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第五話 歴史改変の下準備だ


この頃の父、近衛篤麿は既に貴族院議員であり、仮議長という重責を担うと同時に、二条基弘らと『三曜会』という団体を立ち上げて、松方内閣の藩閥政府(はんばつせいふ)と対決色を鮮明にしている。


藩閥政府とは、明治初期から続く薩長土肥(さっちょうどひ)の出身者で固めた政治体制で、議会で多数を占める政党が政治を行うべきとする政党政治とは逆の政治体制だ。

父は政党政治を志向しているということで、つまりは時代を先取りしているわけだ。


だが本格的な政党政治は、1918(大正7)年に原敬(はら たかし)が政党内閣を組織するまで待たねばならないが、父の方向性はかなり開明的と言えるだろう。


それは大歓迎なのだが…


明治時代の日本人は血の気が多いイメージがあったが、やはりその通りみたいだ。

貴族院だからと上品に振る舞っているばかりでなく、かなり戦闘的な人が多いらしい。

まあこの時代は、そもそも口喧嘩だけではなく、意見の対立から暴力や刃傷沙汰や暗殺も珍しくない物騒な時代だからな。


近衛家に出入りしている客人も、その部類に入る人達が多く、熱い志があると言えば聞こえは良いが、俺の目から見て、怪しげな人も結構いる印象だ。

贔屓目に見ても玉石混淆といったところか。

そんな人達が、連日連夜我が家に押しかけては熱い議論を闘わせている。


これは世界全体が弱肉強食の時代で、少しでも油断すると喰われてしまうという、いわば戦国時代の世界拡大版といった時代だからしょうがないかもしれない。

平和ボケしていた、昭和後期以後の日本とは違うのだということを思い知らされた気分だ。


しかし「いいとこのボンボン」で、「世間知らずのお人好し」である父はやはり少々心配だ。


俺から見て、父は人を見る目が無いのではと心配する。

また心根が素直で、あまり人を疑わないように見えるのも問題だ。


そもそも近衛家は、天皇家に最も近い臣下なのだ。


文麿など、昭和天皇の前で足を組んで椅子に座ることが許されていた唯一の存在だった。


武士が政治権力を握っていた江戸時代ならともかく、今の時代は近衛家に対する世間の評価は極めて高い。


それほどの権威がある超名門だからこそ、当然利用しようと近づいてくる有象無象のなんと多いことか…

これは父の忌避を買う恐れはあるが、なんとか皆さんが進む方向を変えたい。


そこで、客人達が何を主張しているのか探るため、父の許しを得て同席させてもらっている。


最初父は子供を入れるのを渋っていたが、「将来近衛家を継いだ時に困らないよう、大人の方達がどのような考え方をしているのか早めに知りたいのです」と頼み込み、許しを得て、部屋の片隅で意見を聞いて、俺の持っている知識と照らしあうと同時に、大陸進出思想を持つ危険人物の洗い出しを続けている。


何となく、父も俺の今までの行動を見て、俺は普通の子供ではないと理解してくれているようで何かとやりやすい。


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