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パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
1章:交差する拳
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12話「悪夢と平行の少女達」

12:悪夢と平行の少女達


・そしてその日はやってきた。

山TO氏高校パラレル部の5人が地区大会に参加する日だ。

個人戦と団体戦があり、

団体戦は2対2を2回戦と1対1を3回戦行い、

計5回戦中3戦勝利したチームの勝利となる。

都合7人必要だが最低参加人数である5人の場合は

アンカーを二人決める必要がある。

無論ストレート勝ちした場合は除く。

山TO氏チームの組み合わせは

最初のタッグは1戦目にティラ&ラモン、

2戦目にシュトラとユイム(ライラ)、

シングル3戦はケーラ、シュトラ、ユイム(ライラ)の順番だ。

ルールは当然公式試合と同じである。

「ほえ~、結構多いんだね。」

会場。

この地区に所属している20の高校のパラレル部が集まっている。<

当然今ここにいるほぼ全員が参加者だろう。

そしてその視線の多くはライラに集まっている。

「流石に注目の的だね。」

「・・・ユイム?」

「・・・あ、うん。そうだね・・・。」

しかしライラはそれ以上に気がかりな事があった。

それは先日ユイムのP3で発見したメール。

ナイトメアカードのつくり方。

殺傷可能設定にされたパラレルカードを連続で使用することで

カードは本来の姿であるナイトメアカードになる。

あのメールにはそう書かれていた。

さらに添付画像にはそうすることで物理的な送信が可能となっていた

ナイトメアカードが3枚添付されていた。

1枚はチェンジ。しかしこれは既に送信済み。

2枚目はブラスト。これも送信済みだった。<

だが、3枚目であるビーストのカードはまだ未送信なままで

添付画像を開くと同時に手元に送信された。

ビーストのカードは発動者から理性を奪って

ただ相手を滅するだけの獣に変えてしまう危険なカードだ。

いや、内容に関わらずナイトメアカードは危険なカードだ。

競技用に調整されたパラレルカードと違って

戦争があった時代に使われていた兵器といっても過言じゃない代物。

ユイムはこの3枚の内2枚を所持していた。

使用済みのチェンジを外してもまだブラストのナイトメアカードは健在だろう。

物体を爆破して広範囲の敵を爆撃する攻撃型カード・ブラスト

パラレルカードに調整されたものですら使用には注意と申請が必要だ。

(・・・それに、あのメールは3枚目を送信されたら自動で消去された。<

という事はもしかしたらユイムさんは以前にもあのメールを受信していた可能性がある。

つまり所持しているナイトメアカードは1枚じゃないかもしれない。

4枚かも知れないし7枚かも知れない・・・。

一体ユイムさんはどこで何をしているんだ・・・・?)

「・・・ライラくん、どうかした?」

控え室。シュトラが小声をかける。

「え?」

「もう試合始まっちゃってるよ?ティラとラモンが戦ってる。

・・・何かあったの?」

「・・・・・・・落ち着いてからでいい?」

「・・・いいけど、試合には差し支えないでね。」

「・・・うん。」

「・・・前から思ってたけどあなた達妙に仲いいですね。

ひょっとしてユイムさん記憶戻った?」<

「え?いや、そういうわけじゃないんですけど・・・。」

「そうだよ。それにユイムさんはユイムさんだよ。」

「・・・まあ、いいですけど。

ただあなた達の関係って何だか女の子同士と言うよりかは

どこか男女の友達って感じがする・・・。」

「え・・・!?」

「そ、そんなことないよ・・・?ねえ?」

「は、はい・・・・。」

「・・・なんで慌ててるの?まあいいですけど。

とりあえずチームメイトの試合は見ておかないと、ですよ。」

「は、はい。」

3人でモニターを見る。

「リフレクト・行使サブマリン!」

「ウォール・行使サブマリン!」

ラモンが出した壁をティラが反射でベクトルを無視して押し出す。

全高2メートル、幅1メートルの壁が猛スピードで対戦相手に迫る。<

対戦相手がカードで迎撃しようとすると、

「プラズマ・行使サブマリン!」

ティラが2枚目のカードを使用、

突っ込んでいく壁をプラズマに変換させた。

突如として固形物が純粋なエネルギーの塊に変換したことで

対応が遅れ無防備のまま一気に二人共なぎ払った。

「レイン・ド・レイン・行使サブマリン!」

ラモンが2枚目のカードを行使。

戦場に雨が降り注ぎ始めて雨に打たれると魔力と体力が吸われていく。

「水も滴るいい女、」

「だけどいい女はそう易易と肌は見せないもの。」

ティラとラモンは傘を差してその雨を防ぐ。

「・・・ぐうううう・・・!」

相手側には当然防ぐ手段はなく大ダメージを負って

叩きのめされた後ということもあってか立ち上がろうとする<

なけなしの体力すら吸われていき結果10秒後に倒れて気絶した。

「7!8!9!10!そこまでーっ!

勝者は山TO氏高校のティライム・KYMと赤羅門・ミドリュエスカラナイト!」

「やったね!」「当然!」

傘を閉じて可憐にお辞儀してから二人は戦場を後にした。

同時にアナウンスが入ったため

ライラとシュトラが席を立つ。

「二人共アンカーなので体力も魔力も温存するように。」

「分かってます。でも、」

「私達が2度戦場に出ることはない。」

ケーラを背にして二人が控え室を出る。

そして、舞台。

先月の大会とは比べ物にならない大舞台。

ライラもこの姿でここまでのスケールは初めてだった。

正直負ける事そのものは恐れていない。

小さな油断1つで、戦術ミスの1つでいくらでも形勢は逆転するし

相手も自分も人間だ。

その小さなミスはいくらでも発生しうる上

どれだけ可能性を0に近付けても0でない限り引く時は引く。

だけど敗北することでユイムの名誉が傷つく事だけは避けたい。

「って考えてるんでしょ?」

「シュトラさん、ちょっと怖いよ。」

舞台へ続く廊下を歩きながらいきなりシュトラが考えを読んできた。

「大丈夫。私がいるから。」

「・・・うん、頼もしいよ。」

「あ、ユイムちゃん!シュトラちゃん!」

と、前方からティラとラモンが歩いてきた。

「一発かましてきちゃってよ。」

「私達のコンビネーションとどこまで差があるか。」

「全力を尽くしますよ。」

「ジュースで乾杯の用意をしておいてよ。」

4人それぞれが短くタッチをしてすれ違った。

そしてライラとシュトラが舞台に降り立つ。

ライラとしてもこの姿でこれほどの大舞台に立つのは初めてで

緊張していないといえば嘘になる。

だが、迷いは勝機を逃す。

それに隣に立つのは自分の秘密を知っている信頼出来る仲間。

臆する理由は何もない。

二人が舞台の中央へ臨むのと同じように相手方も

ゆっくりと近付いてきた。

流石にこの姿と相対すると知って向こうもわずかに動揺しているようだ。

それでも試合開始の号砲がその同様を神隠しにする。

「・・・行きます!テンペスト・行使サブマリン!」

ライラがカードを発動する。

そのカードにより舞台に暴風雨が吹き荒れる。

先程ティラ達が使ったものと違って吸収効果はないが

かなりの風圧で相手方は姿勢を低くして吹き飛ばされぬようにしている。

それでもカードを懐から出して発動・・・出来ずにカードが吹き飛ばされてしまった。

「グリップ・行使サブマリン!」

そしてカードで握力を強化したシュトラが一気に迫り、

相手二人の首を片手ずつで締め上げる。

ライフの効果もあってどんなにきつく締めようとも

酸欠になることも首の骨が折れることもないが

それでもこの暴風雨の中100キロを越える握力で

首を絞め上げられては相当に苦しいはずだ。

「ステップ・行使サブマリン!」

そしてシュトラが手を離すと同時に

ライラが背後を奪い強化した脚力で廻し蹴りを放つ。

強力な威力の廻し蹴りが二人の背中に叩き込まれ、

屈むシュトラの頭上を通り抜けて背後の壁に頭から突っ込んでいった。

そのまま倒れたっきりで10秒が過ぎ、WKO。

開始17秒でライラ・シュトラ組の勝利となった。

「ライラくん、流石に魔力すごいね。」

帰り道の廊下。

歩きながらカードで出したタオルで体を拭くシュトラ。

「ごめんなさい。範囲は工夫したんですけど・・・。」

「いいって。こうなるって分かってたからさ。」

「あ、」

前方。

ケーラが歩いてきた。

「シュトラさん、シャワー浴びてきたらどうですか?

丁度上がる頃には乾杯できると思いますよ。」

「そりゃいい。」

「ケーラさん、頑張ってください。」

ケーラが両手を出し、すれ違いざまにライラとシュトラがタッチをした。

そうしてケーラが舞台に上がり、相手方も舞台にやってきた。

「・・・さあ、行きますよ。」

ケーラが懐からカードを取り出す。


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