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パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
4章:遠き日より来りて
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103話「パラレル交錯する夜」

16:パラレル交錯する夜


・病院。

ライラの子供を預かったまま地下医務室までの道を走る主治医。

その後を追いかける無数のブランチ。

そしてそこへキマイラに乗って飛来する剣人。

「ブランチ!その子供を渡しはしない!」

「風行剣人か。これからもっと面白い事が起きる。」

「お前にはもうこれ以上何も起こさせはしない。」

キマイラから飛び降りて剣を振るいブランチを次々と切り裂いていく。

しかし次々と新しいブランチが出現して主治医を襲う。

両腕が8本の触手となっているタイプであり

主治医の両手足と首を締め付けて

赤子を回収する。と、その触手を一発の弾丸が貫く。

「ライランドか!」

「剣人さん!」

ライラがやってきて赤子を抱きとめると

直径2メートルほどの水球を作り上げてそれで剣人を包み込んだ。

「ライランド!?」

「邪魔されたくないんでしばらくそうしていてください!」

「・・・やはり面白いことになったではないか。」

無数のブランチが笑い声を上げる。

ライラが赤子の顔を見るとその両目が赤く染まっていた。

「目が・・・」

そこで父親に言われたことを思い出す。

何かを1つ無心にジッと見つめてはいけない。

今この赤子は父親である自分をジッと見つめている。

そのために両目が真紅に染まり目の形が猫のように鋭くなっている。

一度だけこれと同じ目になった時は

見た相手のことがよくわかるようになっていた。

息遣い、電気信号、身体能力、自分との距離、虚弱性箇所の把握。

だからかこの赤子はまだほとんど力の入らないであろうその手で

自分の手首の血管を引っ掻いていた。

ユイムの体は魔力暴走を起こしやすい体質だ。

そして魔力は血管を走る。

もし今引っ掻いている手があの怪物の手だったら手首は落とされていて

破裂した血管から魔力が暴走して

ほぼ間違いなく自分は死んでしまうだろう。

やはりこの赤子も自分と同じで天死の末裔なのだろう。

しかしそれを理解してなお父性か母性かこの赤子を離したくはなかった。

だから逆の手に構えたハンドガンでブランチを狙う。

だが多数のブランチの背後には囚われた主治医がいる。

「どうした?撃たないのか?」

「・・・・くっ・・・!」

「キマイラ!」

「分かった!!」

剣人が叫ぶとキマイラが走り無数のブランチを蹴散らしていく。

そして剣人を水球から解放させた。

同時に剣人の剣がライラのハンドガンを切断する。

「あ・・・!」

煌牙キマイラ行使サブマリン!!」

「応よ!!」

一度キマイラがカードに戻り剣人が剣を鞘に納めながら

発動を命じるとその伸ばした両手に黄金の剣が、

剣人の背中に翼が出現した。

「これが・・・キマイラの・・・」

「悪く思うなよ!!」

一瞬で剣人の全身が黄金に染まり切っ先を向けながら光の速さでライラに突進する。

「あ・・・」

きっとその刃が赤子に刺さらなかったのは本当に偶然なのだろう。

あるいはブルーを発動したままだったからキリエが無意識に望んだことか。

しかしその黄金の刃は漆黒の鎧を粉砕し、ライラの胸を貫いていた。

ライラの体を鞘のように鍔がその胸に達するとさらに黄金の光が輝いて

ライラの体をミサイルのように吹っ飛ばす。

「ライランドくん!!」

「ライラくん!!」

X是無ハルト姉妹が到着した時には赤子は床に落とされ

ライラはいくつもの壁を突き破りながら病院の外まで吹っ飛ばされていた。

そして剣人が黄金の剣を赤子に向けた。

「ダメ!!」

と、剣人の前にユイムが立ちふさがる。

その間にキリエが赤子を抱き上げた。

落とされた事で頭から激しく出血していたがブルーの力で治癒する。

「・・・・・・。」

「この体を斬れる?僕しぶといんだから中々死なないよ?」

「・・・・・自分が何をしているのか分かっているのか?

お前がその体で危険を侵せばまた別の天死がやってくる。

ライランドのスライトでなければ天死を一撃で倒すことは出来ない。

一撃で倒せなければ負傷したことでまた別の天死がやってくる。

それの繰り返しだ。だが、まだ幼いその子供なら一撃で殺せるんだ。」

「・・・あなたはライラくんとは違う。」

「何・・・?」

「ライラくんは破滅と水難っていう2枚のマイナスなイメージしかない

ナイトメアカードを使っていくつもの未来を救って希望になってきた。

でもあなたは違う。あなたは未来も可能性も奪っている!」

「そいつが成長すれば人類の天敵がまた一匹増えるんだぞ!?」

「でも!そうなるとはまだわからないじゃない!

ライラくんもライラくんの体を使ってる僕もこうして平和に暮らしている!

ライラくんのお父さんだって最後まで人間の心を忘れずに生きてきた!

臭い物に蓋をするだけじゃ人は変われないんだよ!

旧い人ほどそうしたがるのは未来に希望を持てない証拠だよ!」

「・・・・・・」

「ユイム!ライランドくんを!」

「あ、そう言えば・・・!」

二人が吹っ飛ばされたライラの方へ向かう。

キリエが病院を出たことでブルーの効果が切れて病院が元の空間に戻る。

「・・・・どうするんだ剣人?」

「・・・仕方ない。しばらくは様子見だな。」

剣人がキマイラを戻して病院から去っていった。


・夜が明けた。

「あれ?今日ライラくん休み?」

教室でティラとラモンが投稿してシュトラに聞いた。

「そうなの。

なんでもまた何か厄介事に巻き込まれて大怪我したみたいで・・・」

「シュトラ、それってあの子の子供で休んでいる事の便宜?」

「それもあったみたいなんだけどその過程で本当に大怪我して・・・。

私学校終わったら部活休んでお見舞いに行こうと思うの。」

「心配だね。私達もそうしようか?」

「ならケーラに話をつけておこう。」

それから3人でケーラに事情を話し放課後になったら

部活に出ないで病院まで行った。

「う、う、う、産まれてるぅぅぅぅぅぅ!?」

ティラが絶叫した。

保育用カプセルに入れられたライラと升子の子供を目撃したのだ。

他にいろんな見るものがあるからか目は通常通りのスカイブルーだった。

しかしその両隣。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・ちょっとうるさいわよ。」

カプセルを挟むように置かれたベッドにはライラと升子がいた。

升子は出産して半日程度で元気そうだったがライラは眠ったままだった。

剣人の一撃を受けて胸部に大きな穴が空いていて肺も消し飛んでいた。

当然そのままでは生命活動に支障が出るため

細胞再生装置を使って失った部分の再生を急いでいた。

ライラの眠るベッドにはユイムが付き添っていた。

「ユイムちゃん・・・」

「やっほ。ティラ、ラモン、シュトラ。」

「ひどい顔だけど寝てないの?」

「ちょっとは寝たけどでも・・・」

「ユイムさん、何があったんですか?」

「・・・実は、」

ユイムが昨夜の話をする。

「・・・それで来た時は病院慌ただしかったんだね。」

「直接会ったことはないけど

その風行剣人って人がまさか敵に回るなんてね・・・。」

「あの人はぁぁぁぁぁっ~~~!!!

今度会ったら色々と許さないんだからぁ~~~!!」

シュトラが目を吊り上げて怒りを露わにすると升子にゲンコツされた。

「痛い!ってか本気で痛い!!」

「ここは病院。叫ぶなんてありえる?」

「う・・・。・・・そう言えばいい損なったけどおめでとう。」

「・・・ありがと。自分でも忘れかけていたわ。」

「けどあんた学校どうするの。

リイラちゃんから聞いたけど退学になっちゃったんでしょ?」

「・・・仕事が早いわね。親からも勘当されたわ。

どうしようか困っていたけど山TO氏に引っ越すことになったわ。

キリエさんが手配してくれたのよ。

だから来年は山TO氏学園高等部の生徒よ。可愛い後輩を敬いなさい。」

「あんたこそ美しい先輩を敬いなさい。」

視線を交錯させる二人。それを微妙な顔で眺める3人。

「でもナイトメアカードを

2枚も発動させたライラくんが負けるなんてね・・・。」

「相手は本来のナイトメアカードを全て持ってる人だから

2枚だけじゃどうしようもないよ・・・。

それでも負けるとは思っていなかった・・・。」

「・・・まあ今は無事でなによりだけどね。」

全員で眠ったままのライラを見つめた。

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