処分
「半鬼、か…私は軍で初めて聞いたが天与礼者を指す言葉らしいな。それを礼者の前で堂々と口にするのも君が普段どのような振る舞いをしているのか目に浮かぶ。我々が守るべき市民の中に助けを求める人がいる。仮にその人が礼者であれば君たちは助けないつもりかな」
小さな子に問いかけるような口調で三人に問うと、繁许はうろたえながら否定し、阿霖は繁许に同調するように頷く。唯一、铭睿だけが違った反応を見せた。
「上官、お言葉ですが天与礼者は人に含まれませんよ。人あらざる力を持つ奴らをどうして人民として数えて助けなきゃいけないんですか?」
肩をすくめて薄笑いを浮かべる铭睿の言葉に長林は眉をひそめ、厳しい視線を送る
「なんともな言葉だな。本気で言っているのか」
「もちろん、他の班と行動を共にするうちに気づかされたんですよ。天与礼者は人ではない、人で無いものは所詮道具に過ぎない。なら我々が有効活用すべきでは?」
「それが君の選択なら、私も自分のすべきことをするまでだ。朱铭睿、君の次の勤務日は明後日だったが、来なくていい。周りの考えに合わせ、自分で考えを持たないどころか、命令にも従えない無能はこの5番隊にはいらない。いい機会だから他の者もよく聞いてくれ。私が横暴だと思うならそれでもいい、だが王大佐にも許可をいただいている試みを拒む者がいるなら私に申告してくれ。他の隊に移動できるように取り計らおう」
ため息を付きながら長林は鶴望兰に顔を上げるように言ったあと、5番隊所属を意味する帽子を铭睿から取り上げた。帽子を取り上げられた铭睿は焦った表情で長林に一歩踏み出す。
「ま、待ってください上官!まさかたったこれだけで罷免されるおつもりですか!?」
「たったこれだけ?冗談はよせ、君が班での行動から外れて好き勝手していることは報告されている。規律からはぐれてしまったのは君だ。君の発言だけが全てじゃない」
「だとしても私が今まで残してきた功績は?上官の役に立っていたはずです!市民だって…!」
「君がここに来る前の隊は実績重視だったのかもしれないが、私は実績だけでなく協調性や人徳も見る。力ばかり振りかざしてふんぞり返っているだけでは私を押しのけることは出来ない。だが君のこれまでのことも鑑みて除隊にはしない。来週からは8番隊に行ってくれ。ああそれと、次からは勤務先が東3棟だから間違えてこちらに来ないように」
冷たく言い渡された実質的な左遷に铭睿は顔を歪ませ八つ当たり故か長林の後ろに立って困惑したような表情を見せる鶴望兰を睨みつける。
その視線に気づいてのか長林は体の重心をずらし、铭睿の視線から鶴望兰を隠した。
「ここからは元同僚として助言だけど…君はつくづく軍に向いていない。周りの期待がどうとかっていう話はわからないわけじゃないけど、根本的な性格の問題だろう。私も自分が向いているとは思わない。でも君は軍にいればいる程自分の首を絞めている。何かしら理由をつけて自分から軍を出たほうがいい」
そう言って自然な動作で後ろを振り返ることなく帽子を鶴望兰の頭に乗せた。その様子を見て思うところがあったのか、铭睿は険しい顔で口を開こうとするのを制して長林は出口を指さした。
「出口は向こうだ。移動報告書を書くために早く行きなさい」
铭睿はギリッと音が聞こえるほど強く歯を噛み締め、荒々しく部屋を出ていった。それを見送った後長林は深く息を吐いた。
「私が伍長として頼りない、私の指示なんぞ聞けるかと思ったら言ってくれ。後任の目星はついてる」
眉間をもみほぐしながら部屋にいる全員に聞こえるように言うと阿霖が代表するように一歩前に出る。




