続・怪奇! トレンチコートの女
『ど正論ヒーロー セイロンガー』のスピンオフ作品。
真由美とセイロンガーの登下校を中心に日常を描きます。
セイロンガー本編はこちらから
ど正論ヒーロー セイロンガー
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真由美です……。
夕暮れの薄暗い通りの右側。電灯もない電信柱に向かい、こちらに背を向けて立つ背の高い女性。髪が長く、ベージュのトレンチコートを着て、赤いハイヒールを履いています。手には紙袋らしき物も持っています……。
絶対にあそこを通ってはダメ!
なのに、セイロンさんは構わず進んでいきます。いえ、というより、向かっていってます。まさか……。
私はセイロンさんの左後ろに隠れながら付いていきます。女性は背を向けたまま、確認するように顔を少しだけこちらに向けました。
白いマスクしてるぅぅぅ!
「セイロンさん、ちょっと、セイロンさん。あの人、寸分の狂いもないほどの口裂け女さんです……。道、変えましょう」
小声で言いながら、私はセイロンさんの袖を引っ張りましたが、ずんずん歩いていっちゃいます。やっぱり全然怖がってないよぉ!
セイロンさんは女性に近付くと、立ったまま、何も言いません。女性はよく見ると、長い髪はベタついてほつれ、コートも赤いヒールも薄汚れて見えます。
そして、伏し目がちにこちらを見て、か細い震え声で言いました。
「何か……用、ですか……?」
セイロンさんはすかさず、答えます。
「それはこちらの台詞だ、何かしら質問するんじゃないのか? それを待っているのだが」
「いえ、別に……」
「では聞くが、そんなところで何をしているのかな?」
「……待ち合わせ……です」
「こんな街灯もなく、目印にならない電柱で? その紙袋、見たところ柄の長い鎌が入っているようだが」
「……草刈りをして……」
「その格好で?」
セイロンさんは食い気味に返します。口裂け女さんもヒールで草刈りは無理があるよぉ。
「……るさい……」
「ん?」
「うるっさいんだよ、放っておいてよ! こっちは子供を狙ってるんだ、大人がいたらやり過ごすことにしているの! しかもあんた、ヒーローだろう? ヒーロー相手に『ワタシ、キレイ?』ってやる馬鹿いる? 見てみろ、この口を!」
口裂け女さんは怒り出し、白い大きなマスクを取って地面に叩きつけました。
うわぁ!
口は耳まで裂けて歯茎まで見え、傷口はかさぶたが赤くまだ血が滲んでいます……。
その顔を見てもセイロンさんは動じません。
「ふっ、言われてみればたしかに。しかし、悪いな怪人口裂け女、市民を狙うヴィランは見過ごせない性分でな……」
「怪人? ヴィラン? 私はそんなんじゃない! 私は、私は、ヤブ医者に整形手術を失敗されて……」
「……そうか、てっきりVVEIの新作怪人かと思った。すまなかったな。では……警察を呼ぼう」
セイロンさんがスマホを取り出すと、口裂け女さんはバッと走って逃げようとしました。だけど、セイロンさんにトレンチコートのベルトを掴まれて進めませんでした。
警察が到着して、女性が連れて行かれるとき、セイロンさんは名刺を彼女に渡して言いました。
「罪を償ったら、電話してきなさい。信頼できる形成外科医を知っている。治したら、身綺麗にしてやり直すんだ」
名刺を受け取った女性は、顔を伏せていましたが、無言で一瞬礼をしたように見えました。




