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中編

「ハァァー。」



 俺は、翌朝、教室の席に付くと、盛大な溜息を漏らす。



「やり過ぎた……」



 昨日は、あの後、徹底的な教育を施し。彼女は、一人前の汚嬢様へと変貌していた。そして、昼休みが終わる前に、気絶してしまった軟弱な汚嬢に水をぶっ掛け、保健室に捨ててきた。



 なんか、保健の先生は、


「何で水浸しに? それに、変な匂いがしません?」


とか言うんで。


「気分が悪くなって吐いた後、気絶して顔面ゲ□ダイブをしたから水で洗った。」


と言っておいた。



 ちなみに、その後俺は、汚嬢の姿を見ていない。昨日は、教室へは寄らずに、寮へ戻ったらしい。



「ああ、やっぱり考えていたイジメプランその1、”使用済み生理用ナプキンを口に突っ込んで、連続腹パンチの刑”の方がよかったか。いや、もっとソフトにプラン2、”全身に樹液を塗り込んで、大量のパープルワームを……”。いやいや、あの時は、樹液もワームも手配できなかったし。つい頭に血が上ってしまって……ハァー……」



 そんな時だ。教室の扉が開き、その奥には汚嬢。


 下を向きながら、こちらへと歩いてくる汚嬢。


 俺の額を伝う汗。


 やばい、やばい、やばい、どうする? 逃げるか? 殴るか?


 汚嬢は、俺の目の前まで来ると、勢いよく頭を下げた。



「こ、侯爵令嬢で在らせられる、イザベル様に対する今までの無礼の数々、平にご容赦願います。こ、これより心を入れ替え、王国のため、貴方様のために尽くす所存にございます。」



 そう言って、汚嬢は、プルプルと震えながら、こちらをチラリと窺う。


 ニヤリ



「まあ、まあまあまあっ! ありがとう、本当に嬉しいですわ。私、あなたが王国に仕える貴族として、相応しい心構えを持つように、静かに見守っていたんですのよ。そう、とっても静かにね。」



 そう言いながら俺は、無表情になり、右手を胸の高さに持ち上げワキワキ(・・・・)させる。



 汚嬢の青い顔は、より青く染まる。



 具体的には、”東京のくすんだ空”から、”富士山の頂上から見上げる空”ぐらいに変化する。



「はっ、はいっ、ありがとうございます。昨日、体調の優れない私を介抱していただいた、イザベル様の優しさに触れ。私は、目が覚めた様でございます。これより粉骨砕身、伯爵家に相応しい人間になれるよう努力いたします。

 私は、イザベル様こそが、王国を担う貴族令嬢の理想であると確信し。貴方様に永遠の忠誠を捧げます。どうか、ご笑納くださいませ。」



 そして、傅く汚嬢様。



 うん、まあ、なんていうか、結果オーライ?












 1カ月が経過した。



 クラスの女子達は私を通し、派閥の垣根を越えて団結し、微妙にギスギスした雰囲気も消え去って。私は、快適な日々を送っていた。



 そして今日も、日課の昼休み校内パトロールに精を出す。しかしながら、未だヒロインの存在を見出すには、至らなかった。



「いったい誰がヒロインなのか。そもそも生徒数自体、それほど多くないから、調査漏れも考えずらいし。こうやって校内をパトロールしても、暫定登場人物に絡むような逢引現場は、未だ押さえられないし。」



 そんな時だ。使われていない教室の並びに差し掛かった時、教室の一つから物音がした。



「これは、いったい誰がナニをしているのかな?」



 俺は、教室の扉を少しだけ開けて、中を窺う。


 そこに居たのは。



「やめてください、先生。こんなこと、僕たちは、先生と生徒、アッ。」



「ふふふ、カワイイ反応だね。こんなことをするのは、初めてかい? 大丈夫、全て私にまかせてごらん。さあ、これも脱ぐんだよ。」



 あれは、騎士団長の息子と、女教師!? おいおいおい、脇役同士でナニやってんだ、こいつら。



「先生、ダメです、こんなこと、とても、いけないことです……」



「おや? それじゃあ君のしていたことは、いいことなのかい? 王子が知ったら、どう思うだろうね。」



「先生。そんな、ずるいです、そんなこと……」



「そうさ、大人は、ずるいのさ。ああ、私の可愛いヴァル。さあ、先生のここを……」



 俺は、そっと扉を閉めた。


 そして俺は、ばれない内に教室のまえから立ち去る。


 俺は、混乱していた。



 脇役同士で何を? いやいや、騎士団長の息子は、妹の言からすれば主要登場人物の一人と考えて間違い無さそうだ。とすれば、あの女教師がヒロイン?



 いや、でも、うんんんんん? いやいやいや、あんなセリフ吐いてヒロインは無いだろ。無いのか? んんん?



 いや、しかし、他にヒロイン候補が居ないのも事実だ。とりあえず、暫定ヒロインとして考えようじゃないか。



 「てゆうか、だとしたらヤバくね? 今日の感じだと、もう騎士団長の息子ルート、入っちゃってるんじゃね? 入っちゃってるのか? 確かに、さっきの現場では、入る直前だったけれども。いや、でも、もうほぼ(・・)レイプだったぜ、アレ。ほぼ(・・)っていうか、もう、ガチでレイプだったぜ、アレ。

 えっ? あんなのがヒロインで、どうやったら感動的なラストシーンになるというんだ、妹よ?」



 ワカラナイ。オレ、オンナゴコロ、ワカラナイヨ。

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