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パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
4章:遠き日より来りて
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106話「世界に連なる覇者達」

19話:世界に連なる覇者達


・12月末日。

パラレルカードの全国大会がついに行われる。

来斗は応援に来てくれたチーム風のメンバーに預けて

ライラ達は選手控え室に向かった。

「・・・・・・・・」

「えっと、升子ちゃん。」

来斗を抱く升子にユイムが声をかけた。

当然まるで親の敵か目の敵を見るような鬼のような形相で振り向かれる。

その殺気にユイムだけでなくその胸で抱いた来斗まで怯える。

「私はあなたがライラにしたことを忘れない。許さない。

あなたがこの子を抱くことは許さない、永遠に。

あなたは私にとってブランチや天死以上の仇敵・・・。

・・・それで何か用?」

「・・・・・・」

ユイムが話しかける度に今の呪詛を唱えてから用件を聞いてくるようになってきた。

全く無視してくれるよりかはマシなのかもしれないが

心地がいいわけない。彼女の言うとおり自分が悪いのは変わらないことなのだが。

「いや、ブランチの方が悪いと思うんだけど・・・」

「私は何か用って聞いたんだけど。」

「あ、うん。これを・・・」

ユイムが出したのは手紙だった。

この時代手紙などもはや絶滅危惧概念だ。

しかし升子にはその絶滅危惧概念を今でも使っている人物を知っていた。

「・・・これは・・・」

「あなたのお母さんとお父さんからそれを預かってるんだ。」

「・・・・・・・・・」

手紙を受け取りデコピン一発ですべての封を開けて中身を見る。

そこには自分用に作られた口座番号だけが書かれてあった。

「・・・何よこれ。」

「僕に聞かれても・・・。僕はただそれを渡せって言われただけで・・・」

「あんたなんかに聞いてないわ。」

とりあえずその番号を控えると指パッチンで起こした摩擦熱で

手紙を跡形もなく焼き払った。

「・・・升子ちゃんそんな手品も出来たんだね。」

「私は物事を楽に進めるためならどんな努力も惜しまないだけ。」

そう言って来斗を抱いたままユイムを背に先に行った。


・控え室。

「最初の対戦相手はエリア88の代表校であるバルトサンデス高校だ。

このチームはタッグ戦が強い。

X是無ハルトの二人はともかくティラとラモンは気をつけろ。」

ミネルヴァがホワイトボードを使ってアドバイスを行う。

正直ティラとラモンの実力はとても全国区に到達しているとは言えない。

しかしこの二人にも進歩がないわけではない。

この3ヶ月民子から二人に最適なカードの情報を収集されていた。

その成果の1つがチャージを連発してからのダイダロス。

実業団のプロ相手にも有効だというのは10月の試合で実証済みだ。

とは言えそれだけに頼っていたからこの前はチーム風に敗れてしまった。

だから他にもいくつか策が必要なのだ。

本当に、本当の本当に嫌だったが

チーム風の二人と一緒に稽古をしたりもした。

その二人曰く

「ミニスカでやるならいいぜ。もちろん下に履いていいのは下着だけだ。」

「汗だくな美少女と一緒に組み合から見合いなんざ最高だぜ!」

と言いながら涙して語ってきたのでダイダロスで流したこともあったが。

とにかくその二人を相手にも新しい技は試してみたが

チャージ&ダイダロスに比べると地味で成功率は半々だった。

「まあ、あの二人はタッグ戦だと十分全国レベルだから。」

ライラにフォローされても中々納得できない。

しかし後々冷静になって考えてみればプロ相手にも通用し、

全国区相手でも50%は通用する技を持っていれば

それなりに強い方なのではないかと思えてきた。

だから自信かんちがいを持ちながら二人は控え室を出ていく。

長い廊下が今日は一段と長く感じた。

「・・・いよいよだね。」

「・・・ええ。」

たった今この足で全国の場で最初の一歩を踏みしめる。

そう考えると竦んでも来るがしかし立ち止まる理由にまではならず

二人は全国の舞台に上がってきた。

「さあ!これより全国大会第一回戦!

山TO氏高校パラレル部VSバルトサンデス高校の

試合を始めたいと思います!!

実況は今までに引き続き全ての試合を

実況するアナウンサーとして先日ギネス認定されました

DJ・キングJ・美鈴金子がお送りいたします!!

それでは!まずは山TO氏高校の選手から!

ティライム・KYM選手と赤羅門・ミドリュエスカラナイト選手です!!」

アナウンスが入り二人が入場する。

「続きましてバルトサンデス高校からは

ロシナンテ・アルキメデス選手とアレキサンドリア・後醍醐選手です!!」

敵方の二人も入場する。どちらも旧北欧系の美男美女だった。

「・・・ラモン、流石に全国は違うね。」

「確かにビジュアル的にもそうかもしれないが戦う競技が違うよティラ。」

「ではでは!!見合って見合って・・・はじめっ!!」

号令と号砲。同時に4枚のカードが宙を切る。

ウォール行使サブマリン!」

ストップ行使サブマリン!」

ラモンが壁を出した瞬間にロシナンテがカードを発動して

その壁を空間に貼り付けて停止させた。

「!?動かせない・・・!」

「非生物を空間に貼り付けて完全停止させるカード・・・。」

「そして、ミサイル行使サブマリン!」

アレキサンドリアが発動すると停止したはずの壁が

超スピードで動き出してラモンに突進していく。

プラズマ行使サブマリン!」

ギリギリでティラがカードを使ってその壁をプラズマに変えて

直撃を避けてそのプラズマで相手二人を狙う。

が、そのプラズマさえストップによって止められてしまった。

「え!?」

「言ったはずよ非生物なら完全停止できるって!」

「そして吾輩のミサイルで打ち返す!!」

停止されたままのプラズマの塊がティラに突進していく。

「う、ウォール!」

それをラモンがギリギリで壁を使って防ぐと

今度はその壁が再び止められてミサイルとして突っ込んでくる。

「くっ・・・!」

ミサイルとして突進する物体の速度は時速200キロ。

ある程度の距離があっても回避するのは難しい。

二人は防御態勢を取るがほとんど威力を

相殺できずに吹っ飛ばされてしまう。

畳1つ分の大きさ及び重さの壁が200キロで突っ込んでくれば

ライフのおかげで守られているとは言え倍増した痛覚によって

大抵の選手は気を失ってしまうだろう。

その点普段から格闘選手のように

鍛え上げられていた二人は軽く怯む程度で済んだ。

「ラモン、」

「いや、まだだ。相手の残り2枚ずつが分かってからだ。」

「だったら・・・」

「ええ、早速試してみましょう。通用するか否かを。」

そうしてラモンは1枚のカードを手にとった。

ブレイン行使サブマリン!」

それを発動した途端ラモンの脳は一気に活性化され、

目に映るもの全てが数値化されたような感覚に陥った。

自分含めた全ての物体の運動がスローモーションに映り

どのように運動するかの大体の予想が可能となる。

それによりラモン自らが相手二人に向かっていき、

その間にティラがチャージを発動する。

「フレイム・行使サブマリン!」

アレキサンドリアが発動し、火炎弾を発射する。

(直径1メートル、温度はおよそ600度。

相手との距離が30メートルほどで4秒後には直撃する。

この一発目は間違いなく回避できる。

だけど相手方のあの美女の方、何かカードを発動しようとしている。

そしてその視線はまっすぐ自分に向いている。自分を観察している。

右でも左でも上でも下でもどこに移動してもいいように狙っている。)

「フ・・・」

ロシナンテがカードを出してその名前を口にしようとしていた。

フから始まるカードなどいくらでもある。

たった今アレキサンドリアが発動したフレイム然り、

足場を凍らせるフリーズのカード然り。

カードの名前を唱え発動する時間は大体1秒にも満たないだろう。

しかし今のラモンの時間間隔は通常の10分の1。

1秒が10秒も同じだ。

だから、

「リ・・・」

スローながらも2文字目が分かった。

”フリ”。そこからなるカードはそう多くはない。

十中八九フリーズだろう。

そしてフレイムの火炎弾が命中するよりもやや詠唱のタイミングが早い。

恐らくフレイムが命中する寸前にフリーズを

発動して相手の足場を凍らせて回避の阻害をするのが狙い。

(・・・いや、それだけじゃないな。)

自分の後方直線上にはティラがいる。

チャージを発動した瞬間で無防備な姿だ。

もし自分が回避行動をして万一フレイムを回避できたとしても

自分が影になっていて正面の敵の動きがほとんど見えないティラは

まず間違いなくフレイムの攻撃を避けることができない。

事前に相談はしていたにせよ現場では全く相談もなしに

(これだけの多段構えの戦術を

さも当然のように行えるのが全国区の力か。)

なら今自分に出来る事はそう多くはない。

そう思ったラモンはブレインを解除した。

時間間隔が元に戻り、

「フリーズ・行使サブマリン!」

フリーズが発動して足場が凍っていき自分に火炎弾が迫る。

そしてそれをラモンは、

「ぐううううううううううううううう・・・・!!!」

その場で足を止めてその両方を受け止めた。

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