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灰色のバックソード  作者: Hegira
第六連
78/95

形無バックソード

まあ、あえて無粋な真似はすまい……。

 帰宅。

 ……大分久しぶりに家の描写が出来る。

 玄関で靴を脱ぎ、そのまま洗面所で手荒いうがいを済ませ、廊下を進み階段を上がり、自分の部屋に戻り、最終的な金銭的ダメージを確認し……。

 いつもの光景でないことを、確認する。

 不審。

 自分の部屋を出て、隣の部屋の扉を開けて、階段を降りて、リビングへ突き進み、ダイニングを一周し、キッチンを確認して、母さんと顔を合わせて、トイレと風呂の方の気配の無いのをいよいよ怪しく思い、最後にあいつの居そうな所を当たる。

 いた。

「よう、僕の息子(ブレスチャイルド)

「キャラ作りは置いとけ。話がある」

「なんだい、反抗期? 高校生にもなって? 遅れてるなぁ」

「うるせえ。真っ当にゆとり教育受けた奴は反抗期なんてねーんだよ。それぐらい知っとけ」

「へえ、それは知らなかったな。いつの間にか学校は奴隷製造工場になっていたんだね。言い方悪いけど」

「そんなことよりだ。片那はどこに行った」

「刀? そんな物騒な物、家には置いてないなあ」

「しらばっくれるな。僕の隣の部屋を使っていた片那だ」

「ああ、片那ちゃん? あー、(ドーター)は昼間に引き取り手が現れて、連れて行っちゃった」

 連れて行った。

 連れて行った?

「はあ!? 何でそんないきなり――」

「そういきり立つなよ僕の息子(ブレスチャイルド)。物事にはタイミングってもんがあるだろう? 今日この日、こういう結末をたどるのは決まっていたことなんだよ」

 僕にはこいつの言葉が、およそ人の言う言葉とは思えなかった。

「なんだよその理屈……じゃあ何で僕にはその事を教えなかったんだよ?」

 あらかじめ教えておけよ。

 どうして予告無しなんだよ。

「それで君が納得するんだったら、僕はこんな幕の落としかたはしなかっただろうね」

「…………」

 だからって、これは無いだろう。

 別れの挨拶すら、無しかよ。

 もう、痕跡すら無いじゃねえか。

 何も残っていなかったぞ。

「重ねて言うよ、物事にタイミングは必ずある」

 タイミングって何だよ。

 順序はどうした。

 順番は守れよ。

「生まれるとき、泣くとき、触れ合うとき、育つとき、知る、あるいは受け継ぐとき、出会うとき、次へ繋ぐとき、生き抜くとき、別れるとき、そして死ぬとき。全部、必ずあるんだ。今日の午後、片那ちゃんがいなくなるのはきっと当然の流れだったんだよ」

 納得行かない。

 こんな、何でもないかのような別れなんて。

「……さてと、さっき言ったタイミングだけど、あれの内、もしどれかがないというのなら、そいつは人じゃない。ただの無駄だ。人生ってのは、そういうことだよ。蟻のように運んで寝て食うだけでもなければ、猿のように出世をすることでも、鳥のようにマイホームを建てることでも、犬のように趣味に邁進することでもないんだ。放蕩なんて論外だ」

 そんな話はどうでもいい。

 てめーの人生観なんて今聞いてるだけ時間の無駄だ。

 既に無駄にした時間ならそこにあったじゃねーか。

「まあ、簡単に言えば、『他人の役に立って、その結果自分を満足』させられればなんだっていいんだ。僕は研究者だけど、実は会社の意向には全く従っていない。僕が従っているのは、それによって金銭面ではない所で助かる人がいるかどうか、だけだ。それが結果的に利益になったりしているけど、そこで囚われちゃいけない。そんな栄光は捨てて、次へ向かう。まだ困っている人はいるからね。僕の人生なんてのは、その繰り返しだよ」

「……その話が、今どんな意味を持っているんだ?」

 僕が聞きたいのはそんな話じゃない。

 僕が聞きたいのは僕の納得できる話だ。

「さあね。人の説教じみた話を聞くのにいちいち理由を求める子供(ガキ)のような若人(わこうど)には分からないだろうね。悲しいけど」

「……ああそう」

 もういい。

 なら勝手にさせて貰う。

「あー疲れた。たまには真面目に生きてるところを見せないと親ってのはやってらんないよね」

 息子の前でそういうこと言うな。

「そうそう、片那……刀と言えば、だけど」

「……?」

「僕なりの解釈を教えておくと、『形無(かたな)』とも書けるって事は、分かるかな?」

「それぐらい、想像はついてるけど」

「いや、ついていないね。見れば分かるんだよ。この盆暗(ボンクラ)

「なっ……!」

「何を手を抜いているんだ? 本気出したときに誰かに上回られるのがそんなに怖いか? 最初から出来ないと決めつけているのか? それとも自信が無いのか? それともまさかとは思うが、やる気がないなんて最低最悪な罪に満ちた言葉を吐くつもりは無いだろうね? まさか『鎖で心を縛り付けられている』訳でもあるまいに」

 ……何だ?

 こいつは何を言っている?

「おもちゃを壊されたぐらいで腹を立てるなよ。また組み直せばいいんだ。そもそも刀なんて消耗品だろう? マシンガン数発で折れるんだから。そのために、僕は『形無』を付け加えたんだ。それを無駄にするなよ」

「……まさか、知ってるのか?」

「あれ、まだ僕の事、誰かから聞いてなかったのかい?」

「いや、興味無かったし……」

「あっちゃー。これじゃあ僕が父親(ファーザーペアレント)として形無しだね。ある意味これがセオリーなのかもしれないけど。まあいいや。とにかく、精一杯生きろよ。これが父親からの簡単なアドバイスだ」

しかし後書きはそんなの関係ねえ!(無粋なギャグ)


伝家の宝刀、予約掲載発動!(とはいえその判断が付く人はそんなに居ないでしょうが……)


さて、作者はというと、キリギリスのように趣味に生きているという自堕落三昧。

まあ、見事な反面教師ですな。


ここで、連想ゲーム。


反面教師。

反面漁師(消費者のことじゃねえか)。

仮面教師(これは似たようなのがいたな……)

仮免教師(教育実習生……?)。

暗黒面教師(これはよくニュースで見るし、普通だな)。


つまんなくなってきた所で、また明日。

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