罹患サマーコールド
……完っ全に個人的事情です。
明日ぐらいは生きてるはずですよねえ……。
夏休みのまた別の日の次の日。
帰り道。
電話中。
「あーあー、聞こえるかー。こちら四手ー。聞こえるかー打葉ー」
「聞こえるからそのまま続けていいぞ」
「こちらは今とても大変に平凡な状況だー。そちらはどうだー」
「こっちも、まあそうだな。いつも通りの日常的な光景が繰り返されているところだ」
「そうかそうかー。息災で何よりだー」
「お互いにな。さて本題は何だ」
「…………」
「何だ、無いのか。まあメル友よりは生に近い形で連絡を取っていることに文句は無いけどな。長時間話すと電話代が馬鹿にならない点を除けばな」
「相変わらず察しがいいですなあ。打葉先生は」
「お前も最初から一人も殺していないあたり凄いよな」
「お見落とし!?」
「その言い間違いは既に出ているな」
「オムナイトの影響が強すぎるんですがどうすればいいですか打葉先生助けてくれ」
「今のポケモンカードを知ることだな。補足的に言っておくが、影響が強いならそんなミスはしないはずなんだがな」
「買うお金が……無い」
「俺に至ってはそっちの通貨すら偽造するしか手だてがないけどな」
「通報しました」
「お前はチャット機能で110番でもしてるのか。それとも俺のことを警察と勘違いしているのか。それともこの物語を削除させるつもりか。それとも目の前で銀行強盗でも発生したのを連絡したのか。それとも――」
「打葉先生今日はいい天気ですね!」
「――という逃げの一手を打つ未来を想定していたのか。それとも同じでない空の下にいる俺達を浮き彫りにする目的があって天気の話題を持ちかけたのか。それともお前は実は異世界へと転移する術を持っていて俺をからかっているのか。それともそんなことにも気づかずに天気の話題を持ちかけたことを若干後悔しているのか。それとも俺がここまでねちっこいとは想定せずに適当にお茶を濁そうなどと考えた自分に嫌気が差しているのか。それとも――」
「ま、参りました……」
「しかしこんな無意味な多弁で得意になれるわけもないしな。一方通行のお喋りが得意なオタクという人種は一体全体、他人と関わりたくないのかどうか分からない。それとも自己顕示をしたいだけなのに周りには凄い奴らばっかりでそれすらさせてもらえないという現実に幻滅して抜け殻の如く生きたいのか。ネットで面と向かわず話したいのか。こんな意見にとにかく理屈をこねて反論したいのか。まあどうせ無視されるだろうが。さらに既に死にきった名詞にしがみついているだけでも余計にみっともないな。はっきり言えば、ゲーム業界なんてのは既に閉じた回転で、漫画もアニメもこれ以上の発展は無い。グッズなんてのは作ること自体が趣味だ。そんな業界を支え続けているオタクが死に体ではなく生き物だと誰が言えようか。まあ俺が本当に馬鹿にしているのはそんな世界にしがみついて離れない業者なんだけどな」
「……もしもーし、僕の話聞いてる?」
「なんだ、喋らないからてっきり俺がこの上なく非生産的な長口上を続けるべきだと思っていたんだが、という皮肉を言うまでもなくそれは分かっているよな」
「打葉先生が刺々しくなっている……!」
「さて、お互いに情報交換と行こうか。エシュロンに聞かれても問題無い範囲で」
「さすがに下らなさすぎて聞いてないと思うけどなあ……まあいいや。僕から発表すると、まず打葉、おまえの女を盗ってやったぜ!」
「ああ、確か優子先輩か」
「下の名前で呼ぶような仲だと!?」
「というか、あれはお前の方が好みなんじゃないかと思ってたけどな。まさか予想通りに事が運ぶとは思わなかった。ああびっくりしてしまった」
「だったらどうしてその情報を僕に教えてくれないんだ!?」
「だってお前あの時あいつのことが嫌い――じゃないな、苦手だったんだろ?」
「そう言われると、そうでしたね!」
「忘れるぐらいの衝撃だったんだな」
「だってどうして苦手なのか僕でも詳しく分かってないんだし」
「まあそれがらみで分かったのは、キーワードだ」
「ほう。俺もお前に教えられるのはキーワードとその周辺事項だけだ」
「こっちのキーワード、というか情報は、沖陽菜野と、?悪性主要?の二つだけだ」
「おー成程成程。その単語は大分助けになる。面白いことになりそうだ。俺の方はだな、『ヴェスペル』と『ルーキス』だ」
「……ごめん。やっぱ打葉みたいに察し良くないからそれだけじゃ分かんないわ」
「互いに戦争し合って、俺はそのヴェスペルにいる」
「テイルズをやってたおまえとしては結構いい感じのポジションにいるんじゃないか?」
「全然関係ないんだけどな。まあそれはそれだ。問題はその戦争だ、ということが分かった」
「…………」
「『そっち』が狙われているのは、はっきり言えば、戦争の影響だ。少なくとも俺の調査と推測の結果はそう出ている」
「じゃあ、今『ここ』で起こっているのは……」
「ああ、間違いない」
「退っ引きどころか、攻め入ることすらままならない――」
「――戦争だ」
「戦争……」
「言い方を変えれば、血肉と流血と逆流と悪逆と憎悪と暴憎と暴力と戮力と戮辱と陵辱と陵虐と残虐と残骸と死骸と憤死と憤怨と怨霊と亡霊と滅亡と壊滅と破壊とが糾える世界だ」
「…………」
「言わなくても分かっていると思うが、『人類とは意識的な動機で同族を殺せる生き物』だ。特に戦争はそれを最も示しているだろう。そして問題は、それを変えるには、全員が等しく分け隔て無く人のために行動できないといけないという事に殆どが気づいていない事だ」
ちなみにこのあと通話料が5ケタに達したことで怒られてしまったりしてます。
長電話ってコワいね!
また明日(生きてたら……ね?)。




