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灰色のバックソード  作者: Hegira
第四介
41/95

会話ディファレンス

ディファレンスのわからないルー大柴。

ないだろうなあ……。

 昼休み。


「ほうほう、そんな事があったとは思っていたが、そんな事があったのか」

慧眼(けいがん)恐れ入るってやつですね打葉先生。あー今日は大当たりだ、ウナギうめえ」


 気取る打葉と、茶化す僕。

 男二人、弁当昼食。

 ……現実こんなもんだ! リアルリアル!

 今は、僕の近況を話していたところだ。


「そうだな、特訓は良いことだと思うぞ。物語的にだがな」

「何で斜に構えているような斜め上の感想が出てくる!?」


 打葉先生はどうやらご機嫌斜めだった。


「まあ、俺を混ぜても詰まらないだろうからなあ。きっと少しの情報を見ただけでヒント以上のものを沢山出せるしな」

「打葉先生は何でもかんでも気付いちゃうんだなあ!」


 絶対に僕と朱夏の特訓をハブられたこと気にしてる!


「まあ、お前ら二人の間にべたべたとくっつくつもりもないけどな」

「まるで僕らがべたべたとくっついているような言い方じゃないか。打葉」

「そうか? まあそうだろうな。確かにそれだと鍛錬にならないな」


 そう言って、あごに手を当てる。うん、理解が早くて助かる。朱夏がそんな甘い人物だと一体いつ描写したと言うんだ。甘さ控えめ。プレーン……いや、淡泊じゃないか。


「それでさあ、結局寝不足だよ……」

「獅子島の方は普通に登校しているんだが?」

「ああ、実はね、特訓が終わった後に録画した番組見てるんだ」

「ふむ、まあそんな事だろうと思っていたが、そんな事があったのか。成程な」


 僕の自社株が落ち込んできた。

 それにしても言い方が嫌味くせー。


「ああ、自分でもそう思っていたが、そうだったのか」

「……もしかしてユアブーム、とか?」


 マイブーム、じゃなくて。


「そうだな、薄々そんな所だろうと感じてはいたが、そんな所だったか」


 今のは使いづらそうだった。


「それにしても、特訓、ねえ」打葉は言った。「良く知らないんだが、色採ってのは皆が皆、特殊能力みたいなものを持っているのか?」

「んー? どうなんだろう? 僕が最初に戦った人は持ってたし、朱夏も火を出すし、僕は……しょぼいけど」


 刃物を犠牲にして一回だけ何でも切る、とか。

 裏新宿最強の不良、とかに当たったら砕けちゃう気がする。まあ、そんなあらゆる意味でナンセンスな存在がいるかどうか知らないけど。


「成程。大体分かった」


 僕は『何が』とは口に出さなかった。


「期待しててくれ、ということだ」


 こうして僕がそれを言ったものと想定された答えが出てくるからだ。


「こうしてみると俺は悪役になっていた方が展開し易かった様な気もしないではないな」

「もの凄い強敵になる気がする!」


 まず僕の思考を想像だけで完全補完されかねない!

『お前がそうすることは計算済みだ』とか『お前は俺の掌の上で踊っていたに過ぎない』とか!


「その台詞自体は別になんて事は無いんだけどな」

「今僕喋ったか!?」


 考えが読まれてる! ちなみに心、の声が口に出るとかいうありふれてツマラナイ体質は僕には無いらしい。良かった。さすがにその辺の賞味期限は切ってもいいだろう。

 二番煎じでも、できるだけ飲めるやつだけにしたいなあ、とか。


「さあな。そんなのはどっちでも同じ事だ」

「かっこいいこと言ってるけどそれはパクリだ!」

「『それはパクリだ』か。ふん」

「確定させなくていいから!」


 この二つを多用すると人に嫌われるっぽい。


「さて、話題を変えようか」

「打葉先生無理矢理だなあ」


 別に無理矢理なのはどうでもいいんだけど。


「『原因を自分に認めず他に求める』っていう行為は、人としてどうなんだろうな?」


 唐突にそんな話題を振ってきた。とは言え、僕達の普段の会話の流れからすれば、掘り下げることが見当たらない時の話題の転換はしょっちゅうある。

 で、話題は自己責任を逃れる人、っぽい。


「人として当然なんじゃないか?」

「それはよく考えてない言葉だろ」


 やっぱりバレた。単に『人として〜』を使いたかっただけの僕。


「でも、案外そういうのも外れていないような気がするんだよね」

「まあな。もしも他のせいにする奴がいない、もしくは少数派――だったらもっと世の中上手く回っているはずだ」

「教育が悪い、環境が悪い、特に政治が悪いなんかはよく言うけど、まさか自分自身が一番悪いなんて思えないよな。僕自身も含めて」


 気の持ちようだと、僕は思う。

『しあわせ』の定義と、一緒の次元で考えれば、だけど。


「根本的に、『悪い』みたいなマイナスな言葉を使わせなければいいんだけどな。副作用はともかくとして」

「脳にいい習慣ってやつですか、打葉先生」

「ちょっと違うけどな」


 否定語を使わない、だったか。

 ちなみに、ここで話題がさらに逸れようとも僕達は話したいことを話しているだけなので、気にしない。

 ここの読者であるからにはそういった真面目は捨てて貰わなきゃ、とかわがままを言ってみたりする僕。


「悪いといえば、四手。全てに対して『悪い』っていうのはどういう事を言うんだろうな」

「うーん……世界を滅ぼす、とかじゃあないんだろうな……」

「だよな」


 果たして世界を滅ぼすことで喜ぶ存在が、いないとも限らない。悪はすべてをすべからく“Oh no!”と懊悩(おうのう)させるべき……はずだ。

 ……ここまでくるとさすがにそのままオヤジギャグだ。

 まあ、

 そもそも世界が続くのがいい事なのか、打葉はわかっているのかもしれないけど、僕にはわからない事だった。


「そもそも何かの利害と何かの利益が被らないものってあるのか?」

「そんなものは、視点をどこまでも意地悪に広大に拡大すれば、無いんだろうな。ダイヤが削れて困る人はそうそういないだろうが、削られる炭素原子にしてみればそれまでの安定を脅かす脅威だったかもしれない――まあそれにしても分離を望む意志があったかもしれないという可能性を否定したくはないが。他にも例えばだな、地下水を汲み上げれば、地表は潤い地表は陥没する、みたいなものだな。そして、そのどちらが利益で、また利害なのか、そういった二元的な判断はできない」


 意志があったからと言って、行動を起こすとは限らない。そう考えれば意志の存在を否定できなくなってしまう。

 単純な話、石に意志があるか? という問いに対する答えは『あったとしても証明できない』だろう。僕の場合。


「量刑みたいな難しさだな」

「だから戦争は無くならないんだろう」

「ああ……全くだよ」

「見解の相違だな」

「みんなちがってみんなしぬんだよな」

「みんなわるいのはいっしょだな」

「みんなさいごはいっしょなのにな」

「まあ、皆違っても、皆どうでもいいというのが俺の見解なんだが、どうだ」

「僕の見解はみんな性癖が違ってもみんないい度胸してるよな〜、なんだけど」


 どこかで聞いたことのあるような金子さんだった。

 ここまでくるとルール無用のワイルドカードだ。


 さて、真面目に語っているように見せかけているだけの話でした、ということで。


と見せかけて、統那の中で『打葉先生』のおフレーズが定着した話でした、ということで。

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