表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャーロキアンのホームズⅥ〜虚構共同集団の物語〜  作者: 語り部ファウスト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/16

第六部十幕:アドラーの叔母

【第六部十幕】

やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。

なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。


第九幕では、アイリーン・アドラーことハリエット・グレイの叔母の屋敷へと入ることができた。


家政婦は、僕らをこの家の主人がいる居間へと案内してくれた。

 

「ホームズさん。これからお会いするのは、この屋敷の女主人エミリー・グレイ様です。失礼のないようにしてください」

 

その部屋の暖炉には火がくべられ、パチパチという音と、心地よい熱気が部屋を満たしていた。


壁には、深紅の壁紙が貼られ、その上には金縁の額に入った風景画がいくつか飾られていた。

窓は大きく、厚手のベルベットのカーテンが引かれているため、光は柔らかく、部屋全体を包み込んだ。


部屋の中央には、年代物のソファとアームチェアが並べられてた。

その前には小さなコーヒーテーブルが置かれていた。


僕らが部屋に足を踏み入れると、奥のアームチェアに座っていた老婦人が、ゆっくりと顔を上げた。


彼女が、ハリエット・グレイの叔母、グレイ夫人だった。

 

「珍しい客がいらっしゃったわ。シャーロック・ホームズ......さんね。ふふ。この家に、お招きするには面白すぎる方だわ」と彼女は僕らを見て微笑んだ。

 

「無作法かと感じられますが、ワタシの足腰はめっきりと弱っております。

このままでの挨拶を許してくださいね」と彼女は言った。

 

「マダム。こちらこそ、いきなりの訪問ーー申し訳ございません。

ハリエット嬢の事について、お話をしたいと思いましてーー」

 

そう言いながら、僕は部屋を観察した。

部屋の隅には、書棚があった。

中には古い本がびっしりと並んでいた。

棚の前には、小さな読書机が見えた。

机上に読みかけの新聞と、眼鏡が置かれてた。

ーーおそらく、ここが叔母の日常生活の中心なのだろう。

 

「あの子、自分の本心を見せないからーー心配していたんです。昨日、いきなり屋敷を出ると言ってーー引き止めるべきでしたわ」と叔母は言った。


「ハリエット嬢は、身の危険を感じていました。ここを離れたのは、マダムの身を心配してのことです」

 

「まあ、この屋敷に危険? 彼女の考え過ぎだと思いますわ。

ここには、遺産分配のために呼んだ弁護士と、庭の手入れをさせる庭師に、家政婦しか出入りはしてないのに」

 

「ーー本当に?」

「そうねーーもしかしたら、誰かがコッソリと入り込む可能性は、あるかもしれないわ。戸締りには気をつけさせてますのに」

 

「その方々は皆、顔見知りで?」

 

「弁護士の方は新しい方よ。

でも、前の弁護士の方から紹介されたの。信用してるわ」

 

「親戚の方がケガをなさったと、彼女から聞きましたが」

 

「ロンドンの馬車は、時々事故を起こすものだわ。事故に遭ったのはーーキャロラインと言いますが、ほんと、そそっかしい子なの」


「なるほどーー、遺産分配のお話が出たとのことですが、お体の具合は大丈夫なのでしょうか?」と僕は聞いた。

 

「この先、何が起こるかわからないですからね......。決められることは、決めておかないと、後々迷惑をかけるでしょう?」

 

「たしかに」

 

「ふふ。ワタシ、ホームズさんに質問をされているわ」

叔母は微笑み、近くに置いてあるティーカップに手を伸ばした。

 

「家政婦からコンサルタントと聞きましたが、何の相談を受け付けているの?」

 

「ある程度は、なんでも。

私の鋭い知性が役立つならーー。

ただし占いや降霊術、

妖精に関する相談は受け付けません。

あれは知性のない遊びですから。

夢中になる方の知性を疑います」

 

「あら、厳しいのね。」


「マダム。新しい弁護士とは誰ですか?どこに住んでいるのです?」と僕は彼女に聞いた。

 

彼女はしばらく黙っていた。

だけど、ある地区にすむ弁護士の名前を告げた。

僕らは彼を調べなきゃいけない。


ワトソンが震えるペンで手帳に書き込んだのを見届けた。

叔母は、僕の目をジッと見て聞いてきた。

 

「このロンドンについて、ホームズさん。

あなたは何を思いますか?」

 

「嵐の前の静けさ......です」

 

「ーー嵐は、どのような形をしていると思いますか?」

 

「嵐の形は分かりません。ただ、嵐に関わろうとする形は......蜘蛛だと思ってます。蜘蛛が嵐を引き寄せようと糸を吐いているんです」

 

「......まあ、怖い。ロンドンの蜘蛛ね。

まるで、そう、アーサー・コナン・ドイルの描いた彼のよう......」

 

「マダム。お互いに腹を割って話し合えませんか? 何を隠しているんです?」

 

叔母は首を横に振った。

「ホームズさん。ワタシは去るだけ許されている者です。神はワタシを近いうち、彼の国へと招くでしょう」

 

彼女は、そう言って目を瞑った。

 

「ハリエットを頼みます。彼女への遺産は、必ず彼女の手元に。

これは、ワタシからあなたへの依頼です。少し疲れましたわーー家政婦には伝えておきます。今日のところはお引き取りください」

 

そう言って彼女は、手元にあった呼び鈴を鳴らした。

家政婦がすぐにやってきて、僕らを玄関ホールまで案内した。


そして僕らは、かなりの額の小切手をもらえた。これは小遣いにしては、懐を温かくしてくれるものだった。


(こうして、第十幕は新たな依頼で幕を閉じる。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ