表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/200

第二十話 日英同盟成立!


それからしばらく経ったある日、帰宅した父が珍しく血相を変えて俺のところにやって来た。


「高麿よ!本当にイギリスから同盟の打診が来たぞ!これからどうなる?どうすれば良い!」


俺は占い師じゃないが。


「落ち着いて下さい。条約締結を粛々と進めましょう。

同盟を結んだとしても、ロシアは撤退する素振りを見せるだけで、結局は満州に居座り続けるでしょう。

いよいよ、ロシアと雌雄を決する時は近付いています。

軍部の体勢は整っていますか?」


なんだか俺も、半分占い師みたいなことを言ってるな。


「海軍は、連合艦隊の戦力増強と猛訓練によって、いつでも開戦は出来るとの話だが、陸軍の準備が出来ていない。

武器弾薬が不足しているのだ。

戦費が足らん!まずは資金をなんとかしないと開戦できない」


やはりそうなるか…

であるならば。


「国内だけで戦費を賄うのは、もはや無理があります。

海外公債を発行して資金を集めましょう」


「やはりそれしか手段がないか…

外国に頼るのは可能な限り避けたいし、債券を買ってくれるかどうかわからないが」


「もはや外債以外に道はありません。

日銀副総裁の高橋是清という方を派遣なさっては如何ですか?

すごく有能な方らしく、今回の任務向きですよ」


これも何となく占い師っぽいな。


「そうか。小村外相(小村寿太郎)にも相談してみよう」


呆れるくらいスムーズだが、ここから真剣勝負だ。


「つきましては、私も同行させていただけませんか?

留学には少し早いとは思いますが、アメリカとイギリスの状況を見ておきたいのです」


これは嘘だ。

目的は別にある。あの人に会いたいのだ。


「う~ん。私は構わないぞ。これも小村外相に相談してみよう」


よし!いよいよ彼に会えるかな?

それにいよいよ世界に影響を与える機会が来た。

頑張ろう!


その後、日英で協議ののち、史実通り1902年(明治35年)1月、日英同盟が締結された。

内容については史実のままだが、念のため触れておくと、日米安全保障条約との最大の違いは、「大人同士の対等同盟」である点だ。

即ち「日英双方(・・)はどちらか一方が、どこか一国を相手に戦争した場合は中立を守り、敵が二国以上となった場合は、同盟国を助けて参戦すること」が明記された。


奇しくも露仏同盟も同様の内容であった。


だから、仮に仏が露を助けて日本に宣戦布告した場合、自動的に英国が参戦することになり、一気に世界大戦へと発展するリスクをはらんでいた。


むろんこの場合は、ドイツ皇帝は大喜びすることになるわけだが、英仏ともそこは百戦錬磨の外交上手だ。

裏で英仏秘密協商を結び、ドイツを喜ばせないよう手を打った。


完全に余談だが、日露戦争中にモンテネグロ公国という小国が、ロシア側に立って日本に宣戦を布告してきたが、日露双方ともこれを無視している。

理由は今まで述べた通り戦争が拡大するからだ。

どちらからも相手にされない、小国の悲哀…

たしか平成の国会答弁で、これが話題になったことがあった。


それはともかく、日英同盟成立後に父は帝国議会で大演説をぶちかます。

要約すると「日英同盟があっても、ロシアは軍を退く素振りは見せても決して退かないだろう!

しかしこれで世界を味方にした!

もはや恐れるものは何もないのだ!

そして今こそ仇敵である大陸国家ロシアの野望を挫き、地政学リスクを振り払い、皇国の威光と正義を世界に示す時だ!

海洋国家である我が国は、同じ海洋国家である英米との協調路線を歩み貿易立国を目指そう!」


更に父は閣議にも出席し、戦争勝利後の樺太獲得と朝鮮半島はイギリス領とし、日本は通商権のみを獲得する方針を主張し支持された。


これに陛下も政府も賛意を示し国家の方針が固まった。



さすが近衛篤麿。

お見事な中央突破作戦だ。

とてもじゃないが俺には無理だ。

相当根回しもしたみたいだし、ほぼ誰も反対しなかったそうだから恐れいる。


しかし議会演説時に、地政学という言葉を連呼している。

議会の議事録に残るし参ったな。


俺がいつぞやうっかり「地政学においては…」と言ってしまったみたいで、父は聞き漏らさずしっかりインプットして学習したらしい。

しかもその概念をほぼ正確に把握して自分のものにしている。


それだけじゃなく、陛下をはじめ政府要人や財界要人にまで地政学の概要と、それに基づく日本の最善の針路を説いて回っていたらしい。


その上での大演説だった。


こうなれば、父の名前で正式に本を出して世界に広めようか。


マッキンダーさん、ハウスホーファーさん。

申し訳ない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  あくまで目的は共産主義との戦いと定めて、科学技術やら経済やらにはほとんどノータッチ方針なのが面白いですね。この先いよいよ本格的に史実とずれてきそうです。どうなるか楽しみ。
[一言] ふと見つけて読み始めたら止まらなくて一気読み。。完了 続きも期待して待ってます!!
[一言] 良いですね、お金が無かったり工業力はまだ低いけど、でもまだ出来る事はある! って感じで。NYで株式投資で儲けて、有望な鉱山や油田を買って、第三国を通じて日本に安く資源を送ってくれる人いないか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ