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シャーロキアンのホームズⅥ〜虚構共同集団の物語〜  作者: 語り部ファウスト


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第六部十三幕:ホームズの仮面

【第六部十三幕】

やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。

なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。


第十二幕では、アシュワース弁護士の事務所で遺産の絵と叔母の姿を見た。

僕には、うっすらとした物語が出来上がってた。


虚実荘に戻ってすぐに、

ワトソンは居間で、アシュワース弁護士からかっぱらった酒を楽しむことにしてた。

僕は彼女の部屋に入り込んだ。

いま彼女はいないと思ってた。

彼女の荷物の中身を確認するためにだ。

僕はトランクの中身を見た。

これは英国紳士としても、人間としても、認められたものなんかじゃない。

それでも、見る必要があった。

ーー彼女が変装できるかどうかのね。

ーー僕はあの帽子ホームズと来た叔母がニセモノとしか思えなかったからだ。


そして僕の答えは、正しかった。

彼女は変装ができる。

色んなウィッグと多すぎるメイク道具が彼女の秘密の趣味を見せていた。

僕の答えは当たってしまった。


僕は彼女が戻ってくるまで、ベッドに腰掛けていた。しばらくして、彼女は戻ってきた。

「アドラー」と僕はなるべく優しげに、彼女の名を呼んだ。

「君は、今までどこに行ってたのか。僕の口から言わせる気かい?」

彼女の目は挑みかかるようだった。

まるで本物のアドラーのように。

 

「......あら。私の何を知りたいの、探偵さん。アドラーとは神秘的な女なの。

それは.....もう......深い海のようにーー」

 

僕の不安は高まっていた。

彼女は人に言えないことをやろうとしてるんだ。なんとか、止めなきゃいけない。

 

「その薄暗い海の底は、君の居場所ではない。ーー君の居場所は、もっと陽の当たる場所でいるべきだ」

 

「それは、ホームズとしての言葉?

それとも、あなたの?」

 

僕は息がつまった。なぜ、彼女にかまおうとしてるんだ?

僕自身、彼女に対して、特別な感情を抱いているんだ。ホームズの仮面の下。本当の僕の欲求だ。

 

「......わからない。だけど、アドラー。

君がやろうとしてる事は分かる」

 

僕は目をつぶった。気持ちを落ち着けたかったから。

 

「君と僕は似ているから。

ホームズとアドラー関係なく」と僕は言った。

 

「そう? なら、私たちは……もっと親しくなれるわ。きっとーーきっとね」とアドラーは言った。

彼女は僕にゆっくりと近づいた。

 

「僕は君の荷物を見た。君は変装術の達人なんだろうな」

彼女は動けなくなった。雷に打たれた荒野の旅人のように。

 

「......人の荷物の中身を見たの?」

 

彼女の声は冷たかった。信頼してたかもしれない。だけど僕は――。

 

「僕は真実を知りたいから......そして、君のことをある程度......理解できた」

 

彼女は首を振った。

 

「思い込むのはやめて。不愉快よ。

人の過去を探るだけじゃなく、荷物まであさって、あなたは紳士じゃないわ」

 

彼女は軽蔑を隠さない。

 

「紳士じゃない。それは僕が一番わかっている事だ。

それにーー君の企んでることは、ろくでもないって分かる。手を引け。手遅れになる前に」

 

彼女はしばらく黙っていた。

 

「手遅れって......なに?」

 

彼女はゆっくりと言葉を続けた。

 

「手遅れになって、何か悪いの?」

 

彼は私の質問に答えなかった。

 

「......あの絵は、君に関係するものだ。

僕は覗き見た。君らの話を聞いたんだ」

 

彼女の頬は引きつった。

 

「なんなの? あなたは私をどうしたいの? 助けたいの? それとも、なに?」


僕自身が知りたいことだ。

でも、そんなこと言えなかった。

 

「......分からない。僕はこういうのが苦手なんだ。自分がホームズなんだという気持ちさえ揺らぎそうだ。

でも、君のやろうとしてる事、僕はイヤなんだ。すごくーー不安にさせる」


彼女は、そのまま部屋から飛び出た。

僕は彼女の腕をつかむべきだったのだろう。

僕は、そうしなかった。

僕も彼女はーーしょせん、他人なのだから。彼女は遺産を受け取るだろう。

僕は彼女の叔母から頼まれたことを、果たせられるのだろうか。


それから、数日経って僕のもとに彼女の叔母が亡くなったと電報で連絡が入った。


彼女に会いたくてたまらなかった。

アドラーではないーーハリエット嬢にーー。


(こうして、第十三幕は叔母の死により幕を閉じる。)

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