127話「蒼き女王VSJCクルセイダーズ?」
8:蒼き女王VSJCクルセイダーズ?
・3月下旬。
卒業式を明日に控えた山TO氏学園。
「ヒカリぃぃぃ~~~~!!」
シキルが久々に出会えた幼馴染に飛びつき力の限り抱きしめる。
「ちょっ・・・痛いって!シキル、本気で痛いって・・・!!」
ヒカリが復学したのだが当然一度死亡したとされた人間が
再び戻ってきて復学するのは普通の話ではない。
あれからキリエを通して議会に報告して理屈をまとめてから
やっと復学出来るようになったのだ。
ヒカリは表向きには泉湯王国の事故で死亡したと
報じられていたがその事故で亡くなったのは別人で
本人は意識不明の重体だったとして何とか復学出来たのだ。
議会がああだこうだと慌てて理屈を組み立てている間に
ヒカリは自分の新しい体に慣れる練習に勤しんだ。
その間シキルとは会えなかったため学校での再会となったのだ。
また、ヒカリもシキル同様X是無ハルト邸で暮らすことになった。
「これで後はラウラがいればみんな揃うのに。」
「・・・ラウラは仕方ないよ。あれだけ私達を目の敵にしてたんだし。」
「え?・・・ああ、そっか。ヒカリの記憶はあの夏で止まってたんだっけ。
大丈夫だよ、もうラウラは私達の事許してるよ?
12月の泉湯王国滅亡の際もラウラが私を助けてくれたんだから。」
「・・・でもそれって・・・」
「ちょっといいかしら?」
と、そこでほぼ中等部しかいない部室にMMがやってきた。
「MM先生、どうなさったんですか?」
「Pんパ麗℃さん、キリエさんどうしてるかしら?」
「はい?キリエさんですか?普通に家にいらっしゃいますけど。」
「・・・最近忙しいのは分かっているけど
明日の卒業式には出席してもらいたいのよね。
ここ一週間休み続けているから心配なのよ。
あなたからも言ってくれないかしら?」
「私でよければ・・・」
放課後。
部活のないシキルが先に帰宅して早速キリエに話す。
「卒業式ですか?まあ行けたら行きますわよ。」
「で、でもキリエさん。せっかくの卒業式なんですよ?
小学校から12年間通った場所からの門出なんですよ?
明日だけは何とかならないんですか?」
「そう仰いましてもX是無ハルトの当主としての立場もありますし。」
「・・・何言ってるのよただのニートってだけじゃない。」
と、リイラと升子が顔を出してきた。
「あなた達言うに事欠いて私をニート呼ばわりですって?」
「だって事実でしょ?ここに来てから3か月経つけど
あんたほとんど学校にも議会にも行ってないじゃない。
去年どれだけ忙しかったのか知らないけどその多忙を盾に
引きこもり生活してるだけじゃないの。」
「・・・相変わらずあなたという人は・・・!!」
久しぶりに睨み合う両者を挟みオロオロするシキルとため息の升子。
「いいわ。どうしても家から出たくないというのなら
力ずくであんたを家から出してあげる。」
「あなた一人で私をどうにか出来るおつもりですか?
去年のタイトルで実力差がどれほどあるか分かったはずでしょう?」
「誰があんたみたいな怪物を一人で何とかするって言ったのよ。」
と、リイラが指をパチンと鳴らした瞬間。
左右の部屋からパルフェ、マリア、マリナ、ヒカリが現れた。
「あ、あなた達いつの間に!?」
「え、えっと、」
「そ、それは・・・」
「私たちも何が何だか・・・」
「いやぁ~面白そうじゃん?」
「・・・どう?私達7人掛かりで挑めば
その義手を奪うくらいは出来ると思うけど。」
「え!?私も入ってるの!?」
升子に手を掴まれリイラの隣に連れて行かれるシキル。
「・・・あなた小学生でしょうにどうして中学生達を味方に・・・」
「だってこの子達はみんなうちの兄貴に借りがあるもの。
高等部のメンバーだとシキル以外は押しが強いから反対されそうだったし。」
「・・・む、」
キリエが眉を顰めた。
実際人数は関係ない。蒼の前なら何万人を相手しようとも
相手がユイムやライラのような変わった人間でなければ全く問題ない。
しかしパルフェはナイトメアカードを、
マリアとマリナは自分と同じ空間支配系カードを持っている。
升子もカードを使えなくなったとは言えあの怪力は厄介だ。
リイラ本人だって決して侮っていい実力ではない。
・・・シキルとヒカリは論外として。
あの7人を相手すると戦術と戦略次第ではキリエでも危ういかも知れない。
「き、キリエさん?学校はちゃんと行ったほうがいいと思いますよ?」
「12年間通った学校なんですから・・・」
「きっとお友達も会いたがっていますよ・・・?」
「そんなに家だけが恋しいかヒキニート豚ヤロー><」
とりあえず義手ロケットパンチで光の速さでヒカリをぶっ飛ばす。
が、発射されたその義手を升子が掴む。
「な・・・!?」
「ごめんなさい。あなたには借りがあるけどこれも恩返し。
無駄な抵抗はしないでおとなしく学校に行きなさい。」
どうにも分が悪い。
戦術だとか戦略だとか云々より年下の少女達に
ここまで自分の行いを非難されるとは思っていなかった。
しかも約一名を除いた全員が自分への心配を以て行動に出ている。
その行動に感動を覚えないほどキリエの情緒は凍っても未発達でもない。
これがリイラの戦略だとしたら、なるほど勝てる道理がない。
「・・・えっと、どういう状況でしょうか・・・?」
と、そこでライラとユイムが帰宅した。
「どうせお姉ちゃんがまた学校行きたくないって駄々こねてるんでしょ?」
「えぇぇ!?でも明日卒業式ですよ!?」
「そうは言っても3年前の中等部の卒業式にすら出てないんだから
もうぶっちぎりの常習犯よ。あれが政府議会の顔なんだから恥ずかしいよね。」
「ユ・イ・ムぅぅぅぅ~~~~~!!」
今すぐユイムに飛びかかりたかったが残った片方の義手をシキルが掴んだ。
「ねえキリエさん?本当はもう分かってるんじゃありませんか?
みんなキリエさんの事を心配しているんですよ?」
「私は面白かっただけどねー。」
直後光の速さでシキルがヒカリにチョークスリーパー。
「この子はただキリエさんと面識が
ほとんどないから対応に困ってるだけなんです。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「いや、白目剥いてて逆にこちらが対応に困るんですが。」
「そろそろいいんじゃない?その意地曲げても。」
次いでリイラが一歩前に出る。
「・・・はあ、分かりましたわよ。行けばいいんでしょ行けば。」
そう言ってキリエは自分の部屋に戻っていった。
「ちょっとリイラ、これどういう状況なの?」
「ユイムの言ったとおりよ。あいつが卒業式に登校拒否ってたのよ。
けど最年長のあいつだからこそ
中等部の後輩達のお願いには勝てないんじゃないかってね。」
「・・・相変わらず他人を使うのが上手いんだから。」
「生えてるくせにそんなフリフリの可愛い服着てる兄に言われたくないわよ。」
「そ、そこまで言わなくても・・・」
「・・・ホント昔からリイラは口喧嘩じゃ最強ね。」
あくびをしてから升子は部屋へと来斗の世話に戻った。
「・・・と言うかシキル?
感動の再会で始まったのにその相手をいつまで伸ばしておくつもり?」
「・・・あ。」
ユイムに指摘されて初めて腕の中でかなり
無理な体勢で意識を失っているヒカリに気付いた。
翌日。
昨日あれだけ後押しされては流石のキリエも退けなかったため
おとなしく卒業式に出席することとなった。
それをパラレル部のメンバー全員で眺める。
ただユイムと目が合うとふたり揃ってそっぽを向くのであった。