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婚約破棄物のモチーフ

作者: イトー

 分析と呼べるほど緻密ではなく、考察というほど頭を使ってもいなければ、確固たるソースもない。

 そんな曖昧で、憶測の上に憶測を重ねた、取り留めのない、にわかの独り言みたいなもの。


 もうどこかで誰かが、まったく同じことを書いていて周知の事実ですらあるかもしれませんが、それはご了承ください。



 現在も人気ジャンルとしてなろうで猛威を振るっている婚約破棄物。

 ポピュラーなストーリーは、公爵令嬢が突然婚約破棄を言い渡され、なんだかんだあって大逆転。

 テンプレが広まりすぎて、今さら詳細を語るまでもないですね。


 浅学にして、これがいつから1ジャンルとして確立したのかは存じ上げません。

 呼び名がなかっただけで、実はずっとずっと大昔から存在していたのかもしれません。

 しかしこのログラインと展開は、どこかで見たことあるなあという既視感がありました。


 それは恐らく、以前コンビニなどで売っていた、色々な体験談を漫画にした本で見かけたものだと思います。


 若い女と浮気しておきながら理不尽な難癖でお前に非があるせいだと離婚を迫ってくるモラハラ夫。

 それを妻が夫の弱点を攻める、あるいは仕事の不正か何かを暴いて社会的に抹殺、ざまあみやがれ。

 みたいなオチのやつです。


 考えると本の展開にも見覚えがあって、近いものを挙げるならネットの投稿など。

 さらに記憶を辿れるだけ辿るとそれこそ、15年以上前に女性週刊誌か何かで見た体験談にも似たものがあった気がします。

 ラジオの人生相談でも類似した相談があったような。


 これらがすべて実話なのか、はたまた伝聞を繰り返して盛られた都市伝説的な話なのかは定かではありませんが、つまり、モラハラ夫・彼氏の浮気にまつわるトラブルは女性の不変の悩みなのでしょう。


 婚約破棄物のテンプレ部分はこういったよく聞くエピソードをモチーフにして書かれた。

 そう仮定すると、個人的にはしっくりとくるのです。


 国王と公爵家が決めた、政治的な意味合いも多分に含んでいる婚約を自分勝手に破棄するという、「バカ王子だから」

 の一言では到底看過できない、浅慮で短慮きわまりない考えなしの行動。


「さすがに教育された王子にはありえないのでは」

 といつもモヤモヤしていた疑問点に、前述の仮定を当てはめると、それなりに輪郭を持った答えが頭に浮かんできました。


 ヤツは王族というきらびやかな肩書きと王子のルックスをガワとして被せられているけれど、その中身はモラハラ夫の思考や行動パターンをそのままコピーされた、モラ夫そのものなのだと。


 そう考えれば、わざわざ公然の場を選んで婚約破棄を告げて人を罵倒する、あの無神経で王族の品格など皆無な言動の数々にも納得が行くというもの。

 仮にも一国の王子様なのにこの人でなしぶりはどうして? という疑問は消えました。


 小説の読者からヘイトを集める、いわゆる憎まれ役として見てもこの上ないでしょう。


 相手役の令嬢も、

「男に媚びを売る・男の前だと態度が変わる・人の男を取る」

 という女が嫌うタイプの女トップ3の要素が詰め込まれていて、読者の怒りを買うこと間違いなし。


 異世界恋愛でなくても、このタイプのキャラは作者や読者から並々ならぬ憎悪を受けて、ひどい死に方をしますからね。


 女性にとって不変の悩みの種と嫌いな要素の集合体がペアになるのですから、女性向け作品においてこれほど完璧な悪役コンビはいません。


 読者の感情移入とは、読者の願った通りに主人公が動いてくれたときに強く起こるといいます。


 婚約破棄物の場合、開幕からモラ夫と男に媚売り女を具現化したようなキャラが出てきて、舐めくさった態度を取ります。

 舞台が異世界の貴族社会とはいえ、モラ夫案件は日常でもわりと耳にするだけに、その悪らつな雰囲気は一般人の読者にも感じ取りやすいでしょう。


 そして読者が「こいつらぶっ飛ばしてえっ!」と考えたタイミングで、主人公がバチコーンッ! と手痛い反撃をやるわけです。


「主人公、よくやった!」

 願った通りに悪者を倒した主人公への、読者の感情移入は最高潮。

 鬱憤からの解放、訪れる達成感。

 このカタルシス展開の手法はスカッとした読後感を生みます。



「婚約破棄物の王子、モラ夫の化身説」

 なんとなく思い付きで、関係ないことも含めてつらつらと書いてしまいました。


 大昔から芝居のストーリーは、誰もが持つ身近な不満や欲求を題材に描かれたものがヒットしてきたともいいます。


 そういったものを独自に探し出し、物語に上手く組み込んで文章として起こすことで、Web小説界隈に新たな1ジャンルが築き上げられる可能性があるかもしれません。

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