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ギルド名

 リンから報告を受けた後の協会の対応は早かった。ちょうど事情聴取中であったギルドの幹部にギルドの解散命令をたたきつけ、幹部数人をダンジョンから出禁にする措置をとった。そして、この事件はその日の夕方には街中に翌日にはダンジョンの最前線であるキャンプ2にも知れ渡ることになる。なおその過程で、すでにダンジョンに潜っていた【神速の猛狼】の幹部を含むパーティがキャンプ2に数日間立てこもる事件が発生したがキャンプ2に滞在していた上級ヒーラーがブチ切れたことによりパーティは壊滅、全員拘束されることになった。




「ということで事件は終息に向かっているようです。」




 解散命令が出た翌日、つまりレインがマロンを助けた2日後の夕方、レインが協会に顔を出すとようやく事件の後処理から解放されたリンからレインは報告された。この報告の後にキャンプ2で立てこもり事件が起きているという報告を聞いて協会はまた忙しくなるのだがそれは別の話。




「こっちもようやくダイアウルフを討伐できたのであとはダンジョンが落ち着くのを待つだけですね。」




 その間にレインはもう一つの問題であるダイアウルフの討伐に乗り出していたのだがダイアウルフが階層のかなり深い位置まで潜り込んでしまっており、ダイアウルフの存在により狂暴化した他の魔物たちの対応もしながらの討伐であったため、かなり時間がかかってしまっていた。




「こっちもなかなか手が回らずほぼ一人で任せてしまってすみませんでした。」




 フロストオウルが7階層に出現したという情報はリンが手腕を発揮した結果、発見翌日にはすでに発表され調査クエストも手配されていた。同時にダンジョン内の環境が一時的に変化している可能性があるという注意喚起もなされていたため、本来7層を探索する実力の冒険者たちがリスクを回避するために探索階層をより上層に移してしまっていた。


 そのことも影響してレインが一人で倒さないといけない魔物の数も対処しないといけないリスクも上がってしまっていたのは事実だ。普段のリンならばその分をより上級の冒険者に様子を見る様にと雑談中にしれっと促したりするのだが今回はそういう努力をする時間が取れなかった。リンはそれによりレインの負担もリスクも増してしまったことが分かっているからこそ力になれなかったことを悔やんでいた。




「今回はしょうがないですよ。協会が忙しかったのは知ってますし、あの状態で他のことまで手を回すのは難しいですよ。それに7層くらいの敵なら俺の能力があれば何かあってもいくらでも対処できますし。」




 どんなに手練れの冒険者でも油断や不慮の事故で上層で亡くなることは珍しくない。とはいえ、魔眼を持っているレインにとっては安全に細心の注意を払いながら戦うだけの余裕があったし、ダイアウルフがいることでイレギュラーが発生する可能性が高いことを理解しているレインにとっては普段の探索よりもむしろ事故にあうリスクは低かったと言えよう。




「それとこれ、彼女のパーティの分のネームタグと落としてきたと思われる杖。本人に渡しといてもらえますか?」




 レインが取り出したのは冒険者がダンジョンで死んで顔がわからなくなっても身元の確認ができるようにつけるネームタグとマロンが剣の代わりに落としてきたと思われる片手持ちのワンドと呼ばれる魔法杖。リンはネームタグを確認して杖も受け取った。




「拾ってきてくれたんですね。ありがとうございます。それで1つご相談なんですけど今度手が空いてる時でいいので一度マロンさんと話す機会を作っていただけないでしょうか?」




 リンにとって今のマロンは昔の自分と同じような境遇だった。しかもマロンにとっては所属していたギルドに裏切られるというおまけつきで。マロンにとってレインが命の恩人であることは考えるまでもない。だからこそ感謝の言葉を伝える機会を与えてあげたいとリンは思った。




「わかりました。それならなるべく早い方がいいですよね。こっちはしばらくギルド設立でダンジョンに籠る予定もありませんし向こうの都合がいい時が分かったら教えてください。」




 レインもリンの意図を察して了承する。ダイアウルフの件も解決しダンジョンに急ぎの用がなくなったレインはしばらくギルドのメイン拠点になる場所を物色するために街を歩くつもりだった。だから時間の都合はいくらでも調整できた。




「そう言っていただけると助かります。そしたら、こちらで日時を調整してお伝えしますね。それとギルド設立の資料は明日までに揃えておくので名前と拠点、考えといてくださいね。わたしも入ることになるギルドなので相談には乗りますし。」




 ギルドを設立したとしてもメンバーが集まるまではそれほどやることは無いので忙しくなるまでリンは協会の仕事をしながら個人的に手伝う方針になっていた。




「一応、名前は考えてあるんです。【栄光の銀翼】、リンさんが入ってくれるのならこの名前がいいかなと思いまして。」




 リンは元々貴族の出身だ。リンの家は爵位こそ高くなかったが優秀で歴代の王家に重宝される一族だった。そんなリンの一族の家紋が『光の銀翼』だった。




「わたし個人としてはその名前を使ってもらえるのは嬉しいんですけどギルド名としてその名前を使うのは問題になるんじゃ。」




 リンは複雑そうな表情を浮かべながら言う。




「大丈夫ですよ。明らかに無かったことになってる貴族の家紋が元になっていることがわかったところで貴族どもは問題にできませんから。」




 裏方として王家を支えていたリンの一族は貴族たちの権力争いに巻き込まれる形で存在そのものを歴史から葬られることになってしまった。そんなこんなでリンはこの街に流れ着いて冒険者になった経緯がある。レインはそれを知っていたからこそこの名前を提案したのだ。




「まあリンさんさえよければですけど。」




 とはいえリンが使ってほしくないのならレインはこの名前を使うつもりはなかった。


「いえ、つかっていただけるのはすごいありがたいことなのでぜひ使って欲しいんですけどレインさんにご迷惑をおかけしないかと思っただけで。」


「なら問題無いですね。正直、ギルドのエンブレムとかもそのうち考えないといけないので元になる絵があると助かるんですよ。」




 シルバーランク以上になるとギルドのエンブレムを作ることができる。その制作の過程で揉めるギルドもあったりするのだが事前にある程度決まっていればその心配もない。




「それならうちの家紋もそのまま使っちゃいましょうか。どうせ、存在しないはずの家紋ですし。」




 もはや吹っ切れたリンがそんなことを言い出す。こうして、レインの作るギルド名は【栄光の銀翼】に決まった。

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