手慣れた様子で…
手慣れた様子で板を打ち付けて、ぺトラは屋根裏部屋に通じる窓を塞いだ。
「そろそろ木戸か何かを取り付けてやらんとな。さて、これで最後だから、余った材料を持っていくといい。魔女の家は確か、倉庫に天窓があったろう。こいつを使って塞いでくるといい。今日は暖をとって、雪に備えなければならんからな」
両脇に板切れを持ち、ぺトラから借りた道具袋を背負って、シャーノは魔女の家へ急いだ。小粒の雪が、昼の陽に照らされて、いくつも道に溶けて消えていた。ぺトラの家に遊びに来ていた猫も、足元で一緒に帰ってくる。
シャーノは、猫たちを蹴とばさないようにふらつきながら歩いたせいか、少し疲れてしまった。魔女の家の裏庭に直接回って、板切れをひとまず、雪に当たらないように軒下へと置いた。梯子がそばに置いてあるのを確認して、一旦家の中に入る。暖炉の前では、火が付くのを待つように、猫たちが集まって丸まっていた。
その期待に応えて、シャーノは暖炉に火を入れた。雪はまだまだ小粒だったが、空気は家の中まで這うような寒さだった。まだ昼前なので、もう少し暖かくなるのを待つかどうかを少し悩んだ。
ぺトラは倉庫と言っていたが、調合室のことを言っていたのだろう。天窓は調合室にしかなく、大量に置かれた棚と何に使うかもわからない道具が満遍なく配置されているあの部屋は、確かに倉庫に見えなくもない。基本的にヤエが入り浸って、昼寝をしているか、何かを作っている部屋だった。
シャーノは天窓を塞ぐ前に、調合室を見に行った。ちょうど猫が通れるほどの幅だけが開いていて、天窓からやわらかい光があふれていた。壁際にある揺り椅子とテーブルにそれは当たって、部屋は外よりもずっと温かい。
この時間は普段、ヤエが眠りこけている頃だった。シャーノは揺り椅子にかかっている毛布を手に取り、試しに座ってみた。日差しを受け、座るだけでも心地よい。机と椅子の周りは板張りで、木の柔らかい匂いが漂っていた。シャーノは、ヤエがこの半地下で石張りの部屋で昼寝をしていると聞いたときは驚いていた。
しかし結局、シャーノはそのまま抗えずに、すっかり日差しが揺り椅子から離れた頃になるまで、ぐっすりと眠ってしまった。いつの間にか、膝の上に小柄な猫が二匹、シャーノの小さい膝を取り合うようにして、丸まって占領していた。
シャーノは天窓を塞ぐことを思い出して、小走りに部屋を出た。
しかし、微睡に呑まれる少し前、不可思議な事に気付いたのだが、それを思い出すのは、ずっと後になってからだった。




