シャーノとぺトラは、…
シャーノとぺトラは、大急ぎで屋根の修理をしていた。
寒いながらも陽気な天気が続いていたが、森の方から雲が這い出て、小粒の雪がチラついてきた。それを見つけたぺトラは思い出したように「ああ、うっかりしていた」と呟いて、シャーノの修業はいったん中止になった。
「去年は裏側の小屋が雪で潰されてな。同じくらいに建てた家だから、適当に補強してやらんといかん」
納屋に入るなり金槌と鋸を手渡され、シャーノはきょとんとしていた。
「師匠もルシェも言ってましたけど、こっちはそんなに雪が降るんですか?」
「降るぞ。そりゃあもう、飽きるほどには降る。そうか、シャーノは雪解けの後に来たんだったな」
「はい」
「ふん。寒いのは大丈夫か?買い付けで、遠くの地方へは行ったことがあるだろう」
「ノート・ルージングと、シトスへ行きました。今のところ、海の上が一番寒かったです」
「おお、そうか。一番寒いところと暑いところへ行ったわけだな。ルージングでは雪は降らんが、身の竦む寒さだったろう。あれよりはマシだが、こっちは雪のせいで身動きが取れん。…ああ、そこの大きなスコップも持ってきてくれ。そいつだ。そいつは玄関わきに置いてくれ」
言われた通り、シャーノはスコップを置いてきて、ぺトラに付いて玄関から外へ出た。這いつくばった雲が、朝とは違った寒さを運んできていた。
ぺトラとシャーノは裏庭へ回って、あちこちに転がった石ころを避けながら、崩れた小屋へ向かった。小屋の前には、また使えそうな材料がまとめてあった。今日もシャーノと一緒に来た猫が、その材料で爪を研いでいる。
「先代の魔女とは違って、あちこち旅ばかりしているようだな。三代目も二代目も、一か所に留まって、薬売りをしていたものだ。…ワシは商い事に疎いんだが、儲かるのか」特に猫を気にせずに、ぺトラは材料を引っ張り出しながら尋ねた。
「どうなんでしょう…買いに来る人は滅多に来ないですし、村の検診の方が儲かる量は多いと思いますよ」
「これを、これくらいに切ってくれ。…まあ、商い事が主ではないしな。しかし、シトスに何を買い付けに行くんだ?」
「ええと…確か、薬に使う材料だったかな…。あの時は、盗賊に追い掛け回されて、逃げ回るのが大変でした。師匠の白髪を隠さなきゃならないらしくて」
「ハ、ハ。とんだ長旅だったな。厄介事にでも巻き込まれたか。…ああ、あと3つ頼む」
「はい。奪えて売れるものなら何でもいいみたいでしたね。白髪は珍しいとか何とか」




