルは全て動きを止め、

空を飛ぶKYMシップもブランチの効果範囲内に入ってしまえば

一瞬で機能は停止し墜落するだろうとしてなるべく離れていた。

ティラとラモンは一度X是無ハルト邸に集合した。

既にケーラもやってきていた。

「いざってなったらパラレルになるんだよね。」

「けど、パラレルの力を以てしてもブランチを止められるかどうか・・・」

「大丈夫ですよ。ブランチはこの半年間の情報を持っていません。

なのでパラレルを知らない可能性が高い。手段がないわけではありませんよ。」

「そうだな。そして俺もここにいる。」

と、剣人がやって来た。

「剣人さん!」

「ガイアスの奴から全ての事情は聞いた。

今回ばかりはあいつの力も借りないといけない。

俺もフル装備で行く。パラレルとナイトメアの司界者の力、見せてやろうぜ。」

「・・・はい!」

二人が4枚のカードを懐から出す。

と、

「いい光景だ。」

そこへパラディンがやって来た。

「パラディン・・・!」

「剣人くん、今は君に構っている場合ではないよ。」

「・・・分かっているさ。ブランチは人類全体の宿敵。

けどまさかお前まで力を貸してくれるとはな。」

「そこまで珍しいことではないでしょう。

同じ人間なのだから。」

そうしてここに3人の司界者が揃った。


・剣人がガイアスを使ってブランチの本体を探している間

政府議会が正確に現在の状況を調べていた。

ブランチは現在、直径2500メートルにまで膨張。

あの森を中心に直径30キロメートルは一切の機器が使えなくなっている。

そしてその範囲は少しずつ拡大している。

山TO氏中の民間人は全て他地域に避難され、

今ここに残っているのはライラ達だけだった。

本来ならマサムネ率いる警官隊も残る予定だったが

足手纏いにしかならないだろうとの判断から民間人の避難誘導に当たった。

また、升子とリイラ、シキル、ラウラ、ヒカリも

3人の子供と共に非難することになった。

「升子ちゃん・・・」

「あんたとはまだまだ話したいことがあるんだから必ず帰ってきなさいよ。」

「・・・うん。」

「リイラ、みんなを頼んだよ。」

「・・・ちゃんと帰ってきてよ。そしたらさ、」

「何?」

「・・・そしたらさ、お姉ちゃんって呼んであげるから。」

「・・・うん、分かった。」

「キリエさんは残るのですか?」

「役に立たないかもしれませんが黙って逃げるわけにもいかないので。」

そうしてライラ、ユイム、ティラ、ラモン、シュトラ、ケーラ、キリエが残された。

「あんまり暗い顔してるなよ。女の子には笑顔が一番似合ってんだ。」

「剣人さん、ブランチの居場所は分かりましたか?」

「・・・ああ。

こんなこと言ったばっかで悪いがあまりよくないニュースだ。」

「・・・どこにあったんですか?」

「ブランチの本体は、あの怨念集合体の中にある。」

「え・・・!?」

「奴は自分のコアに6万年分以上の怨念を集合させているんだ。

だから、ブランチを完全に倒すにはあの怨念の塊をどうにかして剥がす必要がある。

チェックでも調べたがかなりの密度だ。

フルパワーの八又轟閃でも完全に引き剥がすのは不可能だろう。」

「そんな・・・!」

「だが、俺達が集まれば不可能はない。

俺とパラディンが命懸けでなるべくあの塊を削る。

そこでパラレルになったお前達が素早くコアに突入してブランチを倒せ。

この作戦、全員が生き残る確率は極めて低いだろう。

むしろ全員死ぬ可能性が一番高い。

それでも俺達がやらなければ俺達が生きてきた意味が、

歩んできた歴史が全部あのクソ野郎に消されちまう。

そんなの許せねえよな?」

「もちろんです!」

「よし!なら行くぞ!これが最後の戦いだ!」

そうして9人がブランチの支配する森へと向かっていった。

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