夕日の中で
ちぎれた雲の間から、
『拝啓 私様。
私が筆を執るのは何回目でしょうか。
それが分からなくなるほどにたくさんの気持ちをこの手紙に託してきたということでしょうか。
それが自分に向けてだとすこし恥ずかしくも思います。
さて、今日は未来の自分に聞いてもらいたいことがあるのです。
私はある一人の男性がすきです。
傷つけ、傷つけられ、悲しいこともありましたがそれでも楽しい日々を過ごしてきました。
でも最近思うのです。私の好きは相手の好きと同じなのかを。
彼は私を好きでいてくれているのかを。
不安なのです。心配なのです。
私から離れていってしまうのではないかと。
分かっています。ずっと一緒にいれるわけないと。
でも信じたいのです、信じていいのでしょうか。
つらい思いは持っていたくありません。』
「ふう。」
ひとしきり心にたまった気持ちを取り出せてよかった。
心が少し軽くなって嬉しくなる。
窓から入ってくる夕日は部屋の中を赤く染めていく。
夕日を見ると泣いてしまいたくなる。
しかし、私にはできない。心は泣きたいと思っているのにそれができない。
もう泣く術も忘れてしまった。
真っ赤な夕日が全てを溶かしてくれればいいと思った。
悩む暇もなく消えてしまいたかった。
相変わらず差し込む夕日に楽しかったあの頃の二人が見えた気がして頬を何かが伝った。