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パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
4章:遠き日より来りて
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115話「傷だらけの挑戦者」

28:傷だらけの挑戦者


・全国大会準決勝最終戦。

控え室を出ようとしたケーラが突如苦しみだした。

「ケーラさん!?どうしたんですか!?」

「・・・力が・・・」

ライラに肩を貸されながら何とか壁にもたれかかる。

手の甲は眩く輝いていた。

「これは・・・?」

「昨日の宅配で・・・うううっ!!」

すると光り輝くそこから血が滲み始めた。

「これって血管がどうにかなってるんじゃないの・・・!?」

シュトラは慌てて冷凍庫から氷を出してハンカチに詰めて

ケーラの手首に巻きつける。

「ユイムさんが前に魔力暴走した時と同じ処方で

大丈夫かどうかわからないけど・・・。」

「・・・ありがとうございます・・・。」

ケーラが微笑む。しかしその顔の苦悶は変わらない。

よく見ればケーラの袖には深く血が染み付いていた。

それを見たシュトラが慌てて袖をめくるとケーラの右腕全体が

マグマのように赤く黒く変色していて噴火寸前の火山の火口のように

腕の筋肉全体が伸縮を繰り返していた。

「・・・そんな、一体どういうことよこれ!」

「ケーラさん、すぐに病院へ行きましょう!」

「・・・ですが試合が・・・」

「そんなこと言ってる場合じゃないですよ!

これは普通じゃない、ブランチか天死か・・・。

とにかく人間以外の何かが関わっています!

もしかしたら升子のように二度とカードが

使えなくなってしまうかもしれませんよ!」

「・・・・・」

「それにもしここでケーラさんが出て試合に勝ったとしても

すぐ後には決勝戦があるじゃないのよ!

まさかそれまで無理して出るつもり!?」

「・・・・・・・」

ケーラは黙って全員の顔を見渡し最後にミネルヴァを見やる。

ミネルヴァは黙ったまま頷いた。

「・・・分かりました。私のせいで大変申し訳ありません・・・!!」

倒れこむように、いや本当に倒れながらケーラは頭を下げた。

「・・・何事?」

丁度そこへラットンが戻ってきた。

そして倒れているケーラの右腕を見やる。

「・・・すれ違わないから何か変だと思っていたけど

そういうことね。私、救急車呼んでくる。」

「じゃ、あたしは大会の人に知らせてくるよ!」

「私も行くよ。何となくだけど今単独行動は危険だ。」

「なら私はラットンに・・・」

「いえ、シュトラさんはここで看ていてください。

ラットンさんへは僕がついていきますから。」

そうしてラットン、ライラは救急車を呼びに、

ティラとラモンは大会スタッフに知らせに向かう。

残ったシュトラ、ミネルヴァ、パルフェが

ケーラをソファに寝かせようとする。

しかしその瞬間。

吸引バキューム

声がした。同時にケーラの姿が消えた。

「!?」

ミネルヴァが異変に気付いた時にはもう遅かった。

そして、

「・・・ここは・・・」

ケーラは舞台に立っていた。

「おーっと!やっとケーラ・ナッ津ミLク選手の登場です!

ではこれより準決勝戦シングル戦3を始めたいと思います!」

「何!?」

モニターからの声を聴いて3人が驚く。

どうやらまだティラ達からの知らせは受けていないらしい。

「・・・・・・」

汗だくで右腕を抑えたままのケーラの前に

まるでキョンシーのような男が立っていた。

「嘉手納高校からはジャンドル・ケッシー・マクドナルド選手!

山TO氏高校からはケーラ・ナッ津ミLク選手です!

それでは見合って見合って・・・はじめっ!!」

号令と号砲。同時にジャンドルがカードを抜く。

ワーム行使サブマリン!」

カードが発動され地面を貫き、巨大なイモムシが出現して

立っているだけでやっとな無防備のケーラをなぎ払う。

「ぐっ・・・!」

受身すら取れずにケーラの体が舞台を転がっていく。

当然立ち上がるのを待たずワームが長い体でケーラを締め付ける。

「ぐううううううう・・・・!!!」

さらにそのままワームは自らの体ごとケーラを地面に何度も叩きつける。

10度叩きつけてから空高くケーラを投げ飛ばす。

「ヴォルカニック・行使サブマリン!」

ワームを戻して2枚目が発動。

地面から炎が吹き上がり空中のケーラを焼き尽くす。

「・・・・・くっ、」

空中で爆発が起き、弾かれるようにケーラが舞台に叩きつけられた。

全身から黒い煙を発して呼吸すら苦しそうだった。

いくらライフで怪我をすることもダメージで落命することもないとは言え

その分痛覚は数倍にも跳ね上がっている。

それにライフ発動前に受けていた傷はそのままだ。

気絶していない方がおかしい状態である。

「ハンマー・行使サブマリン!」

次いで3枚目、大柄なハンマーを出してケーラを

なぎ払うように殴り飛ばす。

「ごふっ!!」

ピンポン玉のようにぶっとび壁に叩きつけられ膝から落ち倒れる。

そこへジャンドルが走ってきて壁ごと攻撃するように

ハンマーでケーラをひた殴る。

6発目が放たれる。その直前。

「・・・レンゲル・行使サブマリン

ケーラが何とかカードを発動させてレンゲルで

ハンマーの持ち手を抑えて攻撃を止める。

「!?」

「申し訳ありませんが余裕がないので節操なく行かせてもらいます。」

そのままハンマーを流し、側面に回り込み

振り向いたジャンドルの顎にとびひざげりを打ち込みつつ

レンゲルで後頭部を穿つ。

そして顎とレンゲルの2つの打点を支点にして

体をひねってジャンドルを真上に投げ飛ばす。

「はあ・・・・・はあ・・・・・」

立ち上がったケーラがレンゲルを杖がわりにすると

丁度レンゲルの上柄部分に

ジャンドルが落下してきて鳩尾を自らの体重で穿った。

「これは強烈~~~!!ケーラ選手の怒涛の反撃が炸裂だ~!!

しかしたった今連絡が入りましたがケーラ選手、

お体は大丈夫なのですか!?」

ジャンドルが気絶し、倒れると同時にライフが解除されケーラが膝をつく。

「・・・出てきたらどうですか?」

そのままの態勢でケーラが声を出した。

すると、山TO氏側の舞台出入り口から一人の影が近寄ってきた。

「・・・さすがだね、ケーラ。」

「・・・ラウラ・ラリーラ・来音さん。

宅配業者を装って私に呪いを刻んでまで一体どういうことですか・・・?

泉湯王国アク・サスファンテは、シキルさんはどうなったんですか!?」

「・・・そこまで見抜いていたとは。」

「ラウラさん!?」

と、そこへライラ達7人がやってきた。

「・・・吸引バキューム行使サブマリン

もう一度発動し、今度はユイム、升子、来斗、キリエを引き寄せる。

「これで全員。そして向かおうか。泉湯王国アク・サスファンテに。

転移テレポート行使サブマリン

今度はテレポートを発動し、12人は咄嗟に会場を後にした。


泉湯王国アク・サスファンテ

しばらくぶりにやってきたライラだったが来ると同時に身震いした。

「ら、ライラくん・・・これって・・・」

ユイムが自分の体を抱きしめるようにうずくまる。

「・・・天死の気配ですね。それも1体や2体じゃない。

一体何がどうなっているんですかラウラさん。」

「・・・いきなり泉湯王国アク・サスファンテに天死が現れた。

そして瞬く間にここを根城にしたんだ。国民はほぼ全滅。

シキルは今あの地下独房の中で隠れている。でも時間の問題。」

「ならどうしてこんな回りくどい真似をしたのですか?

直接言ってくれれば昨日の内には来れたものを・・・」

「・・・出来なかった。僕には呪いがかけられているんだ。

泉湯王国アク・サスファンテ領内以外で天死の名を口に出来ないように。

だからあの手紙に暗号を、ケーラの手に呪いを仕掛けて

ここにこうやって無事に来られるように仕向けた。

・・・3回目で悪いけれど泉湯王国アク・サスファンテを、

シキルを助けて欲しい。僕に残った最後の親友だから・・・」

ラウラがケーラの手の呪いを解除しながらそう告げた。

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