無粋キラー
粋な人殺しっていうのも大分おかしな話ですが。
そいつは道のど真ん中で状況をものともせず、横向きに丸まりながら眠っていた(なんか数ヶ月以上前に二人とか言った気がするけど、ストーリー上の要請で無しになったらしい)。
死んでいるように全く動きが無いのに、確実に死んでいない事が分かる。そんな寝姿だった。
「…………」
僕がどうしたものかと逡巡していると、横から番鳥がちゃっちゃかと出てきて、何処から取り出したのか、一部だけ丸く切り取られた木製の板をそいつの――阿木本未遂の――頭の下の部位にあてがい、
「ぎろぎろてぃーんぬ!!♪」
飛ばした。
……もう、Rー15指定になってもいいや……。
僕はそんな形だけの礼儀に付き合ってられる程お人好しじゃない。
「身も蓋も無い殺し方すんな!」
「やっぱりダメ?」
「物語的にダメだろ!」
その前に人としてどうかしている、とは言えなかった。
もし、人である事を放棄している、と聞いてしまったらどんな顔をすればいいのか。
「って言っても、多分『これ』、そんな事じゃ死なないだろうけどね。私が言うんだから間違いない」
「……首を切っても死なないって、」
僕じゃん。
まあこの物語に関して言えば、切られて死んだ人ってそんなにいないんだよなあ……。
「死なないって分かってたら、案外何でも出来るのよん」
なんか自信満々に言ってる。
「それとこれとは話が別だろう……」
首切りを正当化させてはいけないだろう。
僕は身を誤るつもりはない。
「さーて、そろそろ起きるんじゃないかな~?」
僕が目を向ければ、そこには映像化したら間違い無くスプラッタに分類されるだろう風景は既に無くて、一人、阿木本未遂が半眼でこちらを見ていた。
「非ーとの睡眠を蛇魔したの葉どこの同一人物?」
「そんな寝ぼけた台詞を聞かされたら衝撃的な目覚めを提供した側としては何とも浮かばれないねっ、統那君」
「僕を巻き込むな」
犯人は僕じゃない。
「あーっ、刀七くん、夜っと追い詰いて北んだね――あ、舞ってて、芽に松脂がちょっと」
「書き損じでただでさえ分かりにくいのに更に変な言い間違いを混ぜるな! 目が大変な事になってる!」
脂違い。
目に溜まるのは涙と鼻く◯だけだ(美しい国、ニッポン!)。
「こらこら、あんまりうるさく言うんだったら断頭台に連れて行くゾ♪」
「おまえが言うと冗談にならない!」
「もーう一回寝むって依異?」
「話が進まなくなるからやめろ!」
「いやあ、統那君は突っ込みに忙しいね~」
「おまえらがボケるからだ!」
危うくいつもの文量の半分を費やしかけた。いや、もう既に費やしたかもしれない。
「剃ーれ邪あ、お濁っこの攻犯戦を、恥めようよ」
……おお、順応早い。
「鬼退治は趣味じゃないんだけど、やるしかないか……」
それどころか、相手はパジャマ姿で戦意がかなり削がれるんだけど、やはりそれでもやるしかない。
「動ーうぞ、お先に欠かってきて依異よ」
「それじゃ……遠慮無く!」
ここで深く考えても意味はほとんど無いと思いながら僕は突攻した。
あと三歩でいけるだろうか。
と思っていたが、当ては外れた。
結果からすれば、届かなかったというのが一番的確なのだろうか。
「『似ーの舞為す獣状』」
そこから少しの間、僕には何が起こったのか分からなかった。
真っ直ぐに切りかかっていた筈なのに、気が付いたら腹に鉄拳の衝撃を貰って逆ジェットコースターの風景を味わっていた。
「有ーれだ米、反写真刑についての元気融はまだないん頼ね」
塀にぶつかり僕はダメージで身体が熱くなっていくのを自覚しながらようやく制御を取り戻し、地に落ち着いた。
何だか前にも吹っ飛ばされた様な気がするけど全然慣れない。もしかしてジャメヴだろうか。
「だ~か~ら~な~に~い~、っ~、て~る~の~か~わ~か~ら~な~、いん~だ~っ、~、て~」
所々に声に出したくない日本語があったけど、それらを気にせず描写すれば、番鳥が『~』の数だけ、五寸釘を金属バット以上に大きくしたような鉄杭を無闇矢鱈に投げつけた、のだ。
しかもそれら全てが向こう一面に圧力を掛けるように一斉に刺さろうとしていた。
しかし阿木本は顔色一つ変えない。
「夫ーっと、笹ったらど臼るの? 鬼仏存解在で売った得させ手もら紆余?」
既に未知の言語だった。
そんなどうでもよろしいことはともかく。
その時、あんまりな光景に僕は固まった。
「なっ……」
「いやいやいやはや、味な真似するねー」
占めて十九本、頭頂、片目、肩、胸に一本ずつ、四肢それぞれと腹にばらばらと三本ずつ。
さあて、どうなってんだろうね。想像もしたくない(ていうか、今更か)。
そんなのを僕は今見せつけられているわけだ。
「むぅ、現時点で最強の武器をぶつけてみたんだけど、やっぱりレプリカじゃ唯一無二の仕様には遠く及ぶべくもないか」
番鳥はさしてその態に傷付いた様子もなくマイペースに立ち向かい続ける。
「うーむ。仕方ない。……統那君、ちょっと贋作使うから失礼」
何だって? と思って、発声するまでの間にそれは行動に移された。
「一から四までΣを行い十全とせん、って感じでいいかな?」
合図と一緒に番鳥の手に現れたのは、緑青色の刀身に、形の崩れた波を湛えたような紋様を浮かべた――
「敢えて和えるなら、〝村雨・錆〟といったところでしょうねぇ、統那君」
……いや、知らないし。
申し訳は、あるって言えばあるんですが、学業です。
学業が苦行です。当たり前です。
取り合えず、今の自分の状態なら、適当な間隔での更新が出来そうだという判断で、再開致しました。
まあ、思い切ってこの章は諦めながらやっていきます。
これから更新の度にカレンダーとつき合わせて、その適当な法則に気づいた方だけ、次の更新が分かるはずです。もし分かっても、感想欄には書かないで下さい。他の人にばれてしまいますので。
また明日、とは二度と言わない、かも。