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【物語】シャーロキアンのホームズⅥ〜虚構共同集団の物語〜  作者: 語り部ファウスト


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第四幕

やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。

なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。


第三幕では、シャーロキアンのホームズの群れに、ロンドンで起きている事件を解決するための協力をもらおうとした。

そのために、彼らの拠点にきた。


ここはカムデン・タウンの南端。

古い倉庫の中だった。

そこは赤レンガで積まれ、建てられてた。それで重厚なイメージを見るものに与えた。複数階あるみたいだ。

一階がメンバーの交流の場所のようだった。

僕らは、帽子ホームズから案内されて、五階の区切られた部屋へと連れてこられた。

部屋の中央には円卓があり、囲むようにして木椅子があった。ーー適当に座った。ワトソンは不安なのか僕の隣りに座った。彼は一言も喋らない。

帽子ホームズは、僕と向かいあうように座った。

「それでーー、君は、僕らのメンバーに戻ってくるつもりなのかい?

それともーー何か別の理由ーーなのかな?」と帽子ホームズが微笑みながら僕の真意を探ろうとしてきた。

ワトソンが僕の方を見た。

彼らの力を貸してもらい、ロンドンの闇に立ち向かうーーそのつもりだった。

だけどーーここまで来てなんだけど、僕の気持ちはーー完全には彼らから協力を得たらダメだという結論に達していた。

なぜかって?

彼らには、事件に対する責任をまったく感じないからだ。

探偵ごっこの延長にあった。

コナン・ドイルと僕が事件に飛び込んで、現場をめちゃくちゃに荒らしまわった事を、彼らが繰り返すことになる。現場を知らないし、自分だけが一番と思い込んでいる連中だからだ。

僕を含めてだ。

もし協力をもらうとしても、限定的でなきゃいけない。

ーーグレグソン警部補の革表紙のファイルの存在は黙っておくべきだった。

ワトソンにも口止めをしたかった。

幸いワトソンは、ここまで来て一言も話さない。

彼には悪いが、このまま黙ってほしかった。


「別の理由ーーただ君らに、会いたかっただけだ」と僕は、そっけなく言った。

ワトソンが僕を見た。目を見開いてた。お願いだ、ワトソン。何も見せないでくれ。

「その理由は、彼が関係するのかい?」と帽子ホームズはワトソンへと視線を向けた。

「ボクらに、ワトソンを見せたかったの?」と彼は言った。

「そんなもんさ。」と僕は言った。

「君は気に入らなかったようだ。

だけど彼は、僕にとってかけがえのない相棒だ。僕の物語も書いてくれるーー」

「酒が飲みたいから、都合のいい事を言っているだけだ。彼は信用するなよ。」と帽子ホームズは笑った。

ワトソンの顔は歪んだ。

「やめろ。」と僕は、とうとう立ち上がった。

「彼は僕のワトソンだ。君のではないーー」と言って、帽子ホームズを睨んだ。

「来たのは間違いだったかもしれない。」と僕は想いを口にした。

「間違いじゃないさ。ボクらはホームズだ。きっと役にたつ。ーーなあ、事件があるなら、話してほしいな。

依頼人がいるのか?どんなヤツだい?」と帽子ホームズは質問をしてきた。

「犬の捜索さ。これから、そういう事件が増える。その時は、頼むかもしれない。タダとは言わない。」と僕は微笑んでみせた。

「ーータダでもいいさ。ボクと君の仲だ。

初めて会った時、無職で引きこもりの君を助けてやった。」と帽子ホームズは笑った。

「それには、感謝しているよ。」と僕は言った。

「ワトソン。そろそろ行こう。ここは寒いだろーー君の身体が心配だ。」と僕はワトソンへと顔を向けた。

ワトソンの指先はブルブル震えて止められないようだった。

「早速、そいつが足を引っ張ってるな。アル中の治療をさせたらいい。

今のままじゃ、ずっと役立たずだ。」

「ーー僕は帰るよ。また話そう。」と僕は冷静に応えた。

「次は、君だけでくるといい。

帰るなら、自分らで戻れよ。

ボクはメンバーに、

君から教えてもらった話でもするよ。」と彼は肩をすくめた。


「別の理由ーーただ君らに会いたかっただけだ」


やっと吐き出した言葉に、ワトソンがこちらを振り向いた。

驚いた顔をするな、頼むから。今は余計なものを見せないでくれ。


「その理由は、彼が関係するのかい?」

帽子ホームズは、ワトソンに流し目を送った。

「ボクらにワトソンを“見せ”たかったの?」


「そんなもんさ。」

軽く言い放つ。ワトソンの肩がぴくりと動いた。


「だが、気に入らなかったようだね。

でも彼は、君にとっては相棒か。物語を書いてくれる書記官でもある」


「酒のためなら何でも言うんだろ? 信用しない方がいいよ。」

帽子ホームズが笑い飛ばした。


ワトソンの表情が崩れた。

その瞬間、僕は立ち上がっていた。


「やめろ。

彼は僕のワトソンだ。君の玩具じゃない」


僕の声に、帽子ホームズはわずかに眉を上げた。

もういい。この場所の空気は冷えきってる。


「来たのは間違いだったかもしれない。」


「間違いじゃないさ。僕らはホームズだ。役に立てる。

ーーねえ、事件があるんだろ? 依頼人は誰だい?」


「犬の捜索さ。これから似たような案件が増える。

頼む時が来るかもしれない。その時は代金も払うよ。」


「タダでいいさ、ボクと君の仲じゃないか。

初めて会った時、無職で引きこもりの君を助けてやったんだし。」


「それは感謝してるよ。」


僕は引きつった笑みを作り、ワトソンへ向いた。

「行こう。ここは身体に悪い。」


ワトソンの指先が震え続けている。

帽子ホームズはその様子を見て鼻で笑った。


「もう足を引っ張ってる。アル中の治療でも受けろ。

今のままじゃ、ずっと役に立たない。」


殺気が喉まで込み上げた。

抑え込んだ声で言った。


「帰る。また話そう。」


「次は君一人で来るといい。

帰りは自分でどうぞ。僕はメンバーたちと、君の話でもするとするよ。」


もう振り返らなかった。



倉庫を離れ、辻馬車で虚実荘221Bに戻ると、

ワトソンはソファに倒れ込み、放置してあった酒瓶を掴んで一気に煽った。


瓶を抱えたまま、彼は喉を震わせた。


「ボクは役立たずだ。

あいつは外道だ。君とは違う。断じて違う!」


「変わらないさ。僕も彼らと変わらないよ、ワトソン。」


書類を集め、革表紙ファイルを机に押し込み鍵をかけた。

もう一つの鍵をワトソンに渡す。


「隠しておこう。

ホームズたちが存在を知れば、必ず奪いに来る。悪魔みたいに。」


ワトソンは鍵をいじりながら呟いた。


「ーーボクら、全然成果が出ないね。」


「焦らなくていい。僕らは僕らだ。

“緋色の研究”みたいに、出会いを書きたければ書けばいい。」


「……ハンウェル精神病院のことを書いたら、ドクターに殺されるよ。」


「じゃあ、うまく誤魔化すんだ。」


その時だった。

ノックもなく扉が開いた。


「ワトソンさん。お客様です。」

アダムズ夫人は僕を完全に無視して告げた。


その後ろには、金髪の優男が柔和な笑顔を浮かべて立っていた。


「ありがとう、アダムズ夫人。あなたとのお話は実に有意義でしたよ。」


軽やかに彼女を部屋から追い出し、扉を閉める。

それから満面の笑みで僕らを見た。


「では、二人とも。動かないでいただきたい。

ーーさもないと、あなた方を逮捕することになる。」


ジョセフ・レストレード刑事だった。


(こうして第四幕は、ライバル刑事の乱入によって幕を閉じた。)

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