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Lv2


ここまでが書き溜めたもの。

次回以降は執筆中。



   



 あの後、俺はキリカにも礼を言い、ギルドを後にした。そして、まずは飯を食い、腹を満たした。次に安い宿を探し、そこにしばらく泊ることにした。


 次の日から、早速俺は依頼をこなすことにした。とにかく、金を少しでも貯めなければいけない。


 しかし――


「すいません、ユリィさん。この依頼を受けるのは無理ですね」

「な、何でですか、ニックさん!」


 ギルドには依頼が張り出すボードがあり、そこから自分の受けたい依頼を受付に持っていくことになっている。だが、俺は難易度が低く、なおかつ、現在の自身のランクであるEランクの依頼を持って行ったにも関わらず、ニックさんに断られた。俺がレベル0だからだろうか。


「本当に申し訳ないんですが、これは依頼主の方から『二人以上連れてこい』と言われているのです」

「つまり、一人では受けられない、ということですか」

「そういうことになりますね」

「てっきり、俺のレベルが低いからかと思いましたよ」

「いえ、ユリィさんの実力は、あのキリカさんのお墨付きですから」

「あのキリカさん、とは?」


 まるで、キリカがとても有名な人みたいな言い方だが。キリカがSランクというなら頷けるが、彼女はAランクのはず。


「実はですね、今Sランクの五枠に空きが二つあるんですよ」

「へー、二つもですか」


 基本的にSランクの五枠というのは、常に埋まってる状態のはず。だが、そこに二つも空きがあるとは、おかしなことである。


「はい、Sランクになるにふさわしいと認められるAランクの方がいないみたいで」

「それはまた、なんというか……」

「そんな中で、キリカさんがSランク候補に挙げられているそうなんです。うちのギルド長推薦で」

「へー、キリカってかなり強いんだな」


 そんな世間話をしていると、ニックさんは他の受付の人から手伝いを求められた。


「まぁ、あくまで噂ですので、今のことは内密にお願いしますね」

「了解です」


 そう言って、俺達はどちらからともなく笑みをこぼしていた。

 ニックさんが仕事に戻ったので、俺も新たに依頼を探さなければならない。数多くの依頼の中から、自身に見合った依頼を探すのも、中々に骨の折れる作業である。

 そして、新たな依頼を探し始めて、数分経った頃だった。俺は後ろから突然声がした。


「おい、女」

「んー、中々いい依頼が無いな……」

「おい、無視するな!」

「うおぅ」


 と、怒号とともに肩を掴まれ、グイッと引っ張られた。そこまでされたら、無視できないじゃないか。

 俺は振り返り、俺を引っ張った奴の顔を見た。短い金髪に釣り目気味、無表情。右耳にだけリング状のピアスがつけられていた。さらに見事に割れた腹筋を惜しげもなく晒すように、上半身裸。その肌は刺青に覆われている。

 うーん、何とも言い難いな、こいつ。


「おい、女。この依頼を受ける気はないか」


 そう言いながら、その男が差し出してきたのは、先ほど俺が受付に持って行った依頼だった。


「あー、それさっき俺が受けようとしたやつだ。あと、俺、男だから」

「おお、ということは受ける気はあるんだな」


 その男は、俺の訂正に対して全く反応を示さず、一歩俺の方に踏み出した。


「いや、さっき一人じゃ無理だって言われたから、他の依頼を探しているところなんだが」

「よし、じゃあ俺と組め、女」

「だから、俺は男だって」


 しかし、ここで新しい依頼を見つけ出すのも面倒になってきていたところだし。丁度いいかもしれないな。


「わかった。一緒にその依頼をしようじゃないか」

「よく言った。俺はガイルだ。女、名前は何という」

「ユリィだ。あと俺は男だから」


 こうして俺とガイルは共に依頼をこなすことになった。しかし、この男。いくら男だと訂正しても、俺を女だと信じ込んでいるようだった。





   ✛





 二人で受けることになった依頼はごく簡単なもので、遺跡調査を行う際の護衛だった。調査対象である遺跡には魔物が住み着いていないことは確認済みであるため、魔物に襲われる危険性は非常に少ない。その為、遺跡までの護衛と、念の為に遺跡内での護衛をするのが依頼の主な目的となる。


 しかし、何故二人以上でないとダメなのかと、思っていたが。依頼主と街の広場で顔を合わせた時、その理由が分かった。調査する人が二人いて、二手に分かれて調査するからそれぞれに護衛をつけたかったと、依頼人はそう言って、俺達二人に無理を言って済まないと言ってきた。

 まぁ、何はともあれ遺跡調査に向けて、俺達はガルディを後にした。遺跡はガルディの東に位置し、徒歩で約二時間といったところ。遺跡に到着するまでに、魔物との戦闘が五回ほどあった。が、さすがEランクの依頼といったところか、魔物は弱い奴ばかりで正直つまらなかった。


 その戦闘中に、何度かガイルの戦い方を見ていたが、驚いたことに流れるように二刀を扱い魔物を次々と屠ったのだ。とてもじゃないが、Eランクの仕事を受けるような低レベルの奴には見えなかった。なので、直接ガイルに聞いてみることに。


「なぁ、ガイル」

「なんだ」

「ガイルってレベルいくつ?あとランク」

「レベルは107だ。ランクは先月、Aランクになったばかりだ」


 やっぱりEランクじゃなかったか。


「なんでEランクの依頼を受けてんだ?」

「これから行く遺跡に用があるんだ」

「遺跡に?」

「あぁ、これから行く遺跡には魔人の情報があるからな」


 ガイルが魔人の起源と今回の遺跡調査の目標を、説明してくれた。


 魔人の起源は、邪神が現れる前にまで遡るそうだ。魔族の中では、人間に対する認識は「魔族より劣っている」や「魔族のエサ」というのが当たり前であり、今現在もそうなのだそうだ。しかし、そんな魔族の中から、人間と共存しようとした者が数人居たそうだ。その数人達は魔族から抜け出し、人間の暮らす街に向かったが、人間から拒絶されてしまった。魔族にも戻れず、人間にも拒絶されたため、隠れ里を作り、そこで住み始めたのだそうだ。

 しかし、魔人の存在を確認した者は一切おらず、遺跡が見つかる60年ほど前までは魔人は架空の存在とされていたのだそうだ。遺跡を調査すれば魔人の存在を確認できるかもしれない、という希望を胸に調査を続けているのだそうだ。



「でも、なんで今更魔人の存在を確認したいんだ?一度は拒絶したんだろ」


 俺はガイルの話を聞き終えた時、それが不思議でならなかった。


「今回の依頼主達の遺跡調査団達は、魔人の姿を見てみたいという純粋な好奇心で行動しているんだろう」

「じゃ、ガイルはなんで魔人の情報を知りたいんだ?」


 そう言うと、ガイルは今まで無表情だったが、少しだけ困ったような顔をした。


「……俺にも色々あるんだ」

「ふーん」


 踏み込んで来てほしくない、ということか。

 そんな話をしていると、遺跡に到着した。依頼主達は早速二手に分かれるようなので、俺達も二手に分かれて護衛を始めた。





   ✛





 その後、何事もなく遺跡調査は終了を迎えた。特に新しい発見は無かったようで、そろそろこの遺跡の調査も打ち切りかな、などと調査員達は苦笑していた。

 ガルディまで送り届けた後、俺達はギルドまで達成報告をしに戻った。ちなみに、依頼を達成した際には依頼主の方から達成証なるものをもらい、それをギルドの受付に持って行くことで俺達ギルドランカーは、報酬をもらえるのだ。


「確かに、達成されたようですね。では、こちらが報酬となります」


 俺達はもらった報酬を二等分しようと、ギルド内にあるテーブルに陣取った。

 そして、報酬の分配が終わった時、ガイルが俺に突然質問してきた。


「お前がレベル0って噂は本当なのか?」


 ……あー、やっぱ噂になってんのね。


「あー、そうだよ。本当だよ」

「……そうか、にわかには信じ難いが。近くでお前の戦い方を見ていたが、少なくともレベル100前後だと思ったんだがな」

「買い被りすぎだよ」


 本当は目立たず、一般ピーポーとなるつもりだったんだが。


 そんなことを思っていると、俺達の方に近づいて来る三人組が視界の端に映った。そいつらは俺達の目の前まで来ると、ガイルの方に向いた。どうやら、ガイルに用があったみたいだ。


「おい、ガイル。いい加減俺様のパーティーに入れよ」


 パーティーの勧誘か、懐かしいなー。JOではいつもボッチだったからなー。RPG系のネトゲでボッチだったのは、冗談でもいい思い出とは言えない。


「あんた等もしつこいな。俺はあんた等のパーティーには入らないって言ってるだろう」


 ガイルは全くもって、こいつ等のパーティーに入る気はないみたいだ。まぁ、確かにガイルは強かったから、パーティーにいれば立派なアタッカーになるだろうな。


 RPGに欠かせない要素の一つが「パーティー」という四、五人が基本の集団であるだろう。まぁ、中には俺みたいにソロを貫いている人もいるだろうが、ソロには限界があり危険性も高い。パーティーにはお互いの短所を補いつつ、各人が長所や特技を活かし連携を取れるという利点がある。パーティーの主な構成は「特攻者(ウォーリア)」「守護者(ナイト)」「魔術師(ソーサラー)」「僧侶(プリエステ)」「遊撃者(コマンド)」の五つである。

 さらにこの五つは二分され、特攻者と遊撃者は「アタッカー」、守護者と魔術師、僧侶は「サポーター」と呼ばれる。


 特攻者は読んで字の如く、先陣切って敵を屠る役目を持ち、遊撃者は特攻者と連携を取り敵の守りを崩したり、単騎で敵を攪乱したりするのが主な役目である。どちらとも高い攻撃力と敏捷性を兼ね備えている必要がある。

 守護者はその高い防御力でパーティーメンバーを守ることが役目であり、魔術師は大魔法で一気に敵を消滅させたり、連射の利く魔法を使い敵を屠ったりするのが主な役目である。僧侶はアタッカーの手助けを主な役目としている。サポーター達は精神力が強いことが重要となって来る。


 パーティープレイは、魔術師が大魔法を使うための詠唱する時間を、アタッカー組と守護者が稼ぐのがセオリーとされている。中には特攻者や遊撃者ばかりの超火力パーティーを組んでいるところもあったが。

 目の前のこいつ等は僧侶はいないが基本に忠実なようで、ガイルに固執しているのかな。

 と、俺は傍観していたんだが、突然俺に飛び火してきた。


「なんでだ!?こんなレベル0などという、ゴミとはパーティーを組むのにか!?」


 ゴミとは酷い言われようだ。

 俺がゴミと言われても無反応なことが、癇に障ったのかパーティーリーダーらしき男が俺の胸ぐらを掴んできた。なんで俺の胸ぐら掴むかなぁ……。


「てめぇ澄ました顔してんじゃねぇぞ!女だからって俺様は容赦しねぇぞ!」


 と、その男は右手の拳を振りかざした。しかしまぁ、結局女だと思われてるのねー、俺。それは横に置いておいて、さてどうするか。このまま殴られるのは嫌だし、手で止めておくか?

 などと考えていると、横からその男の右腕を掴んだ奴がいた。ガイルだ。


「その女は関係ないだろう。今すぐその手を離せ」

「関係なくはないだろうが!俺様が狙ってる駒に手を出し……」

「離せ」


 ガイルのその一言には、凄まじい殺気が乗せられていた。その殺気を浴びせられた男は、すぐさま俺の胸ぐらから手を離し、「覚えてろよー!」などというテンプレな捨て台詞を吐いて、ギルドの外へ消えていった。

 しかし、あいつガイルのこと駒呼ばわりするとは、どんだけ上から目線なんだ。俺が少し乱れた衣服を整えていると、ガイルがため息を吐き出した。


「お前も何か言い返したらどうだ?ゴミ呼ばわりされて平気だったのか?」

「ま、言われなれてるからな」


 なんせ地雷ジョブを集めていたせいで、罵倒されることも間々あったからな。


「それを言うなら、ガイルだって駒呼ばわりされてたじゃないか」

「ああ、あれか。前からあいつはそういう事を言う奴だったからな。だから俺はあんな奴とは組みたくないんだ」

「なるほど」


 結局その後、俺達は少しだけ会話を交わして別れることになった。どうやら、ガイルは俺のことを気に入ったようで、去り際に「機会があればまた組もう」なんて言っていた。俺もまた組んでみたいなんて思った。ガイルの俺が女だという思い込みがなければの話だが。




 

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