集団ワイルドファイア
「私はあなたを助けにきました」
「じゃあ自殺するのを助けてくれる?」
「これは……さすがに」
さっきの立ち回りの余裕はどこかに消えたのだろう、僕は今、圧倒的に怯んでいる。
僕は無双のキャラクターじゃあ無いんだけどなあ……!
一体今までどこに隠れていたのか、ざっと気配を探るだけでも百は下らないんじゃないかという数の、敵に遭遇した。
全員、どこか軍隊っぽい服装だった。
先の戦闘が終わって、靴を回収してから五分も経っていない。
「……ズルくない?」
答える者は、誰もいなかった。
いいさ、どうせ僕は友達が少ないんだからこのぐらいのネグレクト、何でもない!
……ゴホン。
ふざけている場合じゃない。
勝てないって。
どうするんだよ。
一対少数とか小数なら戦えるけど(小数は当たり前だろう)多数には勝てない。
そうか、これが民主主義の限界か。おまえらは僕に共産にしろと言うのか……違うって。多数決の話じゃないから。
うーん、大して面白くもない。
……はあ。
この辺で、腹を括るか。
「『今はまだ構想段階だからできないけど』、それを敗北の言い訳にするのは止めておこう」
歩みを徐々に加速させ、囲いの一点を切り崩しにかかる。
僕の視線に反応したか、一人目は取り出していた拳銃を三歩詰める間に二発発射したが、ぎりぎりの所で掠ったに止まり、あえなく切られた。
返す刀と言うか二の太刀と言うか、続け様に横にいた二人目を切り伏せる。
背中を丸めた姿勢で一旦落ち着く。
三人目は後ろから走ってきてコンバットナイフを逆手に持ち上から僕の肩か背を突き刺しにかかってきた。それを見るや僕は躊躇無く身体を捻りながら懐に飛び込み、紅を散らせる。
被さりそうになる体を跳ね除け、それを誰かに押し付け別の方向に、四人目五人目と切ってゆく。
六人目を見据えて駆け出そうと踏み込みをかけると、まだ大勢で囲んでいるにも関わらず横合いからアサルトライフルの銃口が覗いた。
反射的に膝を抜いて予測された軌道から逃げた五分の一秒後、弾丸が通り過ぎ、敵の味方に当たる。
撃った奴は無視し、当たった味方に僕とは反対に意識を逸らした七人目を真正面から縦に割る。
「……おい」
そこから空気が変わったのを感じた。
殺気のこもった威圧に射抜かれてそっちへ首を振ると、一人の男が二つの脚でしっかりと立ち、誘うように、しかし険しく睨んでいた。
。
生まれた一瞬の空白を縫って――まるであいつを連想するような――衝撃が胸の辺りを貫く。
「がっ、はぁっ……!?」
ダァン……!! という音が後から聞こえて、ようやくそれが超音速のライフル弾なんだと悟る。
場所は……あれか……。
未だに五パーセントの数も削っていないだろうに、この怪我は良くない。
どうやって切り抜ける……!?
まず目の前にいる勝機があるまで動こうとしなかった奴を切り裂きその後ろで退屈そうにしている裏で怪しげな性癖を隠し持っている変質者をスルーしたように見せかけて手首ごと拳銃を奪って乱射して戦局を乱すとおそらくさっきの威圧の持ち主がかかって来るから無視して他の奴らを切りながらライフルの使い手を追撃――できれば世話は無い。
吐血。
意図せず、足が止まる。
足元しか、見えない。
それを逃さず、ブーツの蹴り上げが、顔にめり込み、反動で足を軸にしたレバーのように身体が浮く。
二発、三発と、仰向けに倒れる身体に弾丸が胴体に穴を開けた。
地面に頭が当たる。
瞬間。
視界が閃いた。
別段、僕が何かした訳ではない。ぎりぎり自力で回復可能なラインをさまよっているだけだ。
自分の息遣いと五ヶ所の痛みと止む事の無い思考だけが、神経を刺激する。
しかし、それ以上の痛みはやって来なかった。
「…………?」
視界に被さる物は、何も無い。ただ、黒い空が見えるだけだった。
顔を横に転がす事で何とか状況の把握を図ると、そこにあったのは、無残にも(どの口が言うのか)煙を燻らせて倒れている、死体の山。
その向こうに、人が立っていた。
何故か逆光になっていて正体は分からなかったが、決して誰かのピンチに現れるヒーローのような体格ではなく、むしろ子供のように見えるぐらいに小さく見えた。
それは、僕に視線を向ける事も無く、再び閃きと共に消え去った。
少なめー。
コメントも控えめに戻してみようかな。
また明日。