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デイ・ノートの魔女  作者: 志茂川こるこる
3章:石ころたちの春
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翌日は朝から…

 翌日は朝から良く晴れた。珍しくシャーノはルシェの後に起きてきて、今日ロナイ城へ出発するヤエとルシェの旅支度を手伝った。途中でヤエがフラフラと2階から降りてきて、最後の一匹が暖炉の円弧に加わった。フサフサした彼が昨晩の抱き枕らしい。


 ヤエも円弧の真ん中に陣取って暖を取った。シャーノもルシェも、いつも通り挨拶をし、濡れタオルを渡して、温かいお茶と交換した。


「少し急がないといけないかな」お茶を飲み終えて、ヤエは手紙に目を通しながら言った。「ルシェは去年経験しているけれど、そろそろまた雪が降るから」


「また降るんですか?」シャーノは尋ねた。


「今まで降ったよりも、一番多く降るの。2.3日は雪まみれになるから…ロナイ城へ行って帰って、うん、なんとか間に合うかな」手紙を折り畳みながら、ヤエは言った。


「足首まで、雪に埋まっちゃうんだよ」ルシェは、一番近くの猫を撫でながら言った。猫たちは丸ごと埋まるのではないかと、シャーノは思った。


「弟子が優秀だと、ついつい楽をしてしまうね」まとめられた荷物を眺めて、言った。


「準備が出来たら、すぐ行きます?」ルシェは聞いた。


「そうね」ヤエは毛先を指でくるくると回した。「うん、そうしようかな。甘草と、傷用の軟膏と…」


 そのまま必要なものを呟きながら、ヤエは廊下へと歩いて行った。シャーノとルシェも、それについて行った。シャーノがふと振り向くと、温まり終わったのか、猫達が次々と立ち上がって、それぞれ行きたい場所へと散っていった。



 どんなときに入っても、調合室は独特の匂いに包まれていた。その理由が、半地下にあることや、扱う香草のせいなのかはわからないが、薄暗さや積み上げられた棚がそれを演出している。ぼんやりとした天窓は、そこにあるよりも遠くに感じた。


 たいていヤエはこの部屋で揺り椅子にもたれて眠りこけているか、隣の実験室で何事かをしている。そのため、一人きりで入ることはそれほど多くはなかった。頼まれごとをした時や、簡単な用事の時に、指示されて入る程度である。そのため、シャーノもルシェも、調合室に入るたび、少し緊張していた。


 よっ、と呟いて、ヤエはお気に入りの揺り椅子に座った。毛足の長い猫が、閉まりかけたドアの隙間から入ってきて、そのままヤエの膝に飛び乗った。


「そっちから2列目、7の2、あと、15の9、うん、35の1も」と、棚の上下左右順番に割り振られた番号で、ヤエは弟子二人に取り出すものを指示していく。シャーノもルシェも、よく使う棚の箱以外は、中身を覚えきれていない。

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