ふっこ、突撃す
なんでかな?
本当にたまたま買い物に来たお店でセイロンさんと偶然ばったり。嬉しいはずなのに、隣に綺麗なお姉さんがいるだけで、鼻の奥がツーンとして、涙が出そう。
別に、デートだっていいよ。彼女だっていいじゃん。いつもの通り、元気に挨拶すれば大丈夫。
よく見えないから……階段に気をつけて降りないと。
「ちょい待ち、真由美」
ふっこが後ろから呼び止めます。私は振り向かずに足を止めました。
「顔、見せてみなよ」
私がゆっくりと振り向くと、優しい笑顔のふっこが言いました。
「そんなぁ、鼻を真っ赤にしたウルウル顔で行かせらんないよ。ちょっと待ってて、私が突撃してくるから近くの棚の裏にでも隠れてて」
そう言うと私を追い越して階段を降りて行きました。どうするつもりだろう……。たしかにふっこは学校の登下校でセイロンさんに会ったことはあるけれど。ふっこだって私と一緒で、そんなに社交的ってわけじゃないのに。あんな大人の中に入れるのかな?
大人の世界。お似合いだな。何歳くらいだろう? セイロンさんが30歳くらいだから、同じくらいかな。
あっ、ふっこがショーケースを見ながら左にちょっとずつずれてセイロンさんに向かっていってる。きっと、偶然を装って、ぶつかる気なんだ。
あぁ、もう当たっちゃう!
ドンッ
「おっ?」
ちょっと驚いて横を見るセイロンさん。
「セッ!」
ふっこ、「セイロンさん」って準備しすぎて、驚く声が「セッ」になっちゃった……。
「ん? あなたは真由美さんの友達の……山田さん?」
セイロンさん、ちゃんとふっこのこと覚えてくれてた。
「あっ、セ、セイロンさん、セイロンガーさん、こ、こんにちは〜」
わざとらしいけど、ふっこ頑張ってくれてる。
隣のお姉さんが会話に入ります。
「えぇ、何? あんた、こんな若い子と知り合いなの?」
あんた……あんた!?
「あぁいや、前にちらっと話した真由美さんの同級生だよ。山田風子さんで良かったよね?」
前に話した……真由美さん。
「はい! それはもう、山田風子です! えっと……こちらは、か、か、彼女さん……ですか? なんちゃってぇ」
ドキドキ、フゥ、胸が苦しいよ。
「彼女さん? いや、彼女は前の会社の同期で、柏原さん」
はい、否定、いただきましたぁ!
「そうよ、山田さん。私、理屈っぽい男、タイプじゃないの。今日はね、会社の女性の上司が勤続20周年になるから、記念品を買いに来たのよ。同期でどっちもお世話になっているから、素敵な万年筆かボールペンを共同で送ろうってね」
大人っていいなぁ、そういうことをするんだなぁ。
「あぁ! そうなんですね。私、勘違いしちゃって、すみません」
ふっこが片手を後ろに回して親指を立てて合図してくれました! 本当にありがとう、ふっこ。
「セイロンさん、こんにちは!」
私は棚から顔を出して、元気に挨拶できました。
「お、真由美さんもいたんだね。そうだ、せっかくだからお互いの買い物が終わったら、みんなでランチに行こうか?」
「やったぁ!」
こうして、セイロンさん、柏原さん、ふっこ、私のみんなでランチに行きました。
柏原さんはとても良い人で話しやすく、セイロンさんのサラリーマン時代の話をたくさん教えてくれました。セイロンさんは、ちょっと困ってましたけどねっ。




