「あなた方の任務は…
「あなた方の任務はデイ・ノート村に居る魔女の殺害」魔女は少女を撫でるのをやめて、ツィーロを見た。「当初の予定ではご友人のスカップさんが私を秘密裏に殺し、後日すぐにあなたと合流して結果を報告する。期日になっても帰ってこなければ、様子見にあなたがここに来て事の顛末を確認し、隙あらば魔女を殺す。しかしスカップさんが出発した後、あなたは重大な報告を聞いた。」
「ええ、そうです。魔女の容姿が現在の魔女とは異なっている、との報告を受けました」
「焦げ茶の長い髪。赤みがかった深い茶色の瞳。女の中では背丈は高めで、齢20代前半。体つきは豊満ではなく、怪しげな丸メガネを掛けている。」魔女は毛先を指で弄びながら言った。「これが最初に聞いていた魔女の容姿」
「彼は既に出発していたのです。急いで追いかければそれを伝えられると踏んで、私は早馬を借りて後を追ったのですが、悪天候に見舞われてとうとう間に合わなかった」
「ええ、そしてスカップさんは予定通り魔女と思わしき人物を発見し、かなり迷って襲撃を試みた。」両隣の弟子を抱き寄せて、魔女は言った。「若返りの魔法でもあると思ったのでしょうけれど、そんなもの無いわ。ルシェを狙って、シャーノが追い返した。」
彼は初めて聞く弟子二人の名前を覚え、先ほどの魔女の言葉に驚いた。「彼が?追い返した?」魔女の左隣に座っているこの若い少年シャーノが―それも少女と同じく10代前半にしか見えない―大人の諜報員を追い返したというのだ。「どうやって?」
「殴ったら、気絶した」と、シャーノは言った。「僕もびっくりです」
「調合は大の苦手で、どうしようか悩んでいたんだけど、何とかなりそうね」魔女はシャーノを撫で回しながら笑う。
ツィーロは目を丸くしながら、3人を順番に眺めた。確かに、怪しげな丸メガネと20代前半という情報が欠落していれば、少女のルシェを狙ってしまうのも理解できた。
「私の知っている全てで、もし私に魔法をかけるなら、夜明け頃でしょうね」魔女は撫でるのをやめて言った。「シャーノは彼の寝床を準備してあげて。ルシェは夕飯の片付けと、お茶の用意を。ああ、そうだ、お茶菓子が戸棚にあったわね…。さて、ツィーロさん。お疲れのところ申し訳ないけれど、私の名前を知りたいかしら?」
「ええ、ぜひとも」ツィーロは頷いた。
「では、お願いごとを2つ聞いてもらいます。」魔女はニコリと微笑んだ。
「なんなりと」負けじとツィーロも微笑む。
「夜のお茶会に参加すること。これは日が昇るまで続くから、ちょっとしんどいかもしれないけれど」
「大丈夫です。実にならない作戦会議より、ずっと良い」
「もう一つ。夜明けにここを訪れる人がいる。大勢でね」魔女は困った顔でため息をついた。「この予想は、外れてくれれば嬉しいんだけど」
「それで、自分は何をすれば?」ツィーロは聞いた。
その時、1匹の猫が通路からそのフワフワとした毛並みと体格に似合わない足早さで魔女の膝に飛び乗り、一声鳴いた。魔女は猫をモフり倒して骨抜きにした後、一息ついてこう言った。
「まずは長いお茶会から、ね」