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初投稿となります。
至らぬ点は多いと思いますが、どうぞよろしくお願いします。
ジュールオンライン、通称JO。
二年ほど前、突如として世界に発表されたVRシステム。それを組み込んだVRMMORPGのことである。従来のゲームと違い、専用のヘッドギアを装着して、ゲームの世界に飛び込むことができる。
俺がようやく現代科学の結晶であるヘッドギアを手に入れた頃、発売されたゲームだった。新しいものに飛びつく癖のある俺は、JOを予約して購入した。そして、夢にまで見たゲームの世界に飛び込んだのだった。
ゲームの世界に飛び込んだ俺は、早速キャラクターメイキングをしようとした。が、JOはキャラクターメイキングというものはなかった。なんでも、現実の自分をそのままキャラクターにするのだそうで。
それを知った俺は少し肩を落とした。
俺は4人兄弟の末っ子なのだが、俺の母親が「私は女の子を育てたいの!!」なんて言って、女性よりな顔付きで産まれてしまった俺は、小さい頃は家の中で女装をさせられていた。しかし、さすがに小学生の高学年になる頃には、母親も女装を止めさせてくれたが、俺の肩位まである髪だけは切らないでくれと、頼まれたので切れなかった。大学生になって一人暮らしを始めた今も、母親が切らしてくれない。正直女性に間違えられるのは嫌だが、切ろうとすると母親が子供みたく泣き喚くのだ。あれがなければ、素晴らしい母親であると胸を張って言える。
なので、俺としてはゲームの中でくらいは髪を短くしてみようと思っていたのだが、キャラクターメイキングが出来ない以上、その思惑は消えてしまったのだ。
こうして、俺はすこし落ち込んだ状態でJOの世界に降り立った。その瞬間、あまりのリアルさに息を飲んだ。見る物すべてが現実とまったく変わらず、ゲームとは思えなかった。キャラクターメイキングが出来なかったことなんて、もうどうでもよくなっていた。
その感動に水を差すように機械音が聞こえた。軽いチュートリアルが始まり、ジョブ設定を求めてきた。JOのシステムの特徴は数多くのジョブの中から、メインジョブ1つ、サブジョブ3つを選ぶことができ、スキルにかかる補正がホーミング機能ぐらいで、動作補正などは一切ない事だ。つまり、一つの攻撃スキルを取ってみても、発動時の態勢や軌道が人によって異なるのだ。よって、自分だけの戦い方が出来ることがJOの魅力であるのだ。
俺は初期ジョブの中からメインジョブを盗賊、サブジョブを格闘家、魔術師、ボマーを選んだ。そして戦闘チュートリアルをこなし、俺はJOの世界にのめりこんで行った。
それから二年近くが経ち、現実世界の生活とJOでの生活とを何とか両立させていた。JOではそこそこ名前の知れたプレイヤーになっていた。地雷ジョブを集めたバカとしてだが。
メインジョブが忍、サブジョブが陰陽師、テロリスト、アサシンである。
忍は防御と引き換えに速度が上昇しているのだが、あまりの移動速度に自滅するプレイヤーが大量発生。攻撃の手数だけ見ればトップレベルなのだが、扱い切れず地雷ジョブ扱い。
陰陽師は符を使用した符術を使えるのだが、魔術師に比べ符を補充するためのお金が掛かる上、魔術師のように全てのスキルに追尾機能が付いていない。
テロリストは爆発系スキルの威力が上がり、罠の効果上昇、罠の持続時間上昇が主な利点だが、罠なんて滅多に使わない上に、爆発系スキルの威力上昇のためだけにジョブ枠を1つ潰さないといけない。
アサシンは、一撃必殺のスキル持ちということ以外は平均的なジョブ。しかし、スキルは高コストで連発できない上に、的確に急所を狙わなければならない。失敗すると通常攻撃よりダメージが通らないという、まさに諸刃の剣。
以上のように全てのジョブ枠が地雷という結果、見事俺は有名なバカになってしまった。しかし、この4つの組み合わせはそこそこいいのである。忍のスピードさえ使いこなせれば。
忍のスピードを活かしきれていなかったある日、俺はある迷宮の隠し部屋を見つけた。そこにあった『魔人のアームレット』というレア装備を入手したのだ。早速装備して効果を見ると、レアにしては珍しく、『魔眼』というサポートスキルが1つだけしかなかった。『魔眼』の説明を見ると、視力強化(大)とだけ書いてあった。最初は意味が分からなかったが、何度か戦闘をこなしていると次第に意味が分かってきた。
というのも視力強化というのは、遠くのものが見えるようになるだけでなく、動体視力、周辺視野といったものまで強化されるようなのだ。試しに全力のスピードを出してみたが、しっかりそのスピードを扱うことが出来たのだ。
そして俺はどんどんと敵を倒しLvを上げていき、めでたくLv250のカンストプレイヤーに仲間入り。
それから半年位経った頃だった。俺が交差点を渡っている時、信号無視をした車が突っ込んで来た。避ける間もなく、俺はそのまま轢かれて死んだ。
死んだはずだった。
気が付くと、辺り一面真っ白な場所に立っていた。目の前には自分の事を神だという爺さん。
話を聞いていると、俺は神様の手違いで死んでしまったらしい。だから、お詫びとして俺を別の世界に送り込んで、そこで生活してもらいたいとのこと。行く先はJOの世界と非常に酷似した世界。しかも、俺のJOのステータスをそのまま持ってきてくれるそうだ。
死んでしまったのなら仕方ない。新しい世界を楽しんでやろうじゃないか。
そう思っていた時期が俺にもありました。
名前:ユリィ
Lv:0
Lv0ってなんだよ……
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