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落陽の瞳  作者: Hozuki Rui
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対立

 次の朝、長林が目をこすりながら起き上がるとると、鏡の前に座り込み自分の前髪を整えている鶴望兰が目に入る。


「おはよう、よく眠れた?」


横から近づきひょいっと鏡に映り込むと鶴望兰はぎくりと身を強張らせた。


「…おはようございます。起きていらしたのですか」

「ついさっき起きたところだよ。すぐそこで寝てたのに気づかなかったの?」


居間で寝ていた長林が起きたに気付かなかったことを指摘されると恥ずかしそうに俯く。長林は鶴望兰の顔に手を添えそっと上を向かせ、鏡の中の緊張して表情を固くする鶴望兰を見てくすりと微笑む


「うん、おばさんは良いところに連れて行ってくれたね。きれいに整えられていてよく似合ってる。最近は良く寝れているみたいだね?顔色が明るくなってる」

「はい、おかげさまでしっかりと寝ることが出来ています」

「それは良かった。寝癖は自分で直したのかい?」

「はい。その…なにかおかしな部分があるでしょうか」

「全く?ちゃんと可愛く身だしなみを整えられてるんだから俯いてたらもったいないだろう?」


笑いながら軽く頭を撫でた後長林は立ち上がって布団を片付けに行った。鏡の前に残された鶴望兰は撫でられた頭を押さえて長林の背中を呆然と見つめた。


 その後長林が時計のゼンマイを巻いている時も、朝食を用意しているときも、鏡の前で身支度を整えている時も、鶴望兰は部屋の隅で黙り込み、長林と頑なに目を合わせようとしなかった。


「あー…姑娘…?私なにかしたかな?ずっと目を逸らしてるけど…」

「いえ、何も」

「そっかぁ…」


そっけなく返された返事に少し項垂れるも、ぐっと立ち上がり鶴望兰に手を差し伸べた。


「ほら、行こう?今日は孫少佐に呼ばれていたんだろう、早めに出なきゃ遅れてしまうよ」

「了解しました」


鶴望兰は長林の手を取り立ち上がると、二人で家を出て少し離れた軍の本基地を目指して歩みを進めた。

 軍の入口の門を通り抜けると棟を分けるT字型の通路で二人は別れた。


「姑娘は東3棟方面だったね。ついていこうか?」

「大丈夫です。何度も訪れた事があるのでご心配なさらないでください」

「そう?まあ姑娘がそう言うなら…」


長林は不安そうに眉を寄せながらも鶴望兰を見送る。一回も振り返ることなく進む鶴望兰の後ろ姿を見ていた長林はため息を付き「心配し過ぎか」と呟いて東3棟とは反対方向の西2棟に進んだ。


 鶴望兰が孫との報告会のための部屋への道中で向こうから铭睿が書類を抱えながらあくせくと歩いてきた。铭睿が鶴望兰の姿を視認すると道を塞ぐように立ちはだかった。


「ちょうどよかった、孫少佐から伝言を預かっている。お前はH862であってるな?」


変わらず高圧的な態度で見下すような目つきで鶴望兰を見る。密かに歯を噛み締めながら小さく頷くと铭睿は顔をしかめて舌打ちをする。


「っち、なんだその態度は?少し劉伍長に気に入られているから調子に乗りやがって。半鬼如きが俺を蹴落とすだなんて随分と偉くなったものだな。どんな手を使って劉伍長に取り入ったんだ?」

「自分は何もしておりません。全て長林のご厚意によるもので」

「長林?っは!下の名前で呼ぶだなんて親しげじゃないか!まるで恋人、いや」


铭睿は下卑た笑いを浮かべる。


「劉伍長がお前のような貧相な家畜を相手にするわけ無いか。お前が無理やり迫ったのか?つくづく卑しいやつだ!もはや鬼という言葉も勿体ないぐらいだな!」


ゲラゲラと笑う铭睿に動じることなく、鶴望兰は手に込めていた力を抜くと冷静な眼差しで铭睿を見据える。

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