表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャーロキアンのホームズⅥ〜虚構共同集団の物語〜  作者: 語り部ファウスト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/16

第六部十一幕:好ましい弁護士

【第六部十一幕】

やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。

なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。


第十幕では、ハリエット嬢の叔母エミリー・グレイから前払いで依頼を受けた。ハリエット嬢を守り、遺産を相続させることだ。


僕らは叔母から教えてもらった弁護士に会いにいった。

彼の名はレジナルド・アシュワースだ。

インナーテンプルに事務所を構える名士。”ロンドンの良心”とも呼ばれる方で、積極的に慈善活動をやる男らしい。寄付ジャンキーみたいなもんかな。

そこまで行くのに、馬車か地下鉄のどちらかだった。

地下鉄に乗る事にした。

蒸気機関車がベーカーストリート駅からテンプル駅につくと、さっそく例の事務所に向かった。

僕はワトソンの体調が心配だった。

彼の痙攣は少しずつ目立ってきたからだ。

 

「ホームズ。大丈夫だ。きっと、ボクらの会うアシュワース弁護士なら、ボクにお酒をくれる。彼にとって、ボクは守るべき市民なのだから」

 

彼はこの場で殴りつけたいほど、甘い考えをみせていた。

僕らは物乞いしに行くのではないからだ。あくまでも、調査なんだ。

慈善家の仮面の下に悪魔がいないかどうかのーー。


目的の場所はロンドンのインナーテンプルの中庭に面した一角だった。

建物はチューダー朝リバイバル様式だった。重厚な赤レンガで造られ、石灰岩の縁取りが施されていた。

入口には「R. Ashworth, Barrister & Solicitor」と刻まれた、真鍮の銘板が掲げられていた。

そして重厚なオーク材の扉が、まるで僕らを拒んでいるように感じた。

リングのノッカーを叩いた。


しばらくすると、扉がゆっくりと押し開かれた。僕は後ろへと下がった。

そこに現れたのは事務員の女だった。

薄いブラウンの髪をきっちりとまとめた地味な女だった。

彼女は僕を見て、それからワトソンを見た。

 

「アポイントはお取りになっておりますか?アシュワース弁護士はお忙しい方なので、急な訪問をお断りしております」

 

「エミリー・グレイ様の件でお伺いしました。そう言ってもらえたら、通じると思います」

 

そういわれると、彼女は「しばらくお待ちくださいませ」と言って扉を閉めた。

それからしばらくして、彼女は再び現れた。

 

「お待たせ致しました。どうぞ、こちらへ」と言われたので、彼女の後ろをついていった。


 彼女の歩きは足早で、僕は部屋の観察もまともにできなかった。

そのまま、執務室に案内された。

その部屋にいたのは、英国紳士を絵に描いたような男だった。彼はすでに立って、僕らを待っていた。

濃いブラウンの髪は七三にわけられていた。日焼けしてない白い肌。顔には少しシワが刻まれていたが、若々しく見えた。やや面長だが上品な顔立ちだ。身長は高めだったが、痩せすぎではなかった。

 

「エミリー・グレイ様のつかいと聞いてたが、探偵がくるとは思わなかった。あの方のお遊びなのかな」と彼は呟くように言った。


この部屋の壁は濃いオーク材のパネルで覆われてた。本棚が壁一面に並んでいて、大きな鉄製の黒い金庫もあった。

床には濃い色合いのペルシャ絨毯が敷かれていた。

部屋の奥には、マホガニー材のライティングデスクがあった。

その前には、四つのシングルソファが向かい合うように置いてあった。

それから、弁護士に僕らは目を向けた。

彼は視線で事務員を下がらせていた。

僕と彼の目があった。

 

「どうぞ、おかけになってください。

もうご存知かもしれませんが、私はレジナルド・アシュワース。このインナーテンプルで弁護士をしています」

 

「ご丁寧にありがとうございます。

私はシャーロック・ホームズ。ベーカー街でコンサルタントをしている。

彼は助手のワトソンです。

あなたは笑うかもしれませんが、私たちは真剣です」

「ほほう。コンサルタントーーそれは結構なことだ。笑いはしませんよ。

私もいずれ君らの世話になるかもしれない。具体的に、どんな相談を?」

 

「ある程度は、なんでも。私の鋭い知性が役立つのでしたら。ただし占いや降霊術、妖精に関する相談は受け付けませんよ。

あれは知性のない遊びでしょう。夢中になる方の気持ちは理解しがたい」

 

僕は吐き捨てるように言った。

 

「ならーー君が本当に得意なのは?」とアシュワース弁護士。

 

「ーー犯罪に対するもの。個人、団体でも問わないです」

 

「ああ。君はまるでシャーロック・ホームズみたいだ。読んだ事あるよ。

実に面白い作品だね」

 

「ええ。為になる本です。僕のような仕事をするのであればーー」

 

僕らはソファに腰掛けた。

 

「この事務所の歴史に刻まれたよ。ホームズくん」とアシュワース弁護士は笑った。


「それで君らは、何を探りに来たんだい?」

 

「エミリー様との話で気になった事がありましたのでーー」

 

「ほほう。気になる点がございましたかな」

 

「なぜ......弁護士が変わったのか。

非常に気になりますね。

エミリー様は、あなたが前の弁護士の方から紹介されたとーー」

 

「ははは!そんな事ですか。

前任者は身体的に継続ができないと判断したんですよ。グレイ夫人は、時々難題を押し付けてきますからね」

 

「ムリ難題ーーですかーー」

 

「詳しくは話すのはよしましょう。

まあね。ここの事務所に探偵を送るような方だ。納得しましたよ」

 

弁護士は、そういうと困った顔をした。


「今回の遺産分配の遺書の件も、そのーームリ難題はありましたか?」と僕は聞いた。

 

「ええ。言うべきではないのでしょうが。ーー彼女は遺産として、絵だけを渡そうとしてるのです」

 

「絵だけ?」

 

「誰が描いたかわからん。肖像画ですよ。無名の画家だそうですな。

渡す相手は、可哀想なお嬢さんです。

親戚の家をたらい回しにされている女性でしてね。話を聞くのが辛かったーー」

 

「ハリエット嬢のことですか?」と僕は言った。

 

「ええ。彼女です。彼女には金が必要なのに、グレイ夫人は一銭も渡す気がないようだ。ーーグレイ夫人はハリエット嬢を憎んでいるに違いない。

価値のない絵をですよ。あなたなら、どうですか? あてにした収入が無意味ならーー」

 

「嫌な気持ちになりますね。エミリー様に対してーー」と僕はワトソンを見た。


 彼は痙攣と戦っているようだった。取り出した手帳がぶるぶると震えてた。

 

「ーーそうでしょう?」

 

「ええ。そんなヤツ、クソババアですね」と僕が言うと、弁護士は微笑した。

 

「だから私は、その絵を買い取るつもりです。英国紳士としてーー」

 

すると遠くから、ノッカーの音がした。

 

「しまった。受付係の彼女を返したんだ。君らと邪魔されずに話したかったからね。少し待ってほしい。誰が来たのか見に行くよ」

 

弁護士は僕らに微笑んで見せて、部屋から出ていった。


「ホームズ。あいつ、茶すら出さない。慈善の仮面だよ」とワトソンが震えながら言った。

 

「だろうね。ソファの前にはテーブルはない。モノを置くつもりはないんだ。心の中では、僕らにさっさと帰って欲しいのさ。

この部屋で権威を主張し、自分がただしいとうたってやがる」と言って僕は顎を撫でた。


「ここを探るべきだろうけど。鍵とかかけているだろう。探るだけムダだよ。金庫も僕らには開けられない」


しばらくすると、複数の足音が近づいてきた。

僕らの目の前に弁護士と叔母と帽子ホームズが現れた、


ワトソンは帽子ホームズを見ると不機嫌そうに顔を歪めて、目を逸らした。

 

「まあーーシャーロック・ホームズが二人だわ」と叔母は声を少し震わせた。

 

帽子ホームズは、僕を見ると挑発的に笑ってた。

(こうして、第十一幕は叔母の登場により幕を閉じる。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ