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落陽の瞳  作者: Hozuki Rui
51/55

3/3中編

遠慮する鶴望兰の背中を押しつつ、長林は昨日自分の化粧をした妓女らのもとへ向かった。


「すみません、長林ですが妹の化粧をお願いしたくて。入っても良いですか?」


長林は扉の外から声を掛けると中から間延びした返事とともに見覚えのある顔が現れた。


「げ、あんたあの時私が平手打ちした奴じゃない」

「あの時はどうも、強烈な一撃でしたね。お陰様で通りすがう人々に褒められましたよ?『紅葉のいい男だな』とね」


鶴望兰を挟んで長林を平手打ちした妓女は眉間にシワを寄せて微笑んだままの長林と火花を飛ばして睨み合った。


「それは置いておいて、今日こちらに来たのは別にあなたに用事があるわけではないです。昨日私に化粧をした人にこの子の化粧をお願いしたくて来たんです。居ます?」

「今は私だけよ」

「残念です。ではまた後できます」

「ちょっと待ちなさいよ」


引き返そうとする長林の肩を掴むと妓女は親指で部屋に入るように示した。


「入んなさいよ。私が化粧してあげるわ」

「変な顔にするとか...」

「しないわよ!陰険な男ね!」


緑李と名乗った妓女は鶴望兰を鏡台の前に座らせ化粧を施し始めた。


「がらりと雰囲気を変えたいそうね。ならその平行眉を少し釣り上げるわよ。最近目元に似合わないのに無理して流行りに乗ろうと朱を入れてる子が居るけどあんたは大丈夫そうね。朱色じゃなくて紅色が良いわね、ほら目閉じてなさい。髪は結ぶにはまだ短いから髪のうねりに合わせてピンで留めるわよ」

「は、はい」


滝のように捲し立てられた言葉の数々にたじろぐものの、自分の顔に施される化粧に僅かに目を輝かせながらされるがままになっていた。そんな2人の後ろでは、長林が壁に寄りかかって鏡に映る鶴望兰を眺めていた。


「ちょっと、いつまでそこに居る気?着替えるんですけど」


緑李に睨まれた長林は耳を赤くするほどたじろぎ、驚くほどの速さで部屋を出た。

 後ろ手で扉を閉め息をついた長林は目を閉じて壁にもたれ掛かる。壁の向こうでは緑李が鶴望兰と楽しそうに話している声が聞こえるが何を話しているかはわからない。


(鶴望兰もやっぱり男じゃなくて年が近い女と一緒の方が良いんだろうか。ここでの生活で鶴望兰の雰囲気も明るくなったし、俺の我儘で故郷へ…あの地へ行くのは悪手だろうか)


考え込んでいると扉が開き、緑李が顔を覗かせて長林を睨みながら手招きした。


「着替え終わったわよ。早く連れてってちょうだい。折角の休みなのに邪魔されてホント気分悪いわ」


ふんと鼻を鳴らして顔を顰める緑李の肩の向こうに見覚えのない服を身に付けた鶴望兰が座っていた。落ち着かなさそうに襟をそっと指先で触れるその中華ドレスはシンプルかつ上品なデザインで、長林は動きにくいスカートが苦手な鶴望兰にそんな服を買い与えた覚えもない。

 首をひねって服の出どころを考える長林に、わざとらしいため息を吐きながら緑李は横柄に鶴望兰を指さしながら答える。


「昔お客さんに服貰ったんだけど好みじゃないし大きさ合わないしで一回も着てないのよ。ちょうど合うみたいだしあげるわ」

「どうも。わざわざありがとうございます」

「いらないからあげるだけよ、勘違いしないでちょうだい」


くわっと目を見開き噛みつかんばかりに怒る緑李は長林と鶴望兰を部屋から追い立ててバタンと荒めに扉を閉めた。


「あっ、あの!お化粧と服、ありがとうございます緑李さん!」


手をぎゅっと握り、化粧のせいでやや照れているようにも見える赤い目元をゆるくほころばせながら鶴望兰が礼を言うと壁の向こうから緑李が返事を返した。


「いらないからあげただけって言ってるでしょ!…楽しみなさいよ」


小さく付け足されたその言葉に思わず長林と鶴望兰は顔を見合わせ苦笑した。

思ったより長くなってしまい、1/3と2/3は前編後編の構成だったのに、これだけ中編があるという気持ち悪いことになってしまいました。ごめんなさい。

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