「ああ、腰にくる…
「ああ、腰にくる。やれやれだな」とペトラは背中をさすりながら言った。「ポッキリ折れてしまうやもしれんな!」
「一人じゃ捌ききれないから連れてきたのよ」
雪上である事を忘れさせるような動きで、ヤエは剣先を躱す。
クルリと回って雪を一掴みし、傭兵の顔にそれは吸い込まれるように命中した。彼はさらに腕を蹴り上げてられて剣をこぼし、それは肩に当たって白い雪を紅色にした。
うずくまるようにしゃがみ込むその背中を思い切り踏みつけて、ヤエは次の傭兵と対峙する。踏みつけられた方からずいぶん嫌な音がしたから、きっと肩が外れているだろう。
ヤエほど身軽でないペトラは身の丈よりも長い棒一本で二人を相手にしていたが、とうとう飽きたようで、一人は頬を叩かれて突っ伏した。もう一人は太ももを突かれて崩れ落ち、ペトラは彼の右腕を踏み折った。
叫び声が空を切って、木々の雪が幾つか落ちた。それでもジリジリと傭兵が残っている。
「スカップとやらを拷問して、聞き出せばよかったものを!」ペトラは叫んだ。
「あら、こうなる事自体は知っていたのよ、私」
「ワシは聞いとらん!何と出来の悪い愛弟子か!」
「確認も取れていることをわざわざ聞き直す必要はないわ。スカップさんが嘘つきがどうかが知りたかったのよ」
「ほお、アレは嘘つきだったのか?」
「ええ、火あぶりになりましたから」
「しかし逃げられたぞ」
「だからこうして二人で奇襲しているのよ。山の裏手でいくら叫ぼうとも、村にも魔女の家にも聞こえないでしょう?」
「違いない」
「ごちゃごちゃと余裕だな!」
傭兵の一人が突っ込んできた。ペトラが彼の足元に持っていた棒を投げ込み、足に縺れて転倒した。起き上がろうとしたがヤエに右腕を拗じられ、とうとうそれはひどい音を立てた。
「あまり楽しくは無いわね」と、つぶやくようにヤエは言った。
「お前さんを弟子に取ったのは間違いだったやもしれん」への字に口を曲げて、ペトラもつぶやく。
お昼をすぎる頃にはようやく、傭兵たちの傷の手当は終わった。簡易なものだったが、この寒さで放っておくのも可哀想だとヤエが言い出して、手当することになった。
魔女に触れると呪われるだの悪魔憑きだのと喚いていたが、テキパキと手当をしているうちに皆おとなしくなった。最後の一人に当て木をして、ヤエは伸びをした。
「さ、帰りましょうか。村に来たければ来ても良いけれど、その時は腕や足で済むかどうか…私の愛弟子はもっと、容赦がないから…」
ヤエが真剣に悩むふりをしていると、彼らは散り散りに逃げていった。それを横目に見送って、最後の一人まで見えなくなった時、ヤエはようやく切り株に腰を下ろして、一息ついた。
「さて、弟子たちはうまくやってるかしら」




