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デイ・ノートの魔女  作者: 志茂川こるこる
2章:呪われた血と
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ルシェたち魔女一行が…

 ルシェたち魔女一行が村へ帰る頃には、城下町は大変な騒ぎだった。こちらから仕掛けた陣取りでは無く、本来あるべき宣戦布告がなかったのだという。いち早く情報を掴んでいた魔女…つまりマリ姐さんこと魔女三代目が取り仕切ったおかげで、陣取り自体はあっけない勝利を掴んでいた。4日間で事が済んだのはとても幸運だと、ヤエ師匠がつぶやいたのを聞いた。


 8番通りの荷馬車屋も慌ただしかった。フランツさんが帳簿に走り書きをしていて、帰り道も自分が送ると言っていたが、ヤエ師匠は丁寧に断っていた。「副店長としてやるべきことがたくさんでしょう」と、フランツさんのペンを取って帳簿の間違いに丸をつけていた。送ってもらう代わりに、店で扱う馬の中で1.2を競うしっかりとした馬と、これもまた頑丈な荷車を借してもらった。フランツさんがしきりにお礼を言っていたあたり、帳簿に丸をした部分は、間違えると大変なところだったのかもしれない。



 いつもどおり、日ごと交代で馬を駆ることになった。ただ今回は、馬と荷車をあとで返すという理由で、一緒に誰かを乗せていくことにならなかった。訳を尋ねると、「近い内に、医薬品用の材料が足りないと言ってくるから」と、ヤエ師匠は教えてくれた。


「あなた達がフロリベルの孤児院に居た頃に、魔女の噂を聞いたことがあるでしょう?」


 ルシェは手綱をしっかり握って、後ろを振り返る。


「はい。根も葉もないようなものですし、どこの国にいる誰、といった話でもないですけど」

 

 揺れる馬体の上では会話に参加できないので、ルシェは諦めて前を向いた。馬の耳がしっかりこちらを向いている。


「前に来たお客さんも、恐る恐る聞いてきたわね。…魔女というのは本来蔑称、貶すような意味合いを持つから、私やマリ姐さんもある意味特別ね」


「拍子抜けしてましたね。あの時は確か、ええと、村長さんの奥さんの定期健診でしたっけ」


「そう。談笑してたら急に後ろから来たものだから、投げ飛ばすところでした」


 師匠は今、おそらくニッコリ笑っているだろうとルシェは想像する。ついでに柔和そうな商人さんが投げ飛ばされるところも想像して、師匠なら余裕だろうな、と感じた。


 ルシェもシャーノも、ひと通り説明を受けて空中に放り投げられたことがあったが、何度体験しても理屈でどうこうなるものではないと思った。関心したシャーノがどうやるのか教えてほしいとお願いしていたが、未だにはぐらかされている。



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