第二章♪面接
私は昨日拾ったゴミ…いや求人広告に載っていた電話番号に電話をかけてみました。
「アルバイト希望の方ですね?今日、高田研究所に1時に来て下さい。場所は、その求人広告に地図が載せてありますが…分かりにくい地図ですよね。迷ったら私に電話して下さい。」
高田研究所…名前からしてうさんくさいです。
そんな研究所、聞いた事がありません。
しかも面接が今日だなんて…急すぎます。
けど日給2万円…7日間で14万円!!
14万円めちゃくちゃ欲しいです。
これはやるしかない!!
きっと、このバイトは神が私に与えた任務なのです!!
(少し大袈裟でした。)
時計を見ると針が11時4分を指していました。
伊藤さんが“地図が分かりにくい”と言っていたので遅刻をして悪い印象を持たれないように早めに家を出ました。
地図が分かりにくいと感じたのは伊藤さんだけだったのでしょうか…。
すんなり高田研究所に着いてしまいました。
「ようこそ!高田研究所へ。私は担当者の伊藤です。」
突然声をかけられたので、私はびっくりしました。
伊藤さんは研究所の入り口で私を1時間も前から待っていてくれたようです。
私を部屋に案内するために…。
伊藤さん…お疲れ様です。
よし!ここは挨拶をして第一印象をよくしよう!!
「こんにちは。榊原未来です。」
「今日の9時頃に電話をいただいた方ですね。お待ちしていました。」
…伊藤さんは記憶力が随分よすぎる気がします。
1人1人の電話をかけてきた時間でも記録していたかのようです。
でも…普通は記録なんてしないはずです。
あやしい…。
「榊原さん?体調でも悪いんですか?さっきから私の話しを聞いていないようなのですが…。」
「聞いてますよ。」
危ないっ!!!本当に聞いていませんでした。
伊藤さんの話しに集中しなくては!!
「ちょうど募集人数分しか応募がなかったんですよ。研究所長に気に入られれば合格です。」
だから伊藤さんは憶えていてくれたんですね。
競争率がかなり低いから…これは行けるかもしれない!
「こちらでアンケートを書いてお待ちください。」
案内された部屋は…ごく普通の部屋でした。
私はさっそくアンケートを答える事にしました。
Q1・恋をしたいですか?
Q2・素敵な恋に憧れていますか?
Q3・あなたは好きな人ができたら、どんな汚い手を使ってでも振り向かせたいですか?
…とても不思議なアンケートでした。
このアンケートで一体何を聞きたいというのでしょうか?
私は面倒くさかったので全てイエスに丸をつけてしまいました。
あまりの存在の薄さにアンケートを答えおわるまで気づきませんでしたが私の前方にはさえない男の人がいます。
あの人も私と同じアンケートに記入していたのでバイトを希望しているようです。
…あまりかかわりたくないタイプでした。
暇になってしまったので携帯電話をいじっていたら1時になったらしく、伊藤さんが面接をする部屋へ案内してくれました。
1人対1人の面接です。
少し緊張しましたが昨日、本屋で“これを読めば完璧!!面接マニュアル”という本を立ち読みしたので平気だと思います。
「どうぞ〜!」
「失礼します。」
「椅子におかけになって下さい。」
この面接官はなかなかのイケメンでした。
「アンケートに目を通しました。榊原さんは今、恋をしたいようですね。もし、この世に恋薬というものが存在したら…どうしますか?」
自業自得でした。
アンケートをマジメに書けばこのような事にはならなかったのです。
そんな質問、恋に興味がない私に聞かれても困ります。
私は咄嗟の思いつきで言いました。
「絶対に使います。私は片思いなんて嫌だからです。」
「お疲れさまでした。合否は明日に連絡しますね。」
「ありがとうございました。」
たった1つの質問しかされていないという事は、私はアンケートの時点で不合格という事なのでしょうか。
少し…落ち込みそうです。
私は、伊藤さんに見送られながら高田研究所を出て、まっすぐ家に帰りました。