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灰色のバックソード  作者: Hegira
第七監
89/95

再生ウェイクアップ

「殺される前に、やり残した事はあるか」

「あと五分だけ寝させて」


 ……あーあ、ダメじゃん。折角直りかけてたのに。

 そーだぜ。何やってんだよ。バグが残っちまったじゃねえか。

 私なんか、組み合わせるとひどい事になるんだから、絶対に明言したらダメなんだからね。

 俺なんか、一発ネタだしよ。今の所。

 まっ、使い物になるから取り合えず良いんじゃない?

 それよりもまず、死なれたら無意味だけどな。

 だから、さっさと起きろ――


   ////


 何だか妙な痺れと共に意識が回復し、真っ黒だけど真っ暗でない、変な空が視界を埋める。

「………………っ!?」

 弾けるように上体を起こし、次に姿勢を改めて周囲を警戒する。

 何でこの状況で僕は寝ていたんだ?

 我ながらどういう神経だ。

 とうとう僕は笑えないレベルにまで至ってしまったというのだろうか。

 いい加減死んでもおかしく無いぞ?

 ……。

 でもなあ、寝ずの番とか、寝込みへの奇襲に対抗できるなんて器用な真似、僕はできない人間だから、これは諦めるしかないか?

 それとも、こんな状態で寝るなんて、もっての外な事をやれるのだろうか、僕が。

 まさか、

「実はこれが胡蝶の夢で――」

 という、ハッピーな妄想は次の瞬間儚くも打ち砕かれた。

「お目覚めでございますか、ご主人」

 ……やっぱり僕はまだ妄想の中にいるんじゃないか?

 打ち砕かれたのは、僕の常識ではないだろうか。


 紫苑色(しおんいろ)


「……何やってんの? 荒井」

 荒井、雲雀。

 いかにもスポーツ系の、飛び回りそうなくらいに元気な中学生……ではなく、実は一つ下。

 探偵。

 餌に弱い。

 その荒井が、立て膝を突いて僕の方を向いて……いなくて、目線を下げている。

「いえ、最近の従者はこういった言葉遣いかと存じ上げておりますが、何か気に障られましたか?」

 いや、全然障ってないけどさ、でもそれは気持ちの上だけでの話で……。

「どういう風の、吹き回し?」

「そう言われましても……ここは〝そういう場所〟なのではないのですか?」

 そういう場所?

「よく分かんないけど……つまり、お前がここでメイドごっこを演るのはあくまで仕様、ということで良いのか?」

「メイドもごっこも心外ですが、ご主人がそう言われるのなら私に異存はあってはなりません」

 何だそのルール。

 無駄に僕の精神に悪いぞ。

 さて、そろそろ読者の疑問に沿わねば。

 しばらく休載してただでさえ状況が悪いというのに、これ以上の引き延ばしは自殺行為としばらくは心得ておかないと見捨てられてしまう。

「Q1.あなたは色採ですか?」

「A1.いいえ、命彩です」

 へえ。

 ……へえー!

 心底驚く。

 びっくりする。

 しかし、あっけらかんとしてるなあ、こいつ。

「Q2.あなたの目的は何ですか?」

「A2 .私の目的はあなたの保護です。言い換えれば、あなたに降りかかる万難を排するのが優先事項です」

 わあ、安心する。

「Q3.それは誰に命令されたのですか?」

「A3.あえて言うならば、恩義に、という事になります」

 誰なんだろうな。

「Q4.回答の真意が掴めないのですが?」

「A4.仕様です」

 ハイスペックだなあ。

 ……まあ、この辺でいいだろう。

「Q5.最後に、あなたの格好を自分の言葉で説明してもらえないでしょうか」

「A5.はい、私の格好はカッコイイ武道着です。上も然る事ながら下のイチゴ柄が個人的には最高です」

「誰も下着の話をしろとは言っていない!」

 ちなみに上の白に藍色の袴という、ある意味普通の装いだ。

 しかし下着とはミスマッチしている(見えないけど、脳内補完が既に僕の中だけで変な世界を作り上げてしまっている)。

「ご主人の好みはその方向であると、私はリサーチ済みです」

「そんな文脈はどこにも無かったぞ!?」

 ただひたすらにひた隠しにしてきたというのに!

「A6.はい、私の得意分野は調査活動です」

「もうそのフォーマットは終わってるから!」

「そうですか。ではこれから如何いたしますか?」

 ここで僕はこの主従関係にツッコミを入れるべきだろうか。……いや、もう手遅れだろう、きっと。

 はあ。

 しかし居心地悪いなあ。

 僕はトレンドとか、腹の底では大嫌いだから、どうしてもこの辺のベタな設定はちょっと……。

 じゃあお前の好みは何なんだよと聞かれると、ちょっと答えにくい。

「じゃあ状況の把握からさせてくれ」

 敢えて開き直って、立場を有効利用する。

「かしこまりました。まずは何から聞かれますか?」

「番鳥はどうなった?」

「彼女も私が介抱しましたのでまず生存は間違いないと思われますが、狂ったようにして何処かへ跳び去ってしまわれました」

 ものすごくあり得そうな行動だと思ったのは僕だけだろうか。

 狂っているなりに、敵を追っているような気がする。

 いや、死を追っている、のか。

「どうして僕は寝ていた?」

「その案件は阿木本未遂の話をするのが早道ですのでそちらからお話します。彼女はいわゆる、睡眠で戦うスタイルを取っています」

 ……確かにあいつ、パジャマ着てたけど、本当にそのまんまか。

「睡眠で戦うというのは、人を眠らせたり、自分を眠らせる事で自分を有利な状況に持ち込んで、最後には永遠の眠りに陥れるという事です。何とも月並みな能力ですが、多少強い――つまり、弱いという事ですが――ご主人と違って、本物ですね。その力によって、ご主人は今まで眠らされていた訳です」

 的確に『多少』を使われたが虚しくなるのでスルー。

「はあ、それで立て続けに敵が襲ってきたりした訳だ」

「そうですね、普通の夢と違って『見ている人の思い通りにならない』ので、かなりの確率で目覚めないまま亡くなるようです」

 なんだそれ。

「…………」

 ……えっと、僕は死にかけてたということでいいのか?

 何気に恐ろしい説明を混ぜるな、こいつ(怖くて確認できない)。

「私がいればそれは無効に出来るのでその点に関してご主人が心配する必要はありません」

 そして、しばらく黙り込んだ。

 ……ああ、質問してたんだったか。

 これも仕様、か。

「今、敵はどこにいるんだ?」

「おそらくすぐに現れるでしょう」



 果たして、その予想は当たった。



「おー菓子いなー、ここ出刃っち理事んでると革新していたんだけど」

「生憎、運は悪いんでね」

「うーーん、酢尚に灰汁吽問王余」

「そこまでくると、デタラメに中国語を話してるみたいに見えるから止めろよ」

 悪運って言え。

「ほーら、渡し伝怒S寶」

「ついに旧字体に手を染めたか……」

 しかしアルファベットはそのままという無駄な親切心がついてきた。

「さーて、凝れ遺児ょう放すのも免仝出汁札里頃仕上王よ」

 面倒だったんだ……。

 音声はそんなにおかしな事言ってないんだけど、最下級に読み難い。

「ああ、始める前に、お前に少し言って置かないと」

「なー二?」

「ありがとう。怪我の功名って本当にあるみたいだ」

 お礼は言っておかないと。

「?ー」

 未だに分からないといった顔の阿木本。

 今に、思い知らせてやる。

「何とか〝形〟になったよ。あの形容し難い存在に崩された、僕の刀が」

 まあ、完全じゃないんだけど。

誰も突っ込まなかったけど、配色ミスでした(2/24現在)。

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