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パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
1章:交差する拳
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10話「天秤の傀儡(かいらい)」

10:天秤の傀儡かいらい


・夜。

「あら、バイトをするのですか?」

「ええ、部活で使えるカードが少なすぎるので

出来るだけ多くのカードを購入するためにみんなですることになったんです。」

食事時。相変わらず食事は二人だけだ。

「ですが、カードでしたらX是無ハルトでいくらでも費用を払えますのに・・・。」

「X是無ハルトの活動じゃありませんからね。

あ、それともやっぱりバイトとかは駄目でしたか・・・?」

「・・・ユイムにはさせませんでしたが

あなたを縛る必要はないでしょう。

ですがどうして今更部活を?やはりパラレルが好きだからですの?」

「それもありますし・・・。

ユイムさんが原因で廃部寸前になってしまったのですから

僕がこの姿である内に解決しておきたいんです。」

「・・・そうですか。」

「ところで、来月ってタイトル戦ですよね?

どうするんですか?やっぱり僕が出なくちゃいけないんですよね・・・?」

「いえ、別にどうでもいいですわ。」

「へ?」

「確かにこの100年間X是無ハルト以外の者に

タイトルを渡したことは一切ありませんでした。

ですがそんな伝統無理に存続させる必要はありません。

もうお父様もお母様もいないのですから口うるさく言うものはいませんわ。」

「・・・でも、何だかもったいないような気がします。」

「・・・なら出てみます?」

「けど、MM先生が言うには地区大会とかぶってる可能性があるそうなんです。」

「それはまあ・・・そうですわね。

タイトルは大抵午後7時スタート。

地区大会程度なら午後6時には終わるでしょうが

スケジュールが厳しいことになりますわね。

あなたと言えど地区大会を全くの無消耗で

勝ち上がれる訳でもないでしょうし。

それにタイトル挑戦者は一筋縄では行かない実力者であるでしょうし。」

「・・・あの、キリエさん。義手はまだ届かないんですか?」

「・・・そうですわね。義手が届いてこの一ヶ月で

調子を取り戻せたのなら久々に私がタイトルに挑んでみますか。」

「おお・・・・。」

それから食事を済ませて入浴。

昨日気不味い雰囲気になってしまったからか今日はさすがに一緒じゃない。

鏡を見る。

「・・・・・・・・。」

いつ見ても慣れることのないこの姿。

しかし確実にこの姿でいられる時間は少なくなってきている。

その時、自分がどういう状況になっているか。

「・・・想像もつかないや。」

考えるのをやめて体を洗い始めた。


・翌日。

放課後に早速5人でバイトをすることになった。

運良くパラレルカード取扱店でバイトを募集していて

パラレル経験者ということもあって一発合格した。

最初はユイム(ライラ)の顔を見て店員はぎょっとしていたが

二日前の大会を見ていた他の店員や店長が

今のユイムなら雇っても大丈夫だと説明して

その好で全員が採用されたのだ。

「ホントにお店で売ってるんだね。」

「けど、結構高い・・・。」

「これでも長く使えて半年だからね・・・。」

「ブルジョアな代物ですよね。」

「う、うん、そうだよね・・・。」

5人が暇を見つけては使えそうなカードを探している。

念のため言っておくが盗むためではなくいずれ購入するためである。

「・・・ん、あれは・・・」

その中ライラが1枚のカードを見つけた。

それはオープンのカード。

オープンの効果は言ってみればあらゆる施錠に対応したマスターキーである。

物理的な錠前にはもちろんデータセキュリティにすら対応している。

無論犯罪防止のためにこのカードを使用する際には

事前にパラレル協会に申請をする必要がある。

しかし予め使用が許可されている代物も存在する。

「・・・・あのカードがあれば・・・・」

そう、まだユイムのP3は開錠されていない。

一応部屋に放置されているしライラにはライラ用のP3を用意された。

今まではプライベートだからとユイムのP3のロックを

無理に解除したりはしなかったが何かしらの情報があるかもしれない。

そしてその情報はもしかしたらキリエには見せられないものかも知れない。

値段を見る。

1枚5万8000円。

一応キリエからは学食代込で一ヶ月分のお小遣いとして10万をもらっているが

半分以上をここで費やしていいものか。

やはりバイトで稼いで個人的に購入するしかないだろう。

幸い在庫はかなりあるようだし。

「・・・よし、頑張るぞ。」

シュトラとペアを組んで二人で店のレジ番をやり。

2時間行うと他3人がやっていた演習室の見回りと交代する。

演習室では多くの客がカードの実演をしていたり

必死に練習をしている学生もいた。

「結構多いんだね。」

「まあ、カードを使える場所って限られてるから。」

例え自宅の自室であってもそこが認可されていない場所であるならば

カードの使用は許可されておらずそれぞれのカードに付属されている

魔力発信装置によってそれぞれの地域に設置された

パラレル協会に報告が行き、それが認可外エリアだった場合

カードを通してすぐに警告をされてそれでも発動を止めなかった場合は

数分で武装した職員が向かい鎮圧すると言う流れだ。

そして多くの民家は認可外エリアとなっているため

自室で練習ということも出来ない。

しかしX是無ハルト家のような富豪であり

パラレル選手のトップ中のトップ一族の住居ともあれば

敷地内どこでもカードが自由に使用可能だ。

だからライラはこの一週間全くカードの練習に関しては不自由していなかった。

「僕の田舎じゃちょっと大きな市民体育館とかじゃないと使えなかったから・・・。」

「それでよくあんな強くなれたね。」

「僕、他に何もなかったから・・・。」

家族連れでまるでキャッチボールでもするように微笑ましく

カードを使う客を見てライラがつぶやく。

「・・・ねえもっとあなたのことを聞かせてほしいな。

この喧騒じゃ他の人には聞こえないでしょ。」

「・・・そんな面白いものじゃないよ。」

二人ゆっくり歩きながらライラは過去の経緯を話す。

前にキリエにも話した程度の事だが。

「・・・そっか。」

「はい。なので僕にはパラレルとユイムさんしか残ってないんです。」

「・・・それは違うよ。」

「え?」

「今はキリエさんがいるし私達もいる。

目的はどうあれ一緒にバイトして部活して、そんな毎日。

楽しまないと損だよ。

それに少なくとも私と二人きりの時は

ライラくんとしての素を出していいんだからさ。」

「・・・イグレットワールドさん・・・」

「シュトラでいいよ。ユイムさんが付けてくれた名前なんだ。」

「・・・やっぱりユイムさんはいい人でしたか?」

「・・・そうだよ。私が知っている中で誰よりもパラレルが好きで

楽しんでいた。それにキリエさんも知らないことだと思うけれど

ユイムさんのキレるって言うのは魔力が暴走するってこと。

何かそういう体質だったみたい。

だからライラくんの言う船で起きた事故っていうのも多分・・・」

「・・・もしかしてそれが証明されたらユイムさんは・・・」

「わ、分からないよ!?私医者じゃないし、法律も詳しくないし!

けど、そういう可能性はあるんだから。」

「・・・はい、ありがとうございます。」

それからバイトを終えると皆で帰路に着いた。


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