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一話


 若干雲行きが怪しい天候、見通しのいい浅い森の獣道。俺は近くの街へと行くべく悠々と歩いていた。

 何故こんな道を進むことになったのか。

 ほんの一時間程前だった、森の開けた一画で俺が目を覚ましたのは。

 最後の記憶だとしっかりと家の玄関から出ているのだが、そこから先が思い出せなかった。

 当然俺は混乱した。

 その最中にスッと何かが頭に流れ込んで来たかと思うと、同時に軽い頭痛と違和感を覚えた。そして直ぐに収まり、徐々に頭も冷めていった。

 この場所から暫く森を進めば村に行ける道に出られるという知識がいつの間にか身に付いていた。同時に、ここが地球ではないことを知った。何故か驚きはなかった。

 原因はあのスッ……が関係しているんだろうな……。

 それだけではなく、頭の中に自分の簡単なステータスのようなものが浮かび上がって、俺は少しだけ興奮した。

 浮かんだものはこんな感じだった。


 ------

 フジ/リュウヤ

 ・17

 ・肉体Lv.0/2

 ・加護/自然治癒

 ------


 名前と、おそらく年齢の二つと、肉体レベルという表記。本当に簡単な表記だ。

 名前と年齢は分かるが、肉体レベルという表記の意味がイマイチ分からず暫く考え込んでいたら、数字を変化させることが出来た。

 なのでMAXである0/2から2/2にしておいた。これが何を意味しているのか、その時はあまり理解していなかった。

 加護というのは、信仰とかそっち系の加護だろうか。俺は特に神様を信仰していたりはしないんだけどな。

 とりあえず俺は、近くに村が存在しているという情報の元に今の獣道へと出た。

 村へ続く道を目指してこうして歩いている。


「安全ということだけは分かるが、分かるんだが……いや安全なのか?」

「ギャアギャア!」

「いい加減槍でぶっ刺してくるのやめろよ。効かないから」

「ギャアアア!」

「これがモンスター……知能は無いのか?」


 さっきからギャアギャア鳴きながら手作り感ある、木を削って作った槍を一匹のゴブリンが刺してくる。

 不思議と痛みは無く、軽く棒で突かれているような感覚だ。制服が汚れる。

 最初、いきなり茂みからこいつが現れた時に驚いて逃げようとするも、足元まで伸びていた木の幹に足を取られバランスを崩してしまって転けるという誰も望んでいないドジっ子っぷりを発揮して槍で刺された(実際は突つかれた程度)。

 さすがにそこまでいくと、多少なりとも肉体レベルというのが関係しているのは火を見るよりも明らかだった。一先ずは数値を上げといて良かったと心底安心しつつ、これが防御チートというやつかとくだらん事を考えながら、付きまとうゴブリンについては今のところ問題無いと判断して、無視して俺は進んだ。


「ギャアギャア!」


 つーかしつこいなこいつ。

 諦めろよ。何で諦めないの? そんなに殺したいのか? 経験値貰えたりとかしないからな。アイテムドロップもしないぞ。多分。

 モンスターを倒せばするのだろうか? どうせダメージが無いのなら槍奪って攻撃でもしてみ――、


「ギャアギャアギャア!!」

「お゛ゥ……!?」


 不意に、股間が鈍い感覚に襲われた。痛みは無い。しかし、俺は男だ。大きな痛みは無くとも、そこを槍で突かれれば反射的に声が漏れ、押さえてしまう。

 そして俺の反応を良しと思ったのかゴブリンは重点的に狙ってくる。

 それを俺は必死に庇う。

 ダメージは無いが、男としての本能か、守ってしまう。

 許すまじ……分からないが多分こいつはオスだろう。きっとそうだ。

 同じオスならばやって良いこと悪いことぐらいのお゛ゥッ――。


「……このッ!」

「ギ――――」


 ゴパァン!!


 ゴブリンの短い悲鳴が、どこか心地良さを覚える音に掻き消された。

 ビシャッと、顔に生臭い液体が掛かった。

 ゴブリンの頭が無くなり、どさりと体だけが地面に倒れた。


「うわぁ!? な、なッ……!?」


 ゴブリンに攻撃をしたのは確かに俺だ。

 ……それも素手で。

 俺の中では殴り飛ばす程度のものだった。

 けれど結果、ゴブリンの頭を吹き飛ばし、殺していた。

 なのに、驚愕こそしたが、罪悪感や嫌悪感は湧かなかった。

 これも何かの影響なのか、普段の俺なら確実に卒倒していたはずだ。

 自然とそんな感情が湧かなかったことに、感謝していた。


「でも、驚いたな……」


 まるで他人事のように独り言ち、余韻に浸りながら、ぼーっとその場に立ち尽くしていると、


「キシャァァア!!!」

「え?」


 背後からの鳴き声と同時に聞こえる嫌な羽音に、一瞬で肝が冷めていくの分かった。

 ギギギ……と擬音が付きそうな動きで後ろを見ると、蜂をそのまま大きくした姿の、体長5〜6メートルはあろうかというモンスターが、息が吹きかかるくらいの距離から、俺を敵意たっぷりの視線で見下ろしていた。

 反射的に俺はぶん殴った。

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