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落陽の瞳  作者: Hozuki Rui
16/55

遭遇

王は少し考え込んだ後頷き紙を取り出しサラサラと何か書き始めた。


「では私の許可証を預けておこう。私自身に人員移動の権限はないが一定期間内であればこの紙を見せれば大抵は黙るはずだ」


差し出された紙を受け取った長林は驚いたようにまじまじとその紙を見つめ、一礼して懐へしまった。


「ありがとうございます。他に王大佐から何かご要件はございますか」

「天与・後方部隊の盟雲が来月に彼女を連れてくるように言っていた。それについて何か知っていることはあるかね」


ちらりと黙ったままの鶴望兰とその前に置かれた茶菓子を見て再び茶に口をつけた王は視線を鶴望兰に向ける。

 王の視線を受けた鶴望兰は顔を上げ、口を開いた。


「発言してもよろしいでしょうか」

「続けなさい」

「恐らく2ヶ月に一度の面談でございます。先天礼部隊に所属する礼者は必ず一定の周期で孫少佐どのに呼ばれ、軽い報告会のようなものをいたします」


鶴望兰の話を聞いた王は片眉をあげて訝しげに考え込む。長考の末、王は「そうか」とだけ言うと再び茶に口をつける。何を言われるのかと鼓動を早めていた長林と鶴望兰はホッと息をついた。


「む、もうこんな時刻か。長々と引き止めてしまったな、帰って構わない」

「はい、では失礼いたします」

「失礼いたしました」


先に席を立った長林に習い、鶴望兰も深々とお辞儀をして部屋から出ていった。

 2人が出ていったのを確認した王は鶴望兰の前にあった菓子に手を伸ばし、まじまじと見てから一口かじる。ゆっくり何かを確認するように咀嚼して首をひねった。


「味に問題はない…」


ポツリと呟いて再度首をひねった。


 王の部屋から出た長林は長いため息を吐いて肩の力を抜く。


「いやぁ…緊張したねぇ姑娘」


のほほんと力なく言う長林に、鶴望兰はコクリと頷いて返す。


「このあと少し私の所属する部隊に寄って行こうか。顔合わせや、ちょっとした説明もしなきゃだしね。その後は」

「お!長林じゃん!?ひっさしぶりだな!」


後ろから名前を呼ばれたのとほぼ同時に長林は見たことがないほど顔を顰めた。


「…良然…最っ悪だ…」

「なんだよ素っ気ねぇなぁ同じ村出身の古い仲だろ?ってお前まだ大姐の真似してんの?飽きねぇなお前。大姐が死んでからもう」

「っ良然!」


突然長林が大声で良然の言葉を遮った。


「なんだよ、急に大声だして…ん?隣のそいつ誰?」

「っえ、」


まさか自分に水を向けられるとは思わなかったのか目を白黒させる鶴望兰に構うことなく、ジロジロと見る良然。その視線を遮るように少し体をずらした長林を押しのけて、良然は鶴望兰の頬を掴んで何かを確認するかのように様々な角度で鶴望兰を見る。

 無遠慮な良然を鶴望兰から引き剥がし間に割って入ると額に青筋を浮かべた長林は良然を睨みつけた。


「っおい!いい加減にしろこのイノシシ野郎!お前はまだそんな子どもみたいな態度なのか!?少しは成長したらどうだっ!お前のそのイノシシみたいにやたらめったら鼻先を突っ込みに行くところが俺は昔から大っ嫌いだ!」

「あーそうそうそれそれ!こんなチビのときから大姐の後ろをカモみてぇについて回って澄まし顔してると思ったら喧嘩になると婆さんが腰抜かすくらいに口が達者になる!いやー懐かしいな!」

「何がだ!とっとと離れろ!」

「そんな威嚇すんなって。なんでそんなカリカリしてんだよ」

「お前の無神経さが原因だといい加減気づけ!」


鶴望兰を背に隠し、目を細めて怒る長林を良然は笑っていなす。


「そうそう、後ろのそいつどっかで見たことあんなーって思ってたんだよ。悪ぃ悪ぃ、ようやく思い出したわ!将軍にもよく言われるんだよな、お前はちっと物覚えが遅いなって。いっけね、まーた話逸れちまったわ」

「おい黙れ、それ以上言うと痛い目に遭うぞ」


長林の静止も虚しく。身を強張らせる鶴望兰をスイッと指差し、青ざめる彼女に構わず良然は笑いながら続ける。

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