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シャーロキアンのホームズⅥ〜虚構共同集団の物語〜  作者: 語り部ファウスト


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第六部十六幕:身近な蜘蛛の糸

【第六部十六幕】

やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。

なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。


第十五幕では、僕はハリエットの正体を知るために彼女の従姉妹のキャロラインに会いにいった。


彼女はマリルボーン地区の叔母の屋敷の近くにあるテラスハウスで保護されていた。

グレグソン警部補に、彼女の場所を教えてもらった。

彼女の保護されている部屋には寝台があった。そこに彼女は横たわっていた。

頭と腕に包帯を巻いた彼女はハリエット嬢とそっくりだ。

金髪の髪は治療の際に剃られていた。

視線はどこか遠くへとさまよっていた。僕は一気に不安になった。

僕は彼女に、こんな挨拶をした。

 

「はじめまして、キャロライン嬢。私はシャーロック・ホームズと言います。こちらは助手のワトソンです。私たちは、従姉妹のハリエット嬢のお友だちです。私の言葉はわかりますか?」


彼女は上半身を起き上がらせて、僕を見た。


「え、ええ、わかります......あの......すみません。ちょっと混乱してて、その、なんで、こんな事になっているのか......シャーロック・ホームズさん?

それにワトソンさん?

え......あ、ごめんなさい、夢なのかしら?」

 

「いいえ。夢ではありません。

僕はシャーロック・ホームズと名乗っているだけの男です。ワトソンもそうです。ハリエット嬢の遊びの延長のようなものですよ」

 

彼女は顔を下に向けた。納得したのか、分からない。彼女は口を開いた。

 

「彼女、無事なんですか?」

 

僕は少し何をいうか考えた。

でも、正直に話す事にした。

 

「無事かはわからないです。僕らが先に保護したいとは思っています。

彼女は、危険な立場に陥ってます」

 

「そんなーー」

 

「あなたは、彼女を恨んでないのですか? 怪我をしたのは彼女のそばにいたからとーー」

 

「恨むわけがないわ!」と彼女は声を強めた。

 

「私は彼女が好きなの。そばにいて、とても楽しいわ」

 

彼女の意識がはっきりとしてきたようだ。

 

「彼女は僕らに、全てを教えてくれなかった。彼女は過去に何を隠してたんですか?」

 

「彼女が言わなかったことを、あなた方に言えと?」

 

「僕らは彼女を信じたいんです。そのためには、彼女を知りたい......」

 

僕がそういうと、キャロラインはジッと見つめてきた。

 

「彼女は、男の人から騙されたの。

そして、その嘘は彼女の全てを奪ったの。私、私も彼女と同じ目にあったかもしれない。結婚詐欺に遭うなんて、ふつう、誰も思わないわーー」

 

「たしかに......」

僕は彼女に酷い事を言った。

無知でカモにされるってね。

あんな事、言わなきゃ良かったーー僕も大して変わらないのに。


「彼女を、彼女をハリエットを助けてあげてーー」とキャロラインにそう言った。

 

それから疲れたのか、ぐったりと力なく横たわった。

これ以上聞くのはムダかもしれない。

僕らは部屋を出た。


それから僕とワトソンは、馬車に乗ってカムデン・タウンの南端への倉庫に向かった。

ハリエット嬢と一緒にいたのは、帽子ホームズだから。

彼が何かを知っていると思った。

馬車の中で、ワトソンが僕にこう言った。

 

「帽子ホームズは、キライだ。彼に会いに行きたくない。君もそうだろ?」

 

ワトソンはそういうとスキットルにいれた酒をグイッと飲んだ。

 

「彼は何か違う。ボクらと違うんだ。ホームズ。君は彼に近寄らない方がいい」

 

何も言うことができなかった。

馬車が止まった。

そして僕らは、倉庫の前に来たんだ。

だけど、倉庫には誰もいなかった。


インディアンの群れはどこかへ行った。


始めから何もなかったかのように、赤レンガの倉庫があるだけだ。

 

「彼は、何者なんだろう?」と僕は呟いてた。

 

「まるで、ロンドンの霧のようだ。

近づいたら、消えていくーー僕らが謎を追うたびに消えていくーー。

アドラーも消えたーー

帽子ホームズも消えたーー

何の物語の中にいるのだろうーー」

 

僕はワトソンを見た。

彼の頬は前よりもヤツれて見えた。

彼が手にしたスキットルを取り上げて、僕は一気に飲んだ。

刺激で口の中が痛くなり、喉が熱くなった。


僕の知性が静かに告げていた。


『帽子ホームズが”蜘蛛の糸”だ。

アドラーは、犠牲となった。

喜んで罪を犯し、

地獄へと自らを投げ入れた』


そして僕は、マヌケなシャーロック・ホームズと名乗る男なのだーー。


それでもーー僕は謎に飛び込んでいくんだ。


たとえ何回、負けようともーー。


それがホームズなのだからーー。


(こうして、物語は幕を閉じる。)

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