表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
4章:遠き日より来りて
106/158

105話「Infantaria」

18:Infantaria


・そして子育てが始まった。

スカイベビーカーによって来斗は自由自在に空を飛びまわってしまうため

伸縮自在のビームロープでちゃんと手綱を握っておく。

キリエがメイドにおむつを買いに行かせ

ライラが升子への案内も兼ねて家の中を歩き回る。

実際そんじゃそこらの学校よりも広いため一周するだけでも

意外と体力を使ってしまうトンデモ物件だ。

鎖骨が使い物にならない=両腕を前に伸ばしながら

力を強く入れられないため

ハイハイが出来ないのでこうなってしまうが仕方のないことだ。

政府議会も出産や育児には反対していたが

不自由な思いをさせ体の成長を遅滞させる事を条件に認めてくれた。

後から生まれてくるであろうユイム、シュトラとの子も同じだ。

確かに可哀想ではあるがそれでも命という名の未来が得られるのなら安い。

「ねえライラ。この子といる間はチェンジで元の顔に戻れない?」

「・・・そうしてもいいけど屋敷の人は僕の正体知らないし

政府議会からも口止めされてるから出来ないんだ。」

「・・・父親の顔を知らずに生きていくのねこの子は。」

「そんな罪悪感極まる文句をつけないでよ。」

「・・・そう言えばキリエさんやっぱりちょっと不機嫌ね。

X是無ハルト以外の人間を入れているから?」

「キリエさんは勘違いされやすい人だけどそういう人じゃないよ。

ただ緊張しているだけだよ。この前あんなことがあったばかりだし。

いつブランチや天死がここへ来るかも分からない。

政府議会にもかなり顔が利く剣人さんを敵に回してしまったから

議会所属であるキリエさんはいつ権力面で制裁を受けるか分からない。

でも、僕達の味方でありたいって思ってくれているから・・・。

正直難しい立場にあると思うんだ。」

「・・・」

「どうしたの?」

「いや、ライラって本当に変わったなって。

昔のライラはそこまで他人に気を配れなかった。

・・・そんな余裕がなくて何かにすがりついていないと

いてもたってもいられないようなそんな感じだった。」

「・・・心に余裕ができたのかもしれない。」

「心に余裕?」

「・・・うん。キリエさんが心配するほど危険な状況かも知れないのに、

この姿になってから事件続きだっていうのに

何だか昔にはなかったものが見えてきたっていうか、

男か女かも分からないいつ怪物になって人を襲ってしまうか

分からないようなライランド・円cryンじゃなくて

僕の憧れたユイム・M・X是無ハルトを演じる事になって

何というか自分への恐れがなくなったというか・・・。」

「・・・怪我の功名ね。」

「かもね。」

升子に言われて初めて気が付いた。

確かに自分は変わったかもしれない。

自分のこと以上に大変な事件が次々と起きたり

今までは考えられなかった出来事が起きたり

憧れだったユイムや親友であるシュトラと初体験したり

今までの自分を捨てて全く新しい環境に

その身を投げ出したからかもしれない。

「人間ってちょっとの変化やきっかけだけで変われるのかもしれないね。」

「・・・何よそれ。変なライラ。」

「あはは・・・。一応父親になったからね。」

「・・・ひょっとしてライラ、母親になりたかった?」

「・・・僕だって昔は女の子だったんだ。

女の子なら誰でも一度はお嫁さんになりたいって思うよ。

まあ、今となっちゃ完全に性別は男寄りになっちゃってるから

男相手とか考えられないけどね。そもそも穴が塞がりかけてるから

やったとしても多分子供作れないだろうし。」

「・・・ライラ・・・」

「だから気にすることはないよ。」

「ねえライラ。だったら私とキス出来る・・・?」

「え!?いきなりどうしたの・・・?子供が見てるんだよ・・・?」

「・・・だってライラの子供生まれたのに

キスもしていないなんて夫婦じゃなくてもこの子の両親なのに・・・。

・・・ううん、これは私が勝手にやったこと。

まだペニスの感覚に慣れていないユイムの玉を握って

断ったら潰すとか脅してレイプしただけのこと。」

「・・・もうちょっと僕の体いたわって欲しいかな。

と言うか玉ついてないし。」

「そもそもここに置いてもらえること自体が贅沢だものね。」

「聞いてないし・・・」

「でもこの子が学校通うようになって両親が

結婚どころかキスもしてないなんて

知ったら周りからどんな目をされることか・・・」

「・・・多分ユイムさんもこんな形で脅されたんだろうなぁ・・・」

この親友は昔から怠惰な面はあったが自分が楽するためなら

どんな努力も惜しまない面もあった。

温室でズル休みしていた時もグラビティで体を鍛えて

武器にしながらズル休みを強行してたし。

楽に試合で勝つためにお年玉を貯めて強力なカードを手に入れたし

鍛えた体とその強力なカードを使って如何に楽に相手を倒すかを

綿密に計算して自分や葵、飛鳥などを相手にトレーニングしていた。

きっとこの少女は誰よりも怠惰に生きるための努力をしている少女だろう。

それなのにある意味最も怠惰から遠く離れたところにある

妊娠、出産、育児をする事になったのは

きっとそれだけライラのことが・・・。

そんな少女を前に欲情しないのはやはり昔馴染みだからだろうか。

女性であることを奪われ既に身も心も男性となってしまった今の自分でも

きっとどこかにこの少女とは

同性の親友同士であるという意識ためらいが残っているのかもしれない。

(・・・父さんはどういう気持ちだったんだろう。)

父親も結婚する前母親とは幼馴染だったと聞いたことがある。

学生時代は普通に少女同士であって親友同士だったと。

それから10年もしない内に男性に変貌してしまったとは言え

どうして同性の親友を異性の伴侶として見る事が出来たんだろうか。

特にあの同じ女の子であっても可愛いと思えるような女の子であった父親が

どうして少女であることを放棄できたのだろう。

・・・考えるほどに意味不明な表現だが。

「・・・どうしたのライラ?」

「あ、ううん。何でもないよ。」

プカプカと浮く来斗を見る。

ほとんど見えないとは言え景色が変わっていくことが面白いようで

中々はしゃいでいた。

しかしやはり鎖骨が痛むのか腕をジタバタさせてはすぐに泣き始めた。

スカイベビーカーを揺らしてあやしつつしばらくは大変そうだと感じた。


・一方。円cryン家。

「・・・どうかしたの?」

風呂上がり。

リイラが髪をタオルで拭きながらリビングにやってくると

妙に不機嫌そうな表情のユイムがソファに横になっていた。

「なんか最近つまらなくて。」

「そう言えば最近女遊びしてないわね。不能になったとか?」

「違うよ・・・多分。シュトラもライラくんも忙しいのか

全然電話に出てくれないし実家には戻りたくないし

戻ってもあのおっかない馬鹿姉貴と

同じくらいおっかない怪力ちゃんがいるし。

どうにも気力が沸いてこないんだよね・・・。

この体が特別だって分かっちゃって以来パラレルも禁止されたし。」

「・・・今までパラレルだの女遊びだの連日連夜やってて

体が運動に慣れきっちゃったのね。だらけることに慣れてないんでしょ。

・・・まるで升子とは正反対ね。」

「升子ちゃん?僕あの子のことよく知らないんだよね。

なんせ会って2秒でばらされたくなかったら

レイプされろしろって脅されて、

仕方なく言うとおりにした後はほとんど喋ったりしなかったし。」

「・・・あんたどれだけ嫌われてるのよ。まあ、大体分かるけど。」

「中々ショックだったよ。

お姉ちゃん以外の女の子に嫌われたことなかったから。

けど、そっか。あの子ダラダラしてたのに

ライラくんの事だとあんなに積極的になるんだ。」

「あんたでも他人に感心することあるんだ。」

「・・・リイラちゃんこれだけ一緒に暮らしてて

まだ僕のこと嫌いだったり?」

「さあ、どうかしらね。」

そう言ってリイラは自分の部屋に戻っていった。

「・・・やっぱり恋愛は女の子を変えるもんなんだね。」

つぶやき、ユイムもまた部屋へと戻っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ