表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
5章:パラレル交差する明日へ
123/158

122話「放課後の始まり」

3:放課後の始まり


・放課後。

パラレル部では今日も練習が行われている。

「そう、なるべく心を落ち着かせて・・・。」

キリエがマリアとマリナに空間支配系カードの使い方のコーチをする。

その向かいではユイムがパルフェに高い魔力の使い方をコーチしている。

「ライラくんってば不倫しちゃってるんだもん。

僕の魔力に近いくらいまで後輩ちゃんの魔力を高めちゃうし。」

「ご、ごめんなさい・・・」

「いいから。今は集中だよ。」

ユイムに合わせてパルフェがフレイムのカードを発動して

魔力を集中させることで火炎弾を肥大強化させつつ凝縮を行う。

最初は一発だけを。徐々に慣れてきたなら複数を可能な限り迅速に行う。

その中間ではライラとケーラが組手をしている。

「だいぶ元の体にも慣れてきたようですね。」

「ありがとうございます。これもケーラさんが毎日のように

組手に付き合ってくれていたからです。

今まではユイムさんの体でしたからどこか遠慮がありましたが

完全に元の体になった今何の躊躇もありませんので。」

「それは頼もしいですね。」

こうして普通のように話す二人だがしかしただ話しているだけではない。

二人の間の空間では激しくケーラのレンゲルと

ライラのステップによる連続蹴りが激突していた。

その激突はティラ達だけでなく中等部メンバー達も目を見張っていた。

「では、そろそろ行きましょうか。」

「はい、一本勝負ですね。」

やがて二人が攻撃を止め構えを直し相手を正面に見据える。

次の瞬間。

「クイック・行使サブマリン

「!?」

突如ライラの全身をバケツをこぼしたように大量の水が打ち付けた。

そのコンマ数秒後に

「レンゲル・行使サブマリン!」

「っ!」

ケーラがレンゲルに持ち替えライラに刺突を放つ。

その石突きが鳩尾を穿つ寸前にライラが中段内受けで防ぎ、

ケーラの側面に回り込みながら

「ステップ・行使サブマリン!」

脚力を強化しつつケーラの脇腹に前蹴りを放つ。

が、それもまた刺突から引き戻したレンゲルに

くるぶしを打たれて軌跡がずれる。

「くっ!」

「はっ!」

ライラが足を戻すのとケーラがライラに向き直りながら

レンゲルを再び構えるのはほぼ同時。

そしてケーラの両腕がレンゲルの突きを放つ合図が見えたと同時に

レンゲルそのものが勢いよく伸びた。

「!?」

咄嗟にガードをするライラの手首を石突きが穿ち、

ちょうどライラの視線が手の甲で隠れてしまう。

その間隙にケーラは2本目のレンゲルを後ろ手に構えて

死角からライラの後ろに引いた左足の脛を払う。

「くっ・・・!」

体重の乗った足だったため転倒することはなかったが

半端じゃない力で脛を叩かれた事で膝から下の感覚が麻痺する。

これならまだ転ばされたほうがマシだったかも知れない。

ライラがそのレンゲルを掴んでケーラを投げ飛ばそうとするが

掴まれたレンゲルを解除してバランスを崩したライラの首に腕をかけて

大腰で投げ飛ばす。左足が使えなかったライラは軽く投げ飛ばされてしまうが

受身は問題なく成功してすぐさま立ち上がる。

と同時に再発動されたレンゲルの石突きがライラの鳩尾を穿った。

(・・・ぐっ!やっぱりケーラさんは強い・・・!

私じゃ接近戦は不利だ・・・!)

(・・・下がることで打撃を抑えた。流石ですね・・・。)

互いの思慕が交錯した直後ライラがバック転で

距離をとりながら空中でカードを発動させる。

「フレイム・行使サブマリン!」

着地と同時に直径2センチほどの火炎弾を

一気に20個生成して一斉に発射する。

「ならば私も。フレイム・行使サブマリン

レンゲルを解除するとその両手に炎を纏って空間を滑らせるように動かして

向かってくる全ての火炎弾を受け流す。

非殺傷設定になっているため床や壁に命中しても燃えることなくすぐ消える。

ケーラが20発全てを受け流すと同時に今度は10発の小さな火炎弾を

発生させてライラ向けて放つ。が、それもタダの発射ではない。

一発一発全ての形や大きさ、速さが違っている。

ある火炎弾は激しく伸縮を繰り返しながら宙を切り、

ある火炎弾は螺旋状に回転しながらどんどん加速していく。

恐らくそれら全てを完全に制御しているわけではなく

予めそういう軌道で進むように調整しているのだろう。

しかしそれでもこの攻撃は素直に感嘆せざるを得ない。

使わせれば十人十色に変わると言われるフレイムだが

全国区の実力者に使わせてしまえば恐ろしいことこの上ない。

「なら・・・!」

ライラは魔力を再び練り起こして直径3メートルほどの巨大な火炎弾を

作り出してそれを発射した。

多大な質量を持ったまま力任せに発射したことですぐさま

ケーラの放った火炎弾の多くを打ち破っていく。

小手先の工夫ではどうしようもない暴力的なまでの単純砲撃。

「くっ・・・!」

回避が間に合わずケーラは炎を纏った両手でそれを受け止める。

が、想像を絶する運動エネルギーによって

ケーラの体は弾き飛ばされてしまった。

しかし、ほぼ同時にまだ生き残っていたケーラの4発の火炎弾が

2発ずつライラの顎と後頭部を同時に穿った。

「・・・がはっ!!」

そしてケーラとライラはほぼ同時に床に倒れた。

「そこまでだな。」

組手を見守っていたミネルヴァが二人を片手で担ぎ上げる。

「ケーラはまだどこか力押しに弱い部分がある。気をつけな。

ライラは逆にまだどこか力に頼りすぎている部分が有る。注意しな。」

「はい、アドバイスありがとうございます。」

「あと部長とエースが後輩達の練習置いて勝手に組手をやるんじゃない。」

「す、すみませんでした。」

アドバイスと忠告を受け取りその後は

今までどおり通常の練習メニューを再開した。


・部活が終わりシャワーも浴びて校門前。

「え?ヒカリが?」

待っててくれていたシキルと連れてきたパルフェに事情を話す。

「はい。僕にも姿は見えなくて声しか聞こえないのですが。」

「・・・そうですか。生きていたんですね。」

「それでパルフェさん。ガイアスは・・・?」

「あ、はい。先輩の話を聞いている間も何か考え事をしていたみたいです。」

パルフェが言うと足元の地面からガイアスが首だけを生やしてきた。

「カオスか。またあのバカは厄介事を押し付けてくれたものだ。」

「カオスってどういう性格なんですか?」

「ものすごい気分屋で何を考えているのかは私にも分からない。

ただあいつはどこかパラディンやブランチと似た考えの持ち主だ。

ほぼ常に善悪と損益を考え自分に都合のいい方あるいは望む方に

状況を持って行きたがるきらいがある。

混沌の名を持つが故に彼奴の思考に秩序などという回路はないのだろう。」

「だ、大丈夫なんですか・・・?」

「奴は何より人間が好きだ。極力人間を傷つけるような真似はしないだろう。

・・・ただ困らせたいだけというところもある。」

「・・・随分とアレなカードですね。」

「それでガイアスさん。そのカオスの居場所は分かるんですか?」

「大凡の居場所は分かった。ただ少々厄介かもしれない。」

「教えてください。どこにいるんですか?」

「海底火山エルデだ。」

海底火山エルデ。

それは泉湯王国アク・サスファンテよりさらに外側を埋め尽くす大海。

その中心部に存在するエルデ海域に存在する海底火山である。

当然人間が暮らせる場所ではなく観光などをするような場所でもないため

地理学者の中でもかなりのマイナーなマニアが政府議会より

許可を得て数十年に一度赴くような場所である。

名前自体は有名で教科書にも載っているが

それ以上のことを知る民間人はほとんどいない。

恐らくキリエに聞いてもあまり情報を得られないだろう。

つまりほぼ未開の地に足を踏み入れるということだ。

「どうしてカオスはそんなところに?」

「分からない。だが近くには生命反応もいくつかある。

恐らくその生物を観察してあやつなりの快楽を得ているのだろう。」

「・・・なら早く行かないといけませんね。」

ライラがP3で世界地図を開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ