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パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
5章:パラレル交差する明日へ
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129話「R×R!」

10:R×R!


・夜になってからライラとティラは無事発見され救助された。

二人共かなり体力を減らしていたからか宿に着くとそのまま眠ってしまった。

「・・・ヤっちゃったんだ。」

ユイムがティラの様子を見て事情を察する。

その発言からキリエも察してラモンと目配せする。

「・・・どうしますか?」

「・・・ティラ本人から話を聞いてみないことには・・・。」

「着床から48時間以内でないと避妊は不可能ですわよ。」

そのキリエの発言で他のメンバーも事情を把握する。

「けど今回の件、明らかに第三者が関わっています。

二人を飲み込んだあの雪崩は恐らくカードの力。

それに二人を発見したあの場所も自然に出来たとは考えにくい。」

「・・・誰かが狙って二人を誘導したと?」

「・・・馬鹿なこととは思いますが一応その可能性もあるってワケですよ。」

「・・・・・・・。」

ライラの体の事は政府議会によって厳重に口外不可の勅命が出ている。

だから一般人が天死に関する事を知ることはない。

純粋にあの二人に恨みを抱く誰かの仕業だとしても

この雪園は今貸切状態にある。

自分達以外は旅館の店員くらいしかいないはずだ。

スカイカーも一番近くまで来たものでもここから数キロ以上離れている。

わざわざそんな真似をするだろうか。

ならブランチの仕業だろうか。

確かにブランチの目的を考えればライラに負傷させて

天死として暴走させて人類と天死の間で生存戦争を起こそうとするのは自然だ。

だが、今までブランチは色んな人間にカードを与えては来たが

ブランチ本体は生命体ではないからカードは使えないはずだ。

だとしたら考えられる犯人は見当もつかなくなってしまう。

あるいはKYMグループの総帥であるティラだけを狙ったというのなら

その手合いは探せばいくらでも出てきそうなものだが確実ではない。

一応ラモンはKYMシップに連絡して調べてもらうことにした。

一方でキリエも付近の警備隊に事情を説明して警備を厳重にしてもらった。

それと念の為に携帯できる避妊薬も用意してもらう。

ただ高校生の男女がセックスするなら何も問題はないが

ライラと言う天死との間に作られた子供は100%天死の力を継いで

生まれてくることが来斗の件で判明した。

だからティラとの間に子供が作られてしまえば必ず議会の厄介になるだろう。

もちろんそれはティラとライラの考え次第だが。

やがて数時間経過すると二人が起きてきた。

「すみません、ご心配をかけてしまったようで・・・」

「それは構いませんが他に言う事がなくて?」

「・・・それは、」

「もうお姉ちゃんってばデリカシーがなさすぎるよ?」

「あなたは黙っていなさい。」

「・・・はい。僕は欲望のままにティラさんとしました。」

ライラが答えるとティラも表情を暗くする。

それを見たラモンは静かに詰め寄る。

「まさかと思うけど無理矢理じゃないでしょうね?」

「ち、違うよラモン!あたしがいいって言ったの。

でも想像以上に痛くって・・・ライラくんもそれで落ち込んじゃって・・・」

「てぃ、ティラさん!そんな僕を庇わないでください!

僕は天死おとことしての本能を抑えられなかった。

ティラさんの事を考えずに乱暴にしてしまった・・・。」

「・・・ライラくん。どっちも事実なんだよ。」

「え・・・?」

「あたしはいいって言った。ライラくんはそれに従った。

でもいざ本番ってなると抑えが効かなくってそれでちょっと乱暴しちゃった。

これは事実なんだよ。だから気にしないで。」

「で、でも・・・」

「はいはい、そこまで。二人共すごい顔して帰ってきたから

心配したけどこれなら問題なさそうね。」

「いや待ってくださいラモンさん。

同意の上とは言え僕はティラさんをレイプしたんですよ!?」

「それで?ティラはいいって言ってるんだ。

ライラを庇って無理に出した言葉でなく本音でね。

ならライラがそれ以上悔やむようなことをしちゃいけない。

それはライラを許したティラを許さないってことと同じことだ。」

「で、でも・・・」

「先輩。前に私に言ったこと忘れちゃったんですか?

生き恥は晒すものだって。犯した過ちを省みていつか誇りに変えるって。

開き直りすぎるのもアレだと思いますけど先輩のは少し度が過ぎてますよ?」

「そうだよライラくん。

あまり懇を詰めすぎちゃうとまた血を吐いて倒れちゃうよ?」

「今のライラくんに必要なのは後悔じゃない。

自分を許す仲間を許す事だよ。前に進むよう、ライラくん。」

「・・・皆さん・・・」

「ねえライラくん。あたしは本当に大丈夫。

だから気にしないで。せっかくの旅行なんだから楽しもうよ!」

仲間からここまで言われてはライラも肯定せざるを得なかった。

「あたしお腹すいちゃった。」

「そう言えば夕食がまだでしたわね。」

「僕もお腹ペコペコだよ~」

「ユイムさんは先ほど間食を頂いていませんでしたか?」

一同が食堂へと向かう。

それにやや遅れる形でライラが一歩した時だった。

「・・・許せない。」

「え?」

声。同時に何か強い衝撃がゲレンデを襲った。

一瞬で視界が白に包まれ押し流されていく。

次に、

吸引バキューム

「これは・・・!?」

声。

次の瞬間にはライラは一面雪景色の只中にいた。

視界の先でゲレンデが雪の中に埋もれていくのが見えた。

そして、

「ライランド・円cryン。

それがあなたの本当の願い。」

背後。

振り向けばそこにはクリーム色の髪の少年が立っていた。

「・・・ラウラさん・・・!」

「ヒカリから聞いたの?僕が天死だってこと。」

ラウラは以前までの中性的な姿ではなく完全に少年のような姿となっていた。

そして背中には2枚の翼が生えていた。

その手には吹雪ブリザードのカードが握られていた。

「・・・天死だとは聞いていませんでした。

でもかつて一度だけラウラさんの背中から翼が生えたことがあると。

そして剣人さんが言うには眠っていた天死は全て倒したと。

そこからあなたが僕と対になる天死だって推測が出来ました・・・。

あの赤い天死はあまり積極的に人間と関わろうとする性格ではなかった。

少なくともラウラさんが言っていた理性を持って天死を率いて

泉湯王国アク・サスファンテを襲ったと言う天死には思えなかった。

だから泉湯王国アク・サスファンテを襲った天死を率いていたのは

・・・あなたなんでしょう、ラウラさん。

どうしてこんなことをしたんですか!?

泉湯王国アク・サスファンテはあなたの故郷でしょう!?

あそこを滅ぼそうとしたヒカリさんを殺したいほど憎んでいたあなたが

どうして自分で滅ぼしてしまったんですか!?

それにあのゲレンデにはヒカリさんやシキルさんだっていたんですよ!?

あなたは友人でさえもその手で・・・!」

「・・・知っているよ。でもどうしようもなかったんだ。

泉湯王国アク・サスファンテを滅ぼした天死は成人していたから

制御できていたのかもしれないけど僕は僕自身の感情と

あなたから伝わってくる感情を制御できていない。」

「え・・・?」

「僕にはあなたの本音が聞こえてくる。

知っているよ、自分が醜い存在だから

そんな自分を気にかける仲間を鬱陶しく感じているんだろう?

確かに殺意や憎しみはなかったかもしれない。

それでも伝わって来るんだ、排除の意思が。

・・・僕もこんなことはしたくない。

性殺女神セキシキルアルクスに性別を殺されていた間は全く平気だった。

あなたがユイムの体を借りている間も平気だった。

けどそのユイムが天死の力を使ってしまった時に僕に力が目覚めてしまった。

それからはユイムの憎しみに連動して気がついたら僕は泉湯王国アク・サスファンテを滅ぼしていた。

・・・もう手遅れだったんだ。

そしてあなたが自分の体に戻ってしまってからは

あなたがナイトメアカードを使う度にあなたが無意識で止めていた

天死の力が容赦なく僕の中に流れ込んできた。

・・・それで僕はもう人間には戻れない。こんな姿になってしまった。

そしてあなたが先ほどヒカリ達に抱いた感情が僕に走り、

このカードを使わせた。

・・・ずっとティラに対して募らせていた感情を爆発させてやれば

少しは負の感情も収まると思ってあんな舞台を用意したのに

いつまでもウジウジして、それであなたは何1つ変わらなかった。

・・・どうして滅ぼしてしまったかだって?

それは全部あなたのせいだ!

あなたが僕に仲間を、故郷をこの手で奪わせた!」

「っ!」

その怒声に合わせて雪の津波が押し寄せてライラを弾き飛ばす。

「がああああああああああっ!!」

大木に叩きつけられさらに首から下が凍りつく。

「でもここで終わり。この手であなたを殺し僕も死ねば

この地上から全ての天死は消える。

朽ち果てるがいい、全ての惨事の源!!」

動けないライラにラウラが禍々しく変貌した右腕を振り下ろす。

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