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灰色のバックソード  作者: Hegira
第二人
26/95

調理室ディテクト

「お前は、俺の最高の友達だ」


 打葉は、友達が欲しかった。

 僕は、その打葉と似ている。

 ……それは僕の都合なんだけど。


 僕と友達になれる奴は、本当に少ないから、


「僕はあいつらの為じゃない、おまえの為にここまでやってるんだよ」

「そうか」


 僕ははっきりと言った。

 朱夏はあくまでも、あいつらの為なんだろうけれど、僕は『あいつらの為におまえ達を破綻させる』訳にはいかないんだ。だから僕は朱夏が踏み止まってくれて、今更ながらにほっとしている。

 僕は何も意地悪で朱夏の参戦を止めた訳じゃないんだ。

 バッドエンドに繋がると思ったからだ。

 出来過ぎた、最悪の形しか予想できなかった。

 まだ出来の悪い中途半端の方が大分マシだ。

 今回は、密かにそれが回避できただけでも、嬉しい。

 誰も、死なない。

 もし――――


「統那」

「なんだ?」

「俺な、実は一遍終わってやるつもりだったんだよ」


 そんなことを考えていた僕に混ぜるように、言った。

 このときの僕の表情はぎょっとしていたと思う。

 僕の立ち回りを下回るのかと、怖れていた。

 結果としてそれは杞憂だったんだけど。


「まあ、それで終われなかったからこうなった――いや、違うな。こうなったから終われなかったんだ。何がどうしてこうなったかは俺にも推測の域を出ないから何とも言えないんだがな。まあ、お前と対等な立ち位置に立てたってのは数少ない僥倖だったな――――と、そんなことに自分で気づいてしまってるんだから、既にこれ以上お前と敵対してまでやることはないとか、俺の頭は考え出して、次の瞬間には既にそう結論してる」


 出来の悪い悪役だな。勝手に人様に迷惑かけて勝手に立ち直っちまったよ、ははっ。

 そう、笑った。

 僕は打葉が笑ったのを見て、素直に良かったと思えた。

 そして密かに、泣きそうになった。

 恥ずかしながら告白すると、僕が泣いたのは朱夏のことだけで、それも幼稚園の頃だけなんだけど、今回もその例には『漏れていない』。

 それでも僕が打葉を大事に思うのに、変わりはない。


「お前に説教されて改心する王道とか、暴走してお前に止めを刺されて残念な結末とか、予想しやすいものだったら楽だったんだがな、どうも俺は察しが良すぎたみたいだ。ここまできて、どういうわけか引き返せるんだよ。うん。今更引き返せないとか、全然ねえわ」


 確かにそれは、出来の悪い悪役だ。

 そうあってくれて、僕はとても嬉しい。


「まあ、やったことっていってもあいつらぶん殴っただけだし」

「そうそう。結局そんなんで道踏み外せるかっていう話だよな」

「じゃあ、こっちの要求は飲んで貰えるのか?」

「ああ、もう大丈夫だ。一人じゃなければ、俺は何でもできる」


 僕は、ただ黙って聞く。


「俺はもう、遠慮しない。安心して普通に喧嘩して、余計なことを考えず普通に成績を取り、何事も無いかのように普通にバレーボールも独りで勝ってやる」


 独りじゃないけどな、と付け加えた。


「……それはさすがに無理じゃないのか?」

「そこんところは、まあ見てろって。それよりまずは、あいつらを獅子島のあの異常な正義感にも否定されないようなやり方、つまり、法という方法で行く。それなら問題ないだろう?」

「……ああ。相手だけが悪いなら、朱夏も庇う理屈はない」

「だろ?」


 にっ、と不遜に笑った。

 ここにきて、更なる高みと、深さ。

 打葉の余裕に底はないのだろうか?


「俺はもうお前に守られるだけの存在じゃないってところを見せてやる。これからは本音を、本質を、基本を、そして本気を出す」

「それはまた、頼もしい台詞だな」

「それでは、手始めに」


 そう言って、包丁を手元で鋭く捌き、バツ字を繰り返し描き無限軌道を保つ。

 ひゅんひゅんひゅんひゅんひゅんひゅん。

 ……僕だって、そ、その気になればあれぐらい、できるぞ! ……きっと。


「お前との決着から、だな」

「え……?」


 僕に包丁の片方を向けた。

 ……確かに中途半端だけど。

 結局、こうなるのか。

 学園バトル。

 僕は、カッターを握り直す。


「最近嵌まってたやつにちょっと面白い剣技があってな。それも試してみたいんだよ」

「まさか衝撃波とか出てきたりしないよな……?」

「さあ、どうだろうな」

「巫力でデカくなったりしないよな!?」

「ビビりすぎだろ」

「咆えろ! タイショー君! だばだばだばだばだばー! とか言わない!?」

「お前、楽しんでるだろ」

「隙あり――っとぉ!」

「おいおい、危ないな」

「いっつもいつもっ、格好つけてんなコノヤロー!」

「しょうがないだろ、自然にこうなるんだ」

「そして、羨ましいんだコノヤロー! (ことごと)く躱しやがって!」

「おっ、遂に言ったな? 俺のどこが羨ましいって?」

「文武両道! 臨機応変! 容姿端麗! 器用裕福!」

「自分の容姿は知らんが、さすがに最後のには異論があるな、っと、結局俺の才能はどれも日の目を見ていないんだから、なっ」

「永久にっ、封印してろっ!」

「残念だな、もう隠さないと、決めた! そういう意味では器用貧乏とはもう、おさらばだな!」

「そいつはよかった、なっ!」

「おおっ、やるなあ!」

「刃物で戦う以上、僕に負けは無いっ!」

「そうか。なら俺はこいつも投入する」

「っだああっ!? おまえここにも爆弾仕込んでたのか!?」

「幸い機械類が止まっているからな。ガスは通っていない。よって起爆し放題だ」

「最早テロリストの所業だな!」

「おっと、そことそことそことあとあんな場所にも。と言いつつそこにもあったり」

「悉く避けられない!? おまえ凶悪過ぎるだろ!」

「いや、ここまでくると俺も巻き込まれかねない」

「自爆テロ!? 無茶苦茶だろ!」

「と言いつつ俺は窓から脱出を図る」

「なにー!? ちょっと待って僕も連れてって――――ぁぁあっ!」


 ちゅどーん。

 と、そんな感じで、今回の話は呆気なく終局を迎えた。


 勝敗? つかなかったよ。

 向こうはネタ切れで、こっちは決め手を欠いた。


昨日の投稿の後、またお気に入り登録が増えてました。何か嬉しいですね。モチベーションが密かに上がりますよ。


それはそれで、今回の話ですが、まあ、実は元々前回の話とくっついていたんですよ。ただ、無駄に長くなってしまって……分割二回払い。決してローンではございません。

今回はこの辺で。

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