まだぼんやりと…
まだぼんやりと陰った空から、勢いを失った雪が降っている。それらは木漏れ日の隙間や程よく舗装された小道に降り積もり、村もすっかり覆われていた。
村にたどり着いてから早々に、彼はどうやら目的の一つを達成したようだった。チラチラと住民から視線をもらいながら、彼は堂々とあちこちを散策した。
「湿気た村だな」ぐるりと周囲に目を向け、誰も居ないのを確認してから彼は呟いた。
彼は、村の出入り口のそばでたむろしていた老夫婦にお辞儀をして、村から去っていく。行商人のフリをするために、村はずれで荷馬車を置いているのだ。丁度そこから、もう一人の男がこちらに手を降っている。
「村の奥にあるそうだよ」荷馬車に戻った彼は、手を降っていた男に言った。
荷台で胡座をかいていた男は、彼を見て頷いた。「ああ、じゃあ、スカップの言うとおりだったようだね」男は大きな外套ですっぽりと体を覆って、ため息を付いた。猫背になった時、ギシ、と音がする。「ああも錯乱されちゃ、本当かどうかもわからないし」
「ふん。脱がないのか、それ」
「え?ああ、一応公務ですから。いや、公式に、という言葉が通用しないですけれど」困ったように笑って、男は答えた。外套の下には、どうやら鎧を着ているらしい。「それじゃあ、予定通りの手はずにしましょうか」
「野盗の真似事とは、傭兵冥利につきるな」
「まだ使える貨幣で給料を払うだけ、マシだと思ってください。それと、厳しいようなら、ちゃんと逃げてくださいね」
「おいおい、尻尾巻けっていうのか」
「何分人数が減る一方なので、立て直せるものならそうしたいんですよ。…どのみち今夜以降も、あなた方傭兵は傭兵らしく仕事があるでしょう?」
「まあな。しかし、できれば二度と御免被りたい仕事だな」
「二度目は無いので、大丈夫ですよ」
「そうか。それなら、今回限りとしよう。それじゃ、予定通りの時間に」
「ええ、朝焼けに、互いに良い報告が聞けることを願って」
ゴツ、と荒っぽく拳を合わせ、彼は荷馬車を去った。
村を迂回し、雪に人影が見えなくなるのをぼんやりと眺めながら、男は小さくため息を付いた。ギギ、と鎧が軋んで、すっぽりと覆った外套の下がモソモソ動く。
隙間から顔を出した猫が、空とちらりと見上げて大きなあくびをした。男は、おはようと声をかけて、猫の頭を撫でる。
「人懐こいやつだな」と、男は喉の下を掻いてやった。ゴロゴロと喉を鳴らしながら、猫はまた胡座の間へ潜り込む。こうしてまた、しばらく男は動けなくなった。




