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第四話 早速バレる


さて、これから起きる重大事件と、その時の俺の年齢を並べて今後の方針を考えてみよう。


1894年(明治27年)  8歳 日清戦争


1895年(明治28年)  9歳 下関条約 三国干渉


1902年(明治35年)  16歳 日英同盟


1904年(明治37年)  18歳 日露戦争 父の死に伴って近衛家継承


1905年(明治38年)  19歳 ポーツマス講和条約


1907年(明治40年)  21歳 日露•日仏協商条約


1914年(大正 3年)  28歳 第一次世界大戦勃発


1919年(大正 8年)  34歳 パリ講和会議とベルサイユ条約締結


1921年(大正10年)  36歳 ワシントン海軍軍縮条約と四カ国条約、日英同盟破棄


1923年(大正12年)  37歳 関東大震災発生


1929年(昭和 4年)  43歳 世界恐慌発生


1931年(昭和 6年)  45歳 満州事変


1932年(昭和 7年)  46歳 五・一五事件


1933年(昭和 8年)  47歳 国際連盟脱退


1936年(昭和11年)  50歳 二・二六事件


1937年(昭和12年)  51歳 日中戦争開始


1939年(昭和14年)  53歳 第二次世界大戦開始


1940年(昭和15年)  54歳 日独伊三国同盟締結


1941年(昭和16年)  55歳 真珠湾攻撃


主な出来事だけ並べたが凄まじいな。

改めて波瀾万丈で、激動の時代だったと思う。

しかし、人間の起こす出来事が大半である以上、予防なり回避なりの策を事前に行えば対処できる。


関東大震災については、発生直前に国民の避難を実行出来れば被害は最小限で抑えられる。

こちらは発生日時が明確だから、より対応は簡単だ。


しかしAという事態は回避しても、それをきっかけとして史実にないBという事件が発生し、さらに別のCとDが起きることなんて簡単に想像できるから要注意だ。

いわゆるバタフライ効果というやつで、時間が経てば経つほど修正不可能な状況に陥るだろう。


具体的には関東大震災の被害を史実よりも軽度に抑えると、史実では死んだはずの人物が生き残り、予測不能な結果になるというわけだ。


だから日本にとって都合の悪い史実を潰していくのでなく、理想とする着地点を決めることにする。

つまりグランドデザインを決めて、それに向けて日本と世界を導いていこうと思う。


そのグランドデザインとは「大陸進出をやめて海洋国家を目指す」という内容だ。


ではいつ頃から改変作業に入ることができそうか?

おかしな子供と思われても、有力者とは速やかに交流を開始すべきだ。


しかし本格的に活動できるのは近衛家を継いでからだが、それは日露戦争開戦直前に父が死んで以降となるだろう。

翌年のポーツマス条約には少なくとも影響力を持ち、日露戦争後に大陸へ深入りする前に日本の進路を軌道修正させたい。


そんなわけで早速行動だ!

などと考えながら、先ずは小学校に通いつつ、家の蔵書を読み漁ることを始めた。


とにかくこの家には国宝級の書物が山ほどあり、京都から東京に転居した時にきちんと分類できておらず、書庫には古文書から手紙類から和歌の類まで、まさにうず高く積もっている状態だ。


令和においても、専門外の俺でも知っているほどの有名な書物や日記は多かった。

一例を挙げると以下の通りだ。


・後二条殿 記 近衛家の歴代当主が書き継いできた日記で、国宝に指定されていた。


・猪隈 関白記 これも近衛家の当主が書き継いできた日記だ。


・知足院 関白記 近衛家に関わる重要な記録をまとめた日記で、重要文化財に指定されていた。


・近衛家 所領目録 近衛家の所領に関する目録で、室町時代のものが残っており、これも重要文化財だった。


その他にも重要な日記や書物が多数あった。

特に興味を引いたのが、あの「本能寺の変」前後のいきさつだったのだが、これは俺の専門外だし、これからの方針に影響を与えるものではなかったので読み飛ばした。


とにかく、それらを片っ端から読み込んで頭に叩き込む。


同時にテーマごとに書籍の分類も行う。

これは学者時代の習慣だったからだが、そんな事を半年ほど続けているうちに、徐々に周囲の人達に何をやっているか気付かれ始める。


最初は単なる遊びで、書庫にこもっているだけだろうと思っていたらしいが、どうも本当に読んで理解しているらしいとなってちょっとした騒ぎになってしまった。


しかも仕訳が的確であるのが決定的で、「文字が読めるごっこ」ではなく、確実に文字が読める認定をされてしまった。

家人を通じてこのことが父に伝わると、気味悪がるどころか狂喜乱舞の有り様で「我が家の長男は麒麟児だ」と大喜びされた。

ここはとても不思議に感じた部分だ。


だが、俺は「父」の意識まではコントロールできないし、なぜ都合よく解釈してくれるのかもわからない。

まぁ『つかみOK』といったところか。


単純な父でよかったが、だからこそ有象無象の人たちに利用されるお人好しだとも言えるのではないのか。


これは悪い兆候かもしれないと思うようになった。


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