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パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
5章:パラレル交差する明日へ
136/158

135話「怒りの日・前編」

16:怒りの日・前編


・4月中旬。

新しい生活に少しずつ慣れてきた頃合。

「悪いわね。」

ラットンがライラに対して声をかけた。

「いえ、これくらい大丈夫ですよ。」

ライラが放送室の掃除をしていた。

この学校の放送室には機械人形に悪影響を及ぼす

アルトロン振動波が使われていたため掃除当番にあたっていながらも

ラットンにはこの部屋に入ること自体出来なかった。

民子と共に困っていたところ日直の日誌提出のため

近くを通りかかったライラに頼んだのだ。

今日はMMが出張のため部活が休みだ。

ユイム達は先に帰宅しているらしい。

必然的に校内に残っている生徒はもうほとんどいない。

「こんなものですかね。」

ライラが掃除を終えて部屋から出る。

「帰り何か奢るわ。」

「いえ、これくらい平気ですよ。

・・・そうですね、もしよろしかったら組手に付き合ってくれませんか?」

「組手?いいけど私じゃあんたには勝てないから

練習相手になるかどうか分からないわよ。」

「そんなことないですよ。それに以前のユイムさんとケーラさんの

組手を見て僕じゃ全然あの二人に叶わないと思いまして・・・」

「・・・あんた、確か3年しかパラレルやってないんでしょ?」

「え?あ、はい。そうなります。」

「3年でタイトルホルダーや全国区プレイヤー相手に

ある程度互角に渡り合えているなら十分じゃないの?

幼い頃から英才教育を受けていたケーラとほぼ互角なわけだし。」

「・・・確かに相性の問題でケーラさんとは互角かもしれませんが

実力そのものでは全然及びませんよ。

それに最近ナイトメアカードに頼りすぎて

本来のスタイルがおざなりになりつつあるので。」

「・・・いいわ。私も強くなりたいもの。」

それから3人が部室コートに行き、ライフを発動させる。

「私はX是無ハルト邸に連絡しておきます。」

「ありがとうございます、民子さん。」

民子が退室してからライラとラットンが構える。

「試合と同じ、1ラウンド3分3本勝負でお願いします。」

「分かったわ。」

二人同時に礼をしてからカードで宙を切る。

「テンペスト・行使サブマリン!」

「フレイム・行使サブマリン

ライラのカードが暴風雨を起こし、ラットンが周囲に火炎弾をばらまく。

暴風雨が火炎弾の威力を軽減し軌道を逸らそうとするが

そう黙ったまま抵抗を喰らうラットンではない。

火炎弾一発一発がライフルのように回転する事により

風のバリケードを余裕で突破してライラを襲う。

「ステップ・行使サブマリン!」

ライラも脚力を強化して敏捷に物を言わせて次々と火炎弾を回避。

ライラの狙いが接近してからのプロレス技だと知っているラットンは

もちろんライラを近寄らせないよう火炎弾の範囲を広げる。

「くっ・・・!」

動きを先読みされたからかライラは前進できず佇み、

その足元を炎の渦が侵略していく。

「悪いわねライラ。あなたのスタイル、かなり厄介なのよ。

でもね、どんな分野においても奇をてらった異端よりも

どこまでもまっすぐ基礎を極めた方が上を目指せるものなのよ。」

足元を炎で蹂躙され身動きのとれないライラに次々と

火炎弾を放っていくラットン。

試合と同じルールなら使えるカードはあと1枚だけ。

この状況だけなら突破できるカードなどいくらでもある。

しかしラットンはたった1枚だけで自分をここまで追い詰めている。

それを後2枚備えているのだ。迂闊に3枚目は出せない。

だから多少無理矢理だが向かってきた火炎弾をそのまま逆ベクトルに

蹴り返し次に迫ってきた2発目と相殺させその間に真横に跳躍する。

前方で火炎弾同士が激突、爆発したことで一瞬ラットンの視界が塞がれる。

その間にライラがラットンの死角に移動して一気に距離を詰める。

「やはりそうきたわね・・・!マグネット・行使サブマリン)!」

「え・・・!?」

ラットンがすぐに2枚目を発動した。

同時にライラの体が強い磁力が帯びる。

・・・近くには金属や砂鉄の類はない。

だが眼前にとても大きな金属を含んだものがあった。

「近接戦闘はあんただけのものじゃない!」

ラットンがライラから発せられる磁力に引き寄せられ、

その力を利用してショルダータックルを放ってきた。

「くっ!」

ラットンを迎え撃つため着地寸前という無理な体勢から廻し蹴りを放つ。

「ううううううううううううううっ!!」

「はああああああああああああああっ!」

ラットンのタックルとライラの廻し蹴りがぶつかり合う。

結果ライラの体が後方に、ラットンの体が蹴られた方向へ飛んでいく。

「くっ・・・!」

ライラが素早く宙返り、背後の壁を見ないまま蹴ってラットンに突進。

まだ着地すらしていなかったラットンを押し倒すように飛びかかり

腕ひしぎ十字固めを繰り出す。

「・・・くうううううううううう!!」

「さあ!降参してください!」

完璧にラットンの右腕の関節を極め身動きを封じる。

ライフのかかった環境では決して腕が折れることはないが

それ故にいつまでもこの激痛が続く。

「・・・いいわ。私の負けよ。」

ラットンが力を抜き持っていたカードを床に置くとライラが技を外す。

「ありがとうございました!」

「こちらこそ。・・・やっぱり円cryン流相手に接近戦は不利ね。」

互いに立ち上がり服装を整える。

と、そこで民子が慌てて入室してきた。

「大変です、ユイムさんが行方不明になりました!」

「・・・え!?」

「キリエさんに連絡したところまだユイムさんが帰っていないとのことです。

なのでティラさんラモンさんシュトラさんケーラや中等部メンバーにも

連絡したのですが誰もユイムさんとは一緒ではないとのことで・・・。

ユイムさんにも連絡がつきません!」

民子の言葉が理解できなかった。

が、理解しなくてはならない。

ユイムが行方不明になってしまったということを。

「ライラ、ぼさっとしてる場合じゃないわ。行きましょう!」

「は、はい!」

急いで二人は制服に着替え学校を出る。

ライラがコールを呼ぶとX是無ハルト専用スカイカーがやってくる。

「・・・あ!」

その車内にはユイムのカバンが残ったままだった。

「そんな・・・」

「民子!アクセスして車内映像を!」

「はい・・・!」

民子が自分の体からコードを伸ばしてスカイカーのプログラムにアクセスする。

そして車内カメラの映像を直接自分の脳に流す。

「・・・これは・・・!」

「何が見えたの!?」

「はい・・・!今から43分前、

ユイムさんはこの車から降りようとしたところで

待ち構えていた男性に無理矢理引きずり出されています。」

「ならX是無ハルト邸の門前カメラが何か写しているかもしれないわね。」

それから3人がスカイカーに乗ってX是無ハルト邸に向かう。

道中に民子がキリエに連絡して状況を知らせる。

3人が到着する頃にはキリエが監視カメラの映像を再生していた。

「失礼。」

民子がカメラにコードを伸ばし映像を脳に流す。

68分前、先程の別角度からの映像を見る。

そこでは確かに男の姿が写っていた。

「この男、ミハエル・ロダン!」

ちょうどキリエもカメラの映像でその男を見る。

「どなたなんですか!?」

「X是無ハルト家とはライバル関係・・・いえ、敵対関係にある一族の主ですわ。

パラレルの覇権的にも経済的にもX是無ハルトから首位の座を

奪おうと動いていた男・・・。

ここ最近は静かでしたから完全に存在を忘れていましたわ・・・!」

「そ、それでユイムさんは・・・!?」

「あの男のことでしょう。X是無ハルトに信じられない額の

賃金を要求するのは確実・・・場合によってはユイムを・・・」

「・・・ど、どうするんですか・・・!?」

「・・・陵辱などの危害を加えるかもしれません。

私はこのとおり両腕がなく無事なX是無ハルトはユイムだけ。

そのユイムを二度と試合が出来ないくらいに

痛めつける事はするかもしれません・・・」

「・・・そんな・・・」

「ミハエル・ロダンの現在地特定完了。

ライランドさん、行きますか?早い方がいいと思われます。」

「相手が何か行動を起こす前にユイムを助ける。」

「・・・分かりました!急ぎましょう!」

それから飛び出すように3人がX是無ハルトの家を出ていった。

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