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*約束は全て風化しかねない*
「もちろんだとも」彼は自信ありげに言った。「もちろんだとも。長年この場所で過ごしてきて、見逃す理由がないね。先代がずっと伝えてきたこともあるけれど」
「彼らに、教えてあげなくていいのか?」私は尋ねた。
「それはね、違うと思う。確かに選択肢には含まれるけれど、名も無きモノに、一体何を教えてあげるって言うんだい?」そう言って、彼はため息をついた。「ただ、悩みが無くなったわけではないよ。それに我々が、あれは危険だ、もうすぐ大変なことになるなんて言ったところで、可愛く見えるだけだもの」
彼につられて、私もため息を付いた。確かに、その事実は変わらない。「せめて、約束をした相手が居てくれたらね」
そんな願いをポツリとこぼした時、彼は瞬きを3回ほどして、首を傾げてこういった。「そうか、君は若いから知らないんだ。我々が契約した2代目魔女なら、もうずっと前から村で暮らしているよ」




