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デイ・ノートの魔女  作者: 志茂川こるこる
3章:石ころたちの春
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手際よくヤエを手伝って…

 手際よくヤエを手伝って、ルシェはシャーノからヤカンを受け取り、軟膏と混ぜて包帯を浸した。傷の面積が広い時は大抵この処置を行っていたので、ルシェもシャーノも慣れていた。ただ、軟膏の臭いが酷く、ヤエは眉間にしわを寄せて困った顔をしているし、ペトラはそれが目にまで来るのか、口をすぼめてギュッと目をつぶっていた。なかなかおもしろい光景だった。


「ひどい臭いだ」とうとうペトラが言ったが、そのままむせてしまった。ルシェは苦笑いをしている。「また混ぜモノをしたのか?」


「前回も臭いが酷いと言われたから、モノは試しで入れてみたんだけれど、ダメそうね」湿った包帯を傷に巻きつけながら、ヤエも苦笑いをした。


「嬢ちゃん、あんまり、お師匠さんに似ないほうがいいぞ」ペトラはワシワシとルシェの頭を撫でた。「ワシの愛弟子は、昔からイタズラ娘だからな?」そう言って、ペトラはニヤリと笑った。


「私の可愛い弟子に、あんまり変なこと吹きこまないでくださいね」


「お前さん次第だな」ハ、ハ、と笑って、ペトラは楽しそうに言った。



「私とルシェは、明日、ロナイ城に行って実験の報告を聞くから、数日間、シャーノをお願いします」


 ペトラの診察と処置を終えたヤエは、ペトラにそう告げて、彼はそれを承知し、「いたずら小僧にならんように、ちゃんと見ておいてやる」と言って笑った。そのままペトラとシャーノは裏庭に戻って、小石を投げ合う修行を再開した。


「あ、そうだ」ヤエは突然つぶやいて振り返り、ペトラの家の玄関を指差した。「ルシェ、あの桶をそのまま持ってきて」


 ルシェはコクリと頷いて、小走りで玄関口まで戻り、桶を持って帰ってきた。ヤエは桶を受け取ってしゃがみ込み、それを地面に置いて、小道にサラサラと優しく流した。


 ヤエは満足気に頷いてニコリと笑った。小道に水が染み込んで、車輪の跡、馬の蹄、野良犬の足跡が交じり合っていた。ルシェは、それらの一番上に、強く蹴られた足跡がしっかりと浮き出ているのを観察することができた。


「うん、しっかりと慌てて逃げ帰ってもらえたみたいね」


「…そんなに、怖がらせちゃったんですか?」ルシェは心配そうに聞いた。


「そんなことないわ」ヤエは腕組みをして、胸を張った。「恐れるのは相手の都合だもの」

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