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デイ・ノートの魔女  作者: 志茂川こるこる
2章:呪われた血と
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デイ・ノート村への…

 デイ・ノート村への帰り道は5日かかった。主だった理由は、優秀な御者がヤエだけだったこと、途中雨に見舞われたこと、野草摘みに励みすぎたことだ。


 ただでさえ満載だった荷物は一回り増えたが、魔女の家に運び込んでしまえば、それほどの量にもならない気もした。大木の根本に張り付くように立てられている魔女の家には、付随する倉庫や2階の部屋と、他にも地下室、実験室などなど小部屋や棚がたくさんあった。隠し扉まであったりする。


 ヤエが粉物を瓶詰めしている間に、ルシェとシャーノは次々と荷物を運び込んだ。詰め物をしながらヤエがチラリとこちらを見て、ソレは倉庫、ソレは2階の部屋へと指示していく。ある程度は袋の色形で判別するのだろうけれど、一瞬でそれらを見分けているようだ。



 仮止めしていた大きな馬を引いて、ルシェは倉庫脇へ連れてきた。移動中の2日はルシェが乗っていたので、馬自身もすっかり懐いている。シャーノが村長さんから飼葉を貰ってきて、ちょうど帰ってきた。植木用の柵を囲って、簡易の餌場にする。


「師匠が、しばらく預かるって。先に手紙が届いたみたい」飼葉をほぐしながら、シャーノが言った。


「わ、じゃあ、どうしよっか」ルシェは馬のタテガミをワシワシしている。


「どうするって、何を?」


「名前。この子…っていうには大きいけれど、フランツさんも言わなかったし、馬としか呼んでないし」


「うーん、名前、ありそうだけれど、どうなんだろう。師匠なら知ってるかな」


「聞いてくるね!」


 ルシェ自身もすっかり慣れているようで、手を舐められながら走っていった。シャーノはまだおっかなびっくりである。倉庫の影には猫達が物珍しそうに集まっていた。


 

「猫達が馬を囲んでいた」夕食の席で、ヤエがぽつりと言った。「きっと、この家のしきたりでも教えているのかもね」


「…いじめてないと、いいですね」ルシェが目をパチパチさせた。


「体格差があるし、猫達はあれ以上近寄れないかな」ヤエは微笑む。「ルシェは、動物に好かれやすいんじゃないかな」


「そうなんですか?」


「うん。鳥も寄ってくるし、あるがままという感じかな。シャーノは観察されてから寄ってくる」


「僕、観察されているんですか?」シャーノは驚いた。


「新参の猫が来た時は、じっと物陰から見られているわね」


 食事の時、猫達は主にルシェの周りに集まっている。ヤエは寄らばモフるというスタンスだし、シャーノは乗られれば、と言った形だ。今日は黒ぶち猫がシャーノの膝に乗っている。


「そういえば、名前って、あるんですか?」ルシェは聞いた。昼間、ヤエが忙しそうだったので聞きそびれたらしい。


「馬には無いわ。元々商品として扱おうとしていたみたいだし」


「それじゃ、何かつけてもいいですか?」ルシェは身を乗り出した。


「うーん、いいけれど、長居するかわからないから、もし付けたらフランツさんにも言っておきましょう。…魔女の弟子がつけた名前だから、きっと高く売れるわね」


 そう言って、ヤエはニコリと笑った。

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